早期発見が大切!腹部動脈瘤 心臓血管外科 田淵 正樹 ~広報誌「みどりの風」Vol.38~

早期発見が大切!腹部動脈瘤

心臓血管外科 田淵 正樹

動脈瘤ってどんな病気?

心臓から拍出された血液を全身に送り届ける大動脈には高い圧力(血圧)がかかっています。加齢性変化の1つである動脈硬化などで動脈壁に弱くなった部分があると、血管が拡張してきます。その結果、壁が薄くなって大きくふくらんでしまったものが動脈瘤です。動脈瘤の形によって紡錘状瘤や嚢状瘤に分けられます。動脈壁の全体が膨らんだ紡錘状瘤に比べ、嚢状瘤は壁の一部だけが膨らんでいるため、小さくても破裂しやすいと言われています。

破裂するまで気づきにくい
「破裂する前」に予防的な治療が原則

動脈瘤は、ほとんどが無症状のため、CT検査などの画像検査を行わなければ、気づかれることはありません。しかし、大動脈瘤が破裂した場合には、その死亡率は80~90%とも言われています。大動脈は高い圧で全身に血液を送っている血管ですから、破裂すると大量出血となり、突然死します。また、動脈瘤には、常に高い圧がかかっているため、自然に縮小することはなく、有効な薬物療法もありません。そのため、大動脈瘤が無症状なうちに、つまり、「破裂する前」に予防的に治療を行うのが原則であり、他の病気における治療適応との大きな違いです。

動脈瘤と生活習慣病は密接

長い喫煙歴、高血圧や糖尿病のコントロールが思わしくないといった方や、65歳以上の男性、65歳以上の喫煙女性、近親者に動脈瘤の家族歴がある方には、動脈瘤のスクリーニング検査(単純CT)をお勧めしております。当院の心臓血管外科の外来で対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

腹部大動脈瘤とは

腹部動脈瘤とは、横隔膜から下の大血管にできた動脈瘤で、多くは腎臓より下方に発生します。動脈瘤は発生した血管の部位によって名前が変わりますが、基本的な成り立ちは同じです。

偶然見つかることが大半
腹部動脈瘤を診断するには

動脈瘤は破裂するまでほとんどが無症状のため、他の病気の検査のために行われた検査で偶然見つかることが大半です。腹部大動脈瘤が発生しやすい場所は一般に両側の腎動脈より下方の腹部大動脈のため、腹部の触診で疑われることもありますが、肥満体形の場合には非常に難しくなります。また、腹部エコー検査で動脈瘤が疑われることもありますが、正確な診断はできません。大動脈瘤の位置や大きさを評価して、治療の必要性を判断するためには、CT検査(単純)が必要となります。さらに、外科治療を行う前には、血管内腔などの評価も行える造影CT検査が必要となります。

▼ CT検査

▼ 腹部エコー検査

腹部大動脈瘤の治療方法

腹部動脈瘤に対する治療の選択肢として、外科治療と保存治療の2つがありますが、有効な治療方法は外科治療以外にはありません。

外科治療

手術が必要な動脈瘤の大きさは、正常な大動脈径の約2倍(約5cm前後)が大まかな目安です。
外科治療には、開腹手術での人工血管置換術と鼡径部小切開で行うステントグラフト内挿術の2種類があります。

▼ 開腹下人工血管置換術

開腹手術での人工血管置換術は、侵襲が大きいですが、長期成績が良く、追加手術や再手術を必要とする可能性が低いと言われています。

▼ ステントグラフト内挿術

ステントグラフト内挿術は、侵襲は小さいですが、治療できる動脈瘤の部位や血管の形状に制限があります。腹部動脈瘤の診断を受けた患者さんの多くが、低侵襲のステントグラフト内挿術を希望されますが、この治療を成功させるためには、解剖学的な適応を十分に検討する必要があります。その適応を十分に満たす患者さんは全体の30~40%程度です。さらに患者さんによっては手術数年後に追加手術が必要となる場合があります。
そのため、10年以上の長期成績になると人工血管置換術の方が優れているため、腹部大動脈瘤の治療においては、手術成績が安定している人工血管置換術が標準治療となり、ステントグラフト内挿術は、開腹手術のリスクが高い高齢者や重篤な合併症を有する患者さんに行われる傾向があります。

しかしながら、今後、新たなデバイスの登場などによって適応が拡大される可能性があります。現在、みどり病院は、ステントグラフト実施施設ではないため、この治療を行うことができません。このため、ステントグラフト治療を希望される患者様には、信頼できるステントグラフト実施施設にご紹介をさせて頂きます。近い将来、当院でもステントグラフト治療が行えるように邁進してまいります。

保存治療

外科治療を希望されない患者さんに行われます。動脈瘤の経過観察を続け、破裂した場合には、破裂に伴う痛みを和らげ、残された時間を大切にして、御家族と共に過ごしていただくことを優先します。がん患者さんの終末期に行われるに緩和治療に準じた治療となります。患者さんによって、生き方は様々であり、その人生の最期も様々です。できる限り、その患者さんの最期の時間を安らかに過ごせるようにお手伝いさせて頂きます。

外科治療後の生活

腹部動脈瘤に対する治療の選択肢として、外科治療と保存治療の2つがありますが、有効な治療方法は外科治療以外にはありません。

年に1回程度の定期健診が必要です

開腹手術による人工血管置換術においては、使用される人工血管が開発されてから60年以上が経過し、様々な改良が加えられ、その耐久性は大きく向上しています。現在の人工血管のほとんどがポリエステル糸を編んだものか、あるいは四フッ化エチレン膜であり、これらの劣化によって起こる合併症は極めて少ないと言われています。しかし、動脈瘤の治療した患者さんは他の場所にも動脈瘤ができてくる可能性もあるため、年1回程度の定期検査が必要と考えております。

一方で、ステントグラフト内挿術は、同様の人工血管を使用しておりますが、比較的新しい治療法のため、長期間にわたる安定性については明らかではありません。そのため、年1回程度の定期検査を受けて経過を確認することが義務付けられています。

生活習慣病を合併している場合は、それぞれに対する治療が必要です

動脈瘤の治療後は、とくに食事の制限はなく、特別な薬を服用することもありません。しかし、多くの患者さんが生活習慣病を合併しており、高血圧や糖尿病などの病気に罹っている場合には、当然ながら塩分やカロリーの摂取に気をつけるとともに、それぞれの病気に対する治療薬が必要です。大動脈瘤の原因である動脈硬化症は、心臓や脳の血管病の原因でもあります。元気で長生きするためには、それらの治療が大切になります。


動脈瘤のことでお悩みの方や動脈瘤が心配な方は、
お気軽に当院心臓血管外科外来にお越しください。
電話での予約を受け付けております(☎078-928-1700)。

 
心臓血管外科
仲井
田淵
岡田

午前診 9:00~12:00(受付11:45まで)

田淵医師、岡田センター長、仲井医師

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