103歳Yさんのエピソード

103歳Yさんのエピソード

Yさんは103歳。
ご主人に先立たれてから息子さんの家で過ごされています。
平成23年に左大腿部骨折、平成24年には右大腿部骨折で手術をされ現在は要介護4の寝たきり状態です。
通院はできないため月2回主治医が訪問診療をしてくれています。
お嫁さんは脊柱の病気があり、腰痛があるため負担のかかる介護ができません。
そこで毎日2回ヘルパーに訪問してもらい、身の回りの介護をしてもらっていました。
またお風呂は週1回訪問入浴サービスを利用していました。
介護保険のサービスでは単位数が限度額ぎりぎり一杯。
そこで訪問看護は月に1回、あとは緊急時対応のサービスでした。
寝たきりですが、ベッドのギャッチを上げ食事を準備すると、手づかみでモリモリ食べられます。
ストロー式マグカップでジュースやお茶も自分でゴクゴク飲まれます。
私はYさんを見て「長生きする人はしっかり食べる人なんだ」といつも感じていました。
認知症があり会話がかみ合わないことも多々ありますが、機嫌がいい時、悪い時の喜怒哀楽が分かりやすいYさんです。
ケア時に苦痛を伴うと「何をしておる!」「やめんか!」と大声を出されます。
前世はお殿様だったのかしら?と思わせる言葉に思わず「申しわけありません!」と頭を下げてしまいます。

4月のある日、訪問入浴サービスの際に左大腿部の人工骨頭の周辺にある骨を骨折するというアクシデントが起こりました。
強い痛みが生じ救急搬送で入院されましたが、高齢のYさんには手術を受ける体力はありません。
痛みを緩和する治療が行われましたが、病院という家とはちがう環境の中で食欲は低下し、日に日に衰弱していかれました。
それを見た息子さん夫婦は家に連れて帰る決心をされ、入院後10日程で退院されました。
帰って来られたものの、左足は変形し足全体に内出血と腫れがあり、見るからに痛々しい状態。
少し動かすだけでも痛みがあり大声が出る状況でした。
清拭やオムツ交換、着替えなどヘルパーでの対応は難しいということで、しばらく訪問看護で毎日対応することになりました。
主治医が少し強い痛み止めを処方してくれたことで痛みの訴えは随分少なくなりました。
それとともにお嫁さんが作る料理を自分のペースで好きな時に食べ、食事量が増えてきました。
今では以前のようにケア時に怒られることがしばしばあります。
そんなエピソードをご紹介します。

・ お腹が空いたからサンドイッチを持って来なさい。コーヒは濃いめで。(ウェイトレスではありません)
・ いくらお金のためとはいえ、そんなことをして許されると思っているのか!(これは看護ケアです)
・ 時間がかかりすぎじゃ!(眠っている間にと思い爪を切っていたのですが起きていたのですね)
・ 足が痛い!3番目いや実は5番目じゃ(いえいえ傷があるのは足の指の1番目です)
・ YさんYさんというな!うっとおしい!(そんなこと言わないで「Yさん」)
・ 死んでまでこんなことをされるとは…化けて出てやる!(まだ生きてますよ)

Yさんに怒られながらも、ついつい笑ってしまう今日この頃。
「今日はどんなことを言われるかしら?」
Yさん宅への訪問はスタッフの楽しみとなっています。