しびれについて①~腰椎椎間板ヘルニアによる痺れと日常生活での注意点と対策~

皆様の中やその周りで、最近「手や足がジンジン・ピリピリする」、「歩いていると太ももがだるくなりしびれてくる」、「正座をして足がしびれる」「体の片側がしびれている」などの症状を訴えている方はいませんか?これらは様々な原因で起こるしびれの症状になります。中には大変危険な状態になる前触れの可能性もありますので、これを機会に注意してみて下さい。

〈しびれの症状〉

一概にしびれといっても、様々な症状があり、同じ病気でも人によって訴えに違いがあることも多いです。ここでは、麻痺に伴って出現するしびれの症状について書いていきます。

・感覚障害・・・体に触れられているにも関わらず分かりにくい。熱い冷たいが分かりにくい。痛みを感じにくい。手や足が曲がっているのか伸びているのか分かりにくいなど。程度は幅広く、少し疎い感じ、から全く分からないまで多岐にわたります。
・運動麻痺・・・手や足に力が入らない又は入りにくい。動きが悪いなど。

これらは、次に述べている原因により起こりますが、運動麻痺に伴って感覚障害が出現する事が多くあります。病気の状況により程度は様々ですが、しびれなどの感覚障害は見た目では判断がつかず、実際に症状がある方にしか分からない症状です。一方、運動麻痺は「お箸を持つのが困難になってきた」や「歩く際に足の上りが悪く、つまずくことが増えた」など、他人から症状が確認されることもあります。

〈しびれの原因〉

しびれは①中枢性②末梢神経性の2つの原因があります。
長期間治らないしびれや、徐々に悪化している場合は放置せずに受診したほうが良いでしょう。特に日常生活に支障をきたしている場合は治療をすることで症状が軽減することがありますので、早めの受診をお勧めします。また、突然のしびれの場合は脳血管障害が生じている可能性があるので、早めにかかりつけ医にご相談してください。以下に①、②のそれぞれの引き起こされる疾患を表にまとめてみました。

ちなみに“正座をして足がしびれる”という現象は、膝の裏や膝の下あたりの血流が一時的に障害されることで生じます。そのため足を崩すことで血流が解放されしびれが改善されます。

・障害部位と疾患

①中枢性  :脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、多発性硬化症、脳炎、三叉神経痛
脊椎症、頸椎・胸椎・腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、
後縦靭帯骨化症、脊髄梗塞、脊髄動静脈奇形
多発性硬化症、脊髄炎、亜急性連合性脊髄変性症など

②末梢神経性:手根管症候群、肘部管症候群、橈骨神経麻痺、胸郭出口症候群、
腓骨神経麻痺、足根管症候群
帯状疱疹、血管炎、膠原病関連疾患、サルコイドーシス
糖尿病、尿毒症、ビタミン欠乏症、閉塞性動脈硬化症
ギランバレー症候群、シャルコ・マリー・トゥース病など

※上記で挙げた疾患のうち脳梗塞、脳出血などの脳血管障害は片側の手足にしびれが出現することが多くあります。この脳血管障害は運動麻痺や感覚障害などの後遺症が残りやすく、日常生活に支障がきたす場合があるため、周りに症状がみられる方がいたら速やかに受診するよう勧めてください!
※上記以外にもしびれを発症する疾患はあります。

上記の表中から、当院でも多い疾患の1つでもある、中枢性である腰椎椎間板ヘルニアによるしびれについてお話していきたいと思います。

〈腰椎椎間板ヘルニアとは〉

脊椎の間にある椎間板という組織の一部が脱出し神経を圧迫することで上肢・下肢に痛みやしびれを引き起こす病気です。
原因として、加齢による椎間板の退行変性で生じたり、重いものを持ち上げたりすることで腰椎に負担が掛かることで生じたり、またデスクワークで長時間座っていると生じたりすると言われています。

〈検査〉

・脊柱のMRI検査
・整形外科的検査・・・SLRテスト、大腿神経伸展テストなど

〈治療〉

内科的な治療(服薬治療)または整形外科手術が必要になる場合があります。
その他に服薬による疼痛管理や注射(神経ブロック)、運動療法や物理療法などがあります。この運動療法で私達理学療法士による治療が行われます。まずは医師への相談が必要です。

しかし理学療法を行ったからと言って、必ずしもしびれが取れるわけではありません。症状の緩和のための運動指導が中心となっています。
以下に実際に行っている運動指導の一部を紹介します。

〈運動〉

しっかりストレッチをしましょう。

・足の後ろを伸ばす

・足の内側を伸ばす

・お尻を伸ばす

・股関節の前を伸ばす

筋トレを行いましょう。

・腹筋

・スクワット

〈日常生活で気を付けること〉

・姿勢

悪い姿勢

良い姿勢

※あぐらを掻くと骨盤が後ろに倒れてしまうために、姿勢が悪くなります。ですから、本当はしない方が良いと言われています。しかし、座布団をひくことで骨盤が立ち上がるので腰椎への負担が減ります。背中もしっかり伸ばすと、より良い姿勢になります。あぐらを掻く習慣のある方は、参考にしてみてください。

・物を持ち上げるとき

悪い例

良い例

〈最後に〉

最近運動をしていないせいか、腰痛や体力低下があり運動の必要性を感じています。特に椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は下肢・体幹の筋力低下、運動不足によりしびれが増強すると言われています。私も椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症になる前に運動を始めようとこの記事を書きながら思いつつ、まだできていません・・・。

今年度の冬は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で緊急事態宣言により、やむを得ず外来リハビリも休止せざるを得ない状況になりました。厳しい状況が続きますが、皆様も感染予防に努めながら、体調に気を付け元気に過ごして行きましょう。
リハビリテーション科はあなたの“自分でできる”を応援します。