弁形成術と弁置換術の違いって? 心臓血管外科 岡田 行功 ~広報誌「みどりの風」Vol.29~

弁形成術と弁置換術の違いって? 心臓血管外科 岡田 行功

心臓には僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、肺動脈弁の4つの弁があり血液循環を維持できるように開放、閉鎖が行われています。心臓弁膜症とは加齢などによって動脈硬化と同様な退行性病変が進行し弁の変形や石灰化などを来して、弁の開放、閉鎖が障害され心臓の機能に異常をきたす病気です。社会の高齢化に伴って患者数が増加しています。
弁膜症の種類によって、症状の出やすいものやそうでないものがありますが、一般的には慢性疾患のため自覚症状がないまま病気が進行している患者さんが多くみられます。高齢者の場合、症状である疲れやすさや息切れを加齢によるものだと判断される方が多く、症状を見逃してしまうことがあります。また急性発症する場合もあり、突然の呼吸困難や動悸などの症状が出ることがあります。

弁膜症を治すには、手術あるいは最近のカテーテル治療が必要

薬物療法では症状を一時的に改善することが出来ますが、解剖学的に弁膜症を治すことはできません。無症状または症状が軽いうちの早期の手術は生存率、合併症、心臓機能の回復など手術後の成績は良いため、手術のタイミングは極めて重要です。
重度の症状がある場合など手術のタイミングが遅くなると手術後の成績が悪くなり、腎臓や肺など他の臓器に影響が出る場合もあります。

弁膜症の特徴は聴診器によって聞くことのできる心雑音

聴診で心雑音を認めた場合は患者さんの症状と弁膜症の重症度が一致するのか、心臓超音波検査(心臓エコー検査)で弁の狭窄や逆流の重症度を評価し治療方針を決めていきます。弁膜症の程度(逆流や狭窄の程度)が軽症あるいは中等症であれば、手術の適応とはならず、年に1~2回の心臓エコー検査で進行の程度を経過観察していきます。普段の生活をしていても日常生活に制限がでることはありません。逆流や狭窄が高度の場合は、手術適応になる可能性があり、手術のタイミングを検討していきます。

手術には弁形成術と弁置換術の2種類

弁置換術は自己の弁を人工弁に入れ替える方法で、機械弁と生体弁があります。
機械弁は抗凝固薬(ワーファリン)を生涯服用し続ける必要があり、生体弁は耐用年数が10~15年で構造的劣化を来しますので、そのときには再手術が必要となります。
僧帽弁逆流や大動脈弁逆流の一部で行われる弁形成術は自己の弁を手直しする方法で、10~15年での再手術の可能性は僧帽弁術後では3~5%、大動脈弁形成術では10~25%であり、生存率、心臓機能の回復度、合併症や感染症の回避などあらゆる面で弁置換術より優れています。
しかし日本では僧帽弁逆流に対しての弁形成術が6割、弁置換術が4割と報告されています。
弁形成術は弁置換術と比べ心臓血管外科医の高い外科的技術が必要となります。その背景として全ての心臓血管外科医が十分に経験できるほど症例数が多くないこと、高齢者では手術時間から見て人工弁置換術が早いことなどから人工弁置換術が選択されるのが現状です。弁形成術を選択された場合、担当の心臓血管外科医にどれだけ経験があるかを知る事も大事です。
当院では僧帽弁逆流症の手術適応症例に対し95%の僧帽弁形成術を行っております。
大動脈弁狭窄症の場合は、大動脈弁が動脈硬化により硬くなっている状態のため、機械弁または生体弁を用いた大動脈弁置換術を行っておりますが、高齢者ではワーファリンの不要な生体弁を選択します。
当院の心臓弁膜症センターでは心臓血管外科医を中心に、循環器内科医による手術のリスクとなる合併症の精査や、手術後の回復などを含めた判断や、心臓超音波検査技師、臨床工学技士、看護師など他職種が関わっています。患者さんにとって手術が効果のある治療法なのか、そして手術のタイミングや手術方式などガイドラインに沿って検討するチーム医療を行っております。心臓弁膜症診断・治療にかかわるご相談はご遠慮なくご来院ください。

手術後から退院までの流れ 2階病棟

僧帽弁逆流を外科的に治療する方法は、1)弁形成術、2)人工弁置換術がありますが、心臓機能の回復などから形成術が優れています。形成術は歴史的な形成術式を組み合わせて患者さんの弁を修復します。経食道心エコー図検査により手術中に形成術の出来栄えが分かります。手術が終了しますと集中治療室(ICU)で患者さんの全身状態を管理します。
手術中の経食道心エコー図検査の結果、心機能、形成術後の弁機能は分かっておりますので心臓のポンプ機能を管理することが主たる目的です。帰室後2~3時間で麻酔から覚醒し、自己呼吸が十分にできることを確認して人工呼吸器からの離脱をします。深呼吸、喀痰の喀出ができるように看護師が指導します。翌日から食事や立位訓練が始まり、2~3日で離床、歩行訓練を始めます。理学療法士が手助けしますのでリハビリを頑張りましょう。手術後3~4日程度でICUから一般病棟に移ります。歩行訓練を中心としたリハビリが段階的に行われます。手術後10~14日程度で心エコー図検査を中心とした手術後の評価を行い、リハビリの評価も併せて退院を決めます。

医療費のぶっちゃけ!! 医事課

 いざ手術!となると心配な医療費…いったいどれくらいかかるの!?と不安になります。弁膜症の場合、平均3~4週間の入院で、300万円程の医療費がかかります。3割負担の保険の人で約100万円の窓口支払い(保険分のみで、実際は食費や自費分の追加あり)となります。しかし、「限度額認定証」をご利用頂くと保険負担分は減額され、負担が大幅に少なくなります。70歳以下、平均的な所得の方で10万円程の支払いになります(所得や保険証の種類によって限度額は変わってきます)。また、所得によっては「自立支援(更生医療)」制度で支払い金額がさらに下がる場合もありますので、手術の決まった方にはご案内をしております。医療費のご相談はお気軽に!

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