第91回ヘルパー研修(R3・2/18~19)~認知症を予防するための生活習慣/認知症の方への適切なコミュニケーション~

今回は2月に実施したヘルパー研修について報告します。研修では認知症の予防と認知症の方との接し方のポイントについて学びました。新型コロナウィルス感染症予防の一環として、前回に引き続き今回も密を避け参加者を分散し2日間に分けて実施しました。

<認知症を予防するには>

認知症を引き起こす要因の一つに高血圧や糖尿病などの生活習慣病があります。では生活習慣病を予防するためにはどうしたらよいのでしょうか。それには “バランスの摂れた食事をとる” “食べ過ぎない” “塩分、糖分や間食を控える” ことと “運動をする” ことが有効です。

当たり前と思われていることですが、仕事や家事で皆が日々忙しくしている家庭、独居や単身の高齢者世帯などでは自分で調理すること自体が億劫になり、ついついレトルト食品やインスタント食品に頼りがちになります。その結果、不足する栄養を野菜ジュースやサプリメントの摂取で補っていないでしょうか。

主に果物や緑黄色野菜に含まれる葉酸の摂取が不足すると、動脈硬化が進行したり、アミロイドβ(ベータ)の作用を強めたりしてしまうと言われています。アミロイドβとは脳内で作られるたんぱく質の一種で、アルツハイマー型認知症の発症に大きく関わっていると考えられています。葉酸不足によりアミロイドβが何年もかけて脳に溜まり、血管の壁に沈着すると、やがて認知症になっていくと言われています。そうならないためには、野菜ジュースやサプリメントよりも、赤、緑、黄の野菜をはじめ、葉酸を含む果物や青魚、豆類、海藻、緑茶、赤ワイン、バージンオイルなど様々な食物からの栄養分という形で、バランスよく身体に取り入れていくことがより大切となります。

また、適度な運動は脳の血流を良くして、全身の細胞に酸素を行きわたらせると言われており、認知症予防には欠かせません。身体を動かしながら昨日、今日の出来ごとを思い出してみたり、これからのスケジュールを組み立ててみたりして、頭も一緒に使うと認知症予防にはより効果的です。昨日は何を食べたか振り返って、食生活を時々見つめ直すのもよいでしょう。

また、睡眠不足やストレスも認知症発症の要因として大きく影響します。働き盛りの頃から、食事のバランス、運動に加えて、質の良い睡眠、ストレスを溜めないことを意識して、無理なく、できることを継続していくことが大切です。そして仕事を引退したら、家に閉じこもりがちになることを避け他人との交流や社会参加、趣味をつくることなどを心掛けて生活することも認知症予防のポイントになります。

<認知症の方への対応方法について>

認知症には種類があり、三大認知症(アルツハイマー型・レビー小体型・脳血管性)と呼ばれるものが大多数を占めています。認知症の方の特徴としては、何度も同じことを聞いたり、何度も伝えられていることでも忘れてしまったり、さらには妄想したりするので、介護するご家族は肉体的、精神的に大変追い込まれることもしばしばで、イライラして言い正したり、ムキになって言い争ってしまうようなことも起こります。

そんな時、私たちヘルパーは、たとえご本人がつじつまの合わない話や、妄想の話をしていても、あるいは幻視を見たり、感情的になっていたりする時でも、表情はにこやかに、否定をせずに共感をもって話を聞くことが大切です。同じことを毎回言われても、初めて聞くような姿勢で傾聴し、ご本人が感情的になっていたら、こちらは感情の波に巻き込まれないようにします。

また、認知症の方は視野が狭くなっています。今はマスク越しなので全体の表情をお互いに見ることは難しいですが、何か伝えたい時や話したい時は、正面に回りこんで目を見て話すようにします。フランスの介護メソッド “ユマニチュード(※)” の対応がヒントになります。訪問する時間は限られていますが、ゆったりとした気分で安心してもらえるような支援を、これからも続けていきたいと思います。
(※)ユマニチュードは知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づいたケア技法で、フランス語で「人間らしさ」を意味します。フランスで生まれて40年余りの歴史を持ち、日本の医療機関や介護施設にも普及しつつあります。

<研修を終えて>

今回、認知症の予防について学んだことは、高齢者の介護に携わる者としても、また私たち自身が高齢者となった時への備えとしても大切で、認識しておくべき知識となりました。認知症患者への対応や接し方の知識を日頃の業務に生かして、認知症の方も含めた高齢の方々に、より「その人らしい生活」を送っていただく支えになりたいと思います。