みどり病院での僧帽弁逆流に対する、僧帽弁形成術 ~みどり病院の経験~

みどり病院での僧帽弁逆流に対する、僧帽弁形成術 ~みどり病院の経験~

倫生会 みどり病院
心臓弁膜症センター センター長 岡田 行功

2013年にみどり病院心臓弁膜症センターを設立し、前任地の神戸市立医療センター中央市民病院から取り組んできました僧帽弁逆流に対する形成術を行ってきました。2018年10月でみどり病院の僧帽弁形成術症例は101例となりました。平均年齢は64±15歳(22-90歳、男性66例、女性35例)でした。病院死亡は90歳心不全症例の1例のみでした。僧帽弁逸脱症例の形成術達成率はこれまでと変わらず100%でありました。
僧帽弁前尖逸脱(25-30%の症例)の形成術前と形成術後の術中写真を図1に示します。最も多い後尖逸脱(60-65%の症例)は図2、若者に多い両弁尖逸脱(35-40%の症例)は図3に形成術前と形成術後の写真を掲載しました。
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弁逸脱による僧帽弁逆流で手術を受ける患者さんが80%ですが、左室機能が良好(左室駆出率63%以上、左室収縮期内径38mm以下)で肺高血圧あるいは心房細動に進展する前の症状がないか軽度の労作時息切れ程度のタイミングで形成術を受けられることをお勧めします。合併する心房細動あるいは三尖弁逆流に対しては外科的メイズ手術をすることにより80%の症例で心房細動から洞調律の戻り、三尖弁輪形成術により遠隔期の三尖弁逆流による心不全を防ぐことができますが、早期手術によって僧帽弁形成術のみで済ますことができれば手術時間も短く、輸血もしなくて済みます。予定の僧帽弁逆流に対する形成術では、手術の傷以外は手術の合併症が極力ないようにして手術後2-3か月で日常生活に復帰できるように治療計画を立てております。
僧帽弁逆流に対する有効な薬物治療・内科的治療はありません。高度な僧帽弁逆流では5-8年以内に80%の症例で外科的治療が必要とされております。ご高齢の患者さんでは日常生活で期待される活動能力に個人差がありますので、同じ重症度の僧帽弁逆流でも症状の出方に違いがあります。一般には症状の軽い患者さんで腎臓病、呼吸器疾患の合併がなければ手術による死亡率は極めて低いものです(<5%)。僧帽弁逆流で治療方針に困っておられる患者さんは心エコー図検査による重症度評価(世界共通)、治療のタイミングについてご説明しますので気軽に来院していただければ幸いであります。
また、感染性心内膜炎による僧帽弁逆流に関しても形成術が可能です。感染性心内膜炎は金血症により僧帽弁に感染が波及して弁構造が破壊され僧帽弁逆流を生じてくる病態です。40%で脳梗塞を合併し30%の症例では緊急・準緊急手術が必要です。心不全等緊急手術を必要としない高度僧帽弁逆流症例でも僧帽弁手術は必要となりますが、図で示します能に感染部分の切除、自己心膜の補填、人工腱索による腱索再建術で90%の症例で形成術が可能であります。感染性心内膜炎による僧帽弁手術が適応とされている患者さんはご相談いただければ幸いであります。