二人で一人前

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Kさんご夫婦 「二人で一人前」

Kさんご夫婦はともに70歳代半ば、マンションで娘さんとの3人暮らしです。
といっても娘さんは“先生”と呼ばれる職種の方でとても忙しく、国内だけでなく海外に行くこともしばしばあり、家におられるのは月のうち数日のみ。
実際は夫婦二人暮らしといってよいかもしれません。
以前は夫婦二人一軒家で暮らされていましたが、平成26年10月、突然ご主人が病気で倒れられ入院となりました。
奥様は以前から軽い認知症があったようですが、ご主人の見守りで日常生活には支障なく暮らすことができていました。
ところがご主人が長期入院となり、一人暮らしとなってから生活に支障が出るようになったのです。

娘さんに聞いたところ、家の中は散らかったまま、一人なのに10人分以上のおかずを作っている、糖尿病の持病がありインスリン自己注射ができていたのにできていない、薬が飲めていないなど。
危機感を感じた娘さんが自宅近くのマンションを購入し、奥様と二人で暮らすことになりました。
とはいえ娘さんには仕事がありますから、ずっと付き添うわけにもいかず、介護保険サービスで訪問看護とヘルパー、デイケアを利用することになったのが初めの出合いでした。
娘さんからは歯磨きと血糖測定およびインスリン注射、食前薬服用の見守りを依頼されていました。
奥様は会話もしっかりされており、一見認知症状があるようには見えません。
訪問し歯磨きをうながすと「もうしました」と笑顔で答えられます。
が、ここでだまされていた?(ご本人はだましたつもりはありません)ことに気付いたのはもっと後のことでした。
血糖測定の時はうまく血が出ないことがあり、何回か自分の指を針で刺してもらうこともありましたが、何とか見守りで行うことができました。

平成27年8月からはご主人が療養型施設でのリハビリを終え同居となりました。
久しぶりの夫婦水入らずの生活です。
入院前は几帳面で気丈だったご主人ですが、高次機能障害もあり、一つのことにこだわりだすと次の思考が働かない様子。
長期の入院生活後の新居ということもあり、なかなか日常生活に慣れず、奥様のことまではとても気が回らない状態でした。
ご主人にも介護保険サービスを導入してご夫婦を見守る機会を増やし、娘さんがおられない期間は、二人でどうにか生活が出来るようになりました。
訪問の際「今日の朝ごはんは何を食べられました?」の問いかけに、二人で「さて、何を食べたかいな?」と首をかしげることがよくあります。
ヒントで「パンかな?」というと奥様「そうパン」、そしてご主人が「野菜も食べたわ」、続けて奥様「そう、炒めた野菜」、最後にご主人が「コーヒーとな」という具合。
こんな時よくご主人は「二人で一人前や」と笑って言われます。
そう、一人で思い出せなくても二人で力を合わせて思い出されている姿は、とてもほのぼのとしていい感じです。
一人での生活が困難でも二人でなら何とか乗り切ることができる、そんなふうに感じます。

天気の良い朝は夫婦二人で近くの公園に散歩に行かれるのが日課となっています。
下肢筋力低下が気になることから、12月より週1回は訪問看護師がリハビリと称して付き添うことになりました。
途中のベンチで休憩をとりながらおよそ1時間。
二人とも足取りは思ったより軽く、その日の気分によってはコースも変わります。
家の中で見るKさんご夫婦とはちがい、木や花や散歩している犬を見て表情が活き活きとしています。

次のサービスではどこに行かれるのかな…と楽しみにしている今日この頃。
Kさんご夫婦のサービスが末長く続けられることを心より願っています。

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