心房細動に対する外科治療 -メイズ手術-

心房細動について

正常の心電図は図1に示しますように小さな洞結節の興奮を示すP波(心房波)に続いて心室の興奮を示すQRS波(心室波)、心室の再電極を示すT波が一つのグループで心拍回数の分だけこれらを繰り返します。心房細動は心房の速い不規則な興奮を反映して一分間400-600の基線の細かい振動(f波)がみられ、心房の細動波は非常に速いために、それらの一部のみが房室結節を通って心室を興奮させるので、図1のようにQRS波(心室波)は不規則な間隔となります。脈拍を触ると、正常洞調律では一定の規則正しい間隔でありますが、心房細動では全く不規則であることが特徴です。
こうした心房細動になりますと心臓が拍出する血液量(心拍出量)が20~30%減少するとされております。また、動悸を生じることが多く、生命に関わる事象としては脳梗塞、心不全に至ることがありますので治療が必要となります。
これまでに僧帽弁逆流に合併する心房細動に対して多くの外科的メイズ手術を行ってきましたが、みどり病院では心房細動による高齢者心不全症例を経験しておりますので、心房細動に対する治療の原則、カテーテルアブレーションの適応、外科的メイズ手術の適応について参考にしていただければと考えてホームページに提示することとしました(表1)。

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▲図1:正常洞調律と心房細動の心電図(V1誘導)

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▲表1:心房細動に対する治療法

心房細動の薬物治療

先ず、心房細動が弁膜症に関連した病態であるかどうかは重要であります。心エコー図検査を行って、弁膜症があるとなりますと弁膜症の外科治療と併せてメイズ手術による洞調律への回復を速やかに受けていただくことが重要であります。
非弁膜症心房細動の治療に関しましては最近のガイドラインによりますと、まずは抗不整脈剤による薬物治療が第一の選択であります。また、同時に血栓塞栓症の予防のために抗凝固療法がおこなわれます。心房細動では左心房の収縮が無くなり、細かく痙攣しているだけなので左心房の一部の左心耳に血栓を作りやすくなります。この血栓が左心房から剥がれて左心室、脳血管に至りますと脳梗塞を生じることとなります。心原性脳梗塞と言われる病気であります。心房細動患者さんの中でどのような患者さんが心原性脳梗塞を来し易いかは大きな研究テーマとなっております。抗凝固治療は基本的にはワーファリンが用いられて、投与量は血液検査でINRという値を測定して2.0~2.5にコントロールされます。ワーファリンの投与量は患者さんによって異なりますので、決まった間隔での血液検査と投与量の決定が必要となります。一方、最近では血液検査によるINR測定が不要な抗凝固剤が各種使用可能になっております。薬物治療による正常洞調律への回復(リズムコントロール)が困難な患者さんでは、脈拍数のコントロールと抗凝固療法が行われることが多くなっておりますが(レイトコントロール)、動悸や心不全徴候の継続する症例ではカテーテルによるアブレーション、さらにはメイズ手術といった外科治療が選択されて洞調律へのリズムの回復が試みられております。

心房細動に対するカテーテルアブレーション

ガイドラインによるカテーテルアブレーションの適応を表2に示します。Class Iは最も良い適応、Class IIaは次いで推奨される適応であり、Class IIbは適応として悪くない、と考えて下さい。このカテーテル治療法では抗凝固療法の困難な患者さんは適応外となっております。いずれにしても心房細動発症からの期間が短い症例に効果があるように考えられます。1年以上の慢性心房細動症例に対するカテーテルアブレーションの効果には限界があるようであります。

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▲表2:カテーテルアブレーションの適応

心房細動に対する外科的メイズ手術

外科的にメイズ手術の特徴は胸骨正中切開で胸を開いて、体外循環を用いて心臓を停止して右心房、左心房を切開してCoxらによって報告された切開線に対応したアブレーションを行います。用いる機器は凍結アブレーション、高周波アブレーションを組み合わせて行います。長期の慢性心房細動に関してリズム回復効果は、カテーテルアブレーションよりも外科的メイズ手術のほうが高いと考えられます。また、1)血栓塞栓の原因となる左心耳の閉鎖が確実に行えること、2)心不全の原因の一つである心房細動に伴う三尖弁逆流を弁輪形成術により治療できること(図2)、が大きな特徴であります(表4)。表3のように一般には弁膜症など心臓手術が必要な患者さんで、心房細動を合併している患者さんが対象となりますが、薬物治療でも繰り返す軽い脳梗塞や心不全症状の患者さんでは外科的メイズ手術の対象となります。
外科的メイズ手術は僧帽弁膜症に合併した心房細動で多く行ってきましたが、1)心房細動の歴史が10年未満、2)左心房の大きさ6cm以下、3)f波1mm以上の患者さんでは手術の効果、すなわちリズムの回復が80%程度にみられました。こうした患者さんでは手術後の脳梗塞の発症が有意に少なくなっております。

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▲図2:三尖弁逆流に対する弁輪形成術

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▲表3:外科的メイズ手術の適応

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▲表4:外科的メイズ手術の特徴

高齢化社会に入って心房細動で治療を受けられる患者さんは増加しております。治療は可能な限り低侵襲であることが望ましいことはもちろんでありますので、先ずは薬物治療、そしてカテーテルアブレーション、最後に外科的メイズ手術の順番になります。外科的メイズ手術では、一般に開心術の適応範囲、すなわち他臓器の機能不全がなければ安全に行える治療法となっております。

心臓弁膜症の治療について

頻度の多い弁膜症(大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症)について、それぞれ診断、重症度評価、手術適応、手術の方法、手術後の遠隔成績を説明します。

大動脈弁狭窄症

僧帽弁閉鎖不全症-1

僧帽弁閉鎖不全症-2

大動脈弁閉鎖不全症

三尖弁閉鎖不全症

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