体外循環という言葉を知っていますか?~人工心肺における体外循環技術の現状と未来について~

看護部/透析室

新型コロナウイルス感染重症者の治療として最後の砦と言われている体外式膜型人工肺(ECMO:Extracorporeal membrane oxygenation)は日本で約1400台も保有しています。今後も新型コロナウイルス感染重症者が増加する恐れがある為、ECMOの増設が進んでいる中、保有数に伴わずECMOを習熟している医療従事者(医者・看護師・臨床工学技士)が不足していると多くのメディアで報道されているのを目にします。

ECMOを始めとする人工心肺装置には「体外循環」を必要とし、専門的知識が必要不可欠になります。今回は皆さんには聞き慣れない「体外循環」を簡単にご説明したいと思います。

≪体外循環ってなに?≫

人の血液循環には肺循環と体循環があります。肺循環は静脈の血液を心臓(右心系)から肺に送り、呼吸により取り入れられた酸素を血液に与え、血液中の二酸化炭素を呼気で体外に排出し、再び心臓(左心系)に戻ってくることです。体循環は酸素化された血液を心臓(左心系)から全身の細胞に送られ、酸素と二酸化炭素を交換して再び心臓(右心系)に戻ってくることを言います。

しかし何らかの原因で、体内で体循環もしくは肺循環が出来なくなると、身体の外で機械的に体循環・肺循環を行わなければなりません。そこで体外循環が必要となります。体外循環は血液を体外に引き出し、人の肺の代わりに人工的に作られた人工肺によって酸素と二酸化炭素の交換を行い、再び血液を機械的にポンプで体内に送り戻す肺循環と体循環の両方の役割を果たします。

~体外循環の目的~
 体循環維持の為、全身臓器、組織への血液、酸素を運搬する
 正常静脈血を酸素化し、二酸化炭素を排泄する
 動脈血を体内に再送入する
 体温を調節する

~体外循環回路はどんな構造?~
簡単ではありますが、心臓血管外科手術で使用する人工心肺装置の体外循環回路について少し説明します。実際の人工心肺装置はチューブ類が多く分かりにくいと思いますが、基本構造は下記のように構成されています。

①脱血カニューレ ⇒ 静脈に太い管を留置し、静脈血を体内から体外に脱血する

②貯血層 ⇒ 静脈血を貯留し、血栓や空気を除去して患者に送る血液を準備する

※ECMOには常備されておりません

③送血ポンプ ⇒ 1分間に約4L程度の血液を患者側に送血する

④人工肺 ⇒ 血液を酸素化させ二酸化炭素を排出するガス交換を行う

体温調節も出来る熱交換器も人工肺と一体化されている

⑤動脈フィルタ ⇒ 患者に血液を送る前に細かいフィルタで気泡等を除去する

⑥送血カニューレ ⇒ 動脈に太い管を留置し、酸素化された血液を再び患者に戻す

施設によっては備品に違いはありますが、体外循環回路は患者から脱血して患者に送血する一本道で構成されており、基本構造は難しくありません。

≪体外循環管理を行う臨床工学技士の役割≫

体外循環の管理を行うにあたり、臨床工学技士は注意すべきことが多くあります。
 問題なく送血ポンプは回っているか?
 適正な送血流量が送れて循環動態が保たれているか?
 送血量に伴う脱血量は順調であるか?
 適正に血液が酸素化され、二酸化炭素が排出されているか?
 電解質のバランスは崩れていないか?
 血液分布のバランスは保たれているか?
 血液が凝固しかけていないか?
 体温調節は適正か?
 尿は出ているか?
 バイタルサインは問題ないか?
 手術手技の妨げになっていないか?
 異変は感じないか?
・・・・・・・・・・・・etc

ほんの一部を挙げましたが体外循環は奥が深く循環管理が難しいです。体外循環を習熟するには多くの経験が必要とされますが、重症化する症例が少なく一人当たりの習熟ができないのが現状です。

そこで我が国では「日本体外循環技術医学会」や「ECMOnet」といった、体外循環の基礎的・臨床的技術の向上を目指した教育、調査、研究等の学術活動を展開し、最近では全国リモートでのセミナーや、実際の治療現場を体験できるVR教育も活動されています。新型コロナウイルス感染重症者だけでなく、循環動態が悪い重症者に対して体外循環を必要とする為、我々臨床工学技士は全国の臨床経験を共有し、機器の増設に伴い、装置の操作習得を含め、早期に技術習熟できる環境の構築を目指しています。

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