『薬薬連携(やく・やく・れんけい)』ってご存知ですか?〜当院薬剤科での新たな取り組み「薬薬連携」への道のり〜

薬剤科

私は薬剤師として病院と保険薬局の両方で務めた経験があり、両方の立場で多くの患者さんと関わりをもってきました。十数年前に保険薬局で務めていたときには病院薬剤師との繋がりはほとんどなく、処方箋を持ってこられる患者さんやご家族の方からどのような症状に対してこの処方が出たのか、どのような理由で今まで服用していた薬が変更になったのかなどを聞き取っていました。

中には処方理由や処方変更理由などがわからない患者さんも多くおられて十分に把握出来ないこともありましたが、それらを確認するために処方医に対して問い合わせをするなどということは到底考えられませんでした。ですから、用量に疑問を持ったり、相互作用等で疑問を持ったりしなければ、処方通りのお薬をお渡ししていました。

現在はみどり病院に勤めていますが、当院を退院した患者さんがその後お薬の調整がうまくいかなかったり、きちんと内服できていなかったり、そういった薬の問題で病状が再び悪くなってしまう患者さんをしばしば目にします。
私は、「病院薬剤師と保険薬剤師、双方の立場で患者さんにとって有益となるような医療の提供をするにはどうすれば良いのか」ということを毎日考えておりました。

近年、高齢化が進み、病院中心の医療から在宅や地域中心の医療へと移り変わっています。さらに複数の診療科を受診する患者さんが増加しており退院後、外来や在宅、介護施設などへ移ることで、服薬情報の継続的管理の必要性が高まってきています。このような時代の中、薬剤師も地域包括ケアの一翼を担い、医療機関や他職種との連携のもとで能力を発揮していく事が重要です。2019年11月半ばより当院でも患者さんが退院後も充実した医療を安心して受けることができるように、薬薬連携を土台とした退院時の情報共有活動を開始しました。そこで、今回はその取り組みについてご紹介したいと思います。

『薬薬連携』を始めるにあたって 〜患者さんの薬剤情報を病院薬局と保険薬局で共有〜

「薬薬連携」とは、病院と保険薬局の薬剤師が情報を共有し、患者さんが入院中も、退院後も充実した医療を受けることができるように連携することです。
地域医療に関わる薬剤師は病院と保険薬局に二分されます。地域医療連携に薬剤師が携わるはじめの一歩がこの薬薬連携だと思います。そして、そのまた第一歩が退院時の情報の共有であると思います。退院時に病院薬剤師から保険薬剤師へ情報が提供されることは在宅医療で薬物治療を受ける患者さんにとって大変重要なことです。

薬薬連携を始めようという意気込みはありましたが、いざ開始するとなると問題点がいくつか出てきました。「どのような形式をとるのか」、「誰が行うのか」、「どの患者さんに対して行うのか」、「個人情報にあたるため患者さんへの同意をどのようにして得るのか」、「どのように情報を提供するのか」など問題点は数々ありました。そのような問題点を含め2019年6月から院内薬局内で話し合いを重ね、同年11月半ばより保険薬局へ向けて薬剤情報提供を開始しました。

『薬剤情報提供書』、これでよいのか!? 〜保険薬局と院内薬局担当薬剤師へのアンケート〜

情報提供を行うにあたり、保険薬局にとって必要な情報を提供できているか、提供ツールとしてFaxが適切であるか、患者さんにとって有用なものとなっているか等を評価することにしました。そこで、薬薬連携開始時から2020年5月までの約6ヶ月間、保険薬局に対してアンケートを実施しました。

アンケートにはそれ以外に患者さんにとって有益と感じる理由やその他のエピソード等の記載欄も設けました。開始当初より思った以上に反響があり、たくさんの回答をいただきました。この連携に対して前向きな意見が多く、担当薬剤師もやりがいを感じることができました。改善を求める意見もあり、有益なアンケートとなりました。

また、情報提供を開始してからの担当薬剤師の負担が大きいように感じられたので、2020年4月に院内での負担がどのくらいかかっているのかを調査するために、個人的感想等のアンケートを実施し、問題点を抽出しました。その結果は、「情報提供は有益だと思うが時間的負担が大きい」という意見が多く、情報提供方法の再検討が必要となりました。

薬薬連携体制の確立へ向けて 〜アンケート結果を活かして〜

両アンケートの途中経過を見ながら当院での薬薬連携体制の改善を図りました。アンケート結果を院内薬剤師間で共有をして、患者さんの疾患や服用薬により情報提供が必要だと思われる項目を追加したり、次回の受診日を記入するようにしました。また、院内薬剤師の時間的負担を軽減するため、電子カルテ内で処理できるようにしました。

ちなみに、この改善によりどのくらい保険薬局に必要な情報が提供できたのか、院内薬剤師の負担が軽減されたのか等の詳しい内容については、2021年1月に大阪国際会議場で開催される日本病院薬剤師会近畿学術大会で発表予定です。

最後に

これまで、当院薬局と保険薬局とのつながりは「お薬手帳」が主でした。しかしながら、お薬手帳には処方内容しか記載されていないことが多く、処方理由や処方変更理由等は患者さんの記憶に頼らざるを得ず、それが不正確な場合には患者さんの治療に影響を及ぼしかねません。これからは、双方の薬歴共有のツールとして「お薬手帳」と「薬剤情報提供書」の両方を使用することで患者さんが安心して医療を受けられるようになるのではないでしょうか。

当院では薬剤師が地域医療で専門性を発揮できるよう、「シームレスな薬物療法」をコンセプトに保険薬局との連携も深めていきたいと考えています。病院と保険薬局、双方の薬剤師が「薬のことならなんでも相談して!」と言えるように情報の共有に力を入れていきたいです。

ちなみに、ご高齢の方でかかりつけ薬局が明確ではない方や施設へ退院される方や転院される方へは、簡易的ではありますが、処方理由や処方変更理由を記載した「退院時情報提供」をお薬手帳に退院時処方内容と共に貼付しておりますので一度ご確認ください。

メニュー