子供が大好きなTさんのこと

Tさん(70歳男性)が入居されたのは今年の6月4日でした。
奥様と息子様と三人でホームに来られました。
今、希の丘のさくらユニットでユニットスタッフ全員が一番考え、悩んでいる方のお一人です。
どうすればTさんが笑顔で安心してここでの暮らしを心地の良いものだと感じて過ごしていただくことが出来るのか?

Tさんは学校を卒業後就職され、職場で知り合われた奥様と結婚され3人のお子様をもうけられました。
定年前に「忘れっぽくなった」と話されていたそうで、定年後はシルバーカレッジに通われたが記憶障害が現れ始め、辞められたそうです。
病院での検査でアルツハイマー型認知症と診断され服薬開始となられたそうですが、車の運転は66歳まで続けておられたそうです。
しばらくは落ち着いた生活を自宅でされていたそうですが、その後、トイレ通いが頻繁になり、外出を嫌がるようになっていかれました。
68歳の時にリハビリ主体のデイサービスに通い始めたが合わず、レクリエーション主体のデイサービスに通い始めたそうです。
しかし、認知症の症状が出現し始め、そしてその頃、奥様が病気になられ手術をすることになり、ショートステイも利用することになられました。
69歳の頃、奥様の体調不良やTさんの易怒性が高くなってこられたのも重なり、在宅介護の限界を感じられ、Aグループホームへの入所を決められたそうです。
入所後から対応困難な状態が続き、入所をきっかけに病院を変更され、服薬開始となられ徐々に症状も安定されてきたそうですが、奥様が面会に行くと、いつも傾眠状態、表情が乏しく、感情が鈍磨している様子が見られ、立ったり座ったりもご自身でしにくい日があり、介助が必要なこともあったそうです。
そのように様子の変わってしまったご主人を見るのが悲しくなり、心配だったそうです。

そんな時に希の丘のFacebookをご覧になられ、「散歩に毎日行かれているのですか?」と聞かれ、私たちは「そうです。雨の日以外は毎日行っています」と応えさせていただきました。
奥様は散歩の必要性をとても感じておられ、希の丘をとても気に入ってくださいました。
そして入居となられ、現在4か月が経過しました。

私たちは、まず、ここのホームに慣れていただくこと、私たちスタッフの顔に見慣れていただくことを目標に、日々声掛けし、Tさんのお部屋、トイレの場所、排泄の方法、等を声掛けさせていただきました。
そして排便のコントロール。
そして、往診に来て下さっている先生と相談し、たくさん飲まれている薬の減薬を開始していきました。
現在は雨の日以外の毎日朝夕の散歩、毎日の入浴に頑張って取り組んでいます。
もちろんTさん自身も頑張ってくださっていますし、奥様にも協力をお願いし、一緒に入浴の手伝いをしていただいています。
Tさんは、入浴の時のズボンを脱ぐ行為にとても羞恥心を抱いておられ、他人が更衣の介助をすることの理解が難しく、抵抗が強く出てしまい、蹴る、抓る、などの行為が出ることがあります。
今は私たちスタッフとのコミュニケーションを通じて、他の入居者の方との関わり、ここで暮らしていくことを受け入れていただけるようにスタッフで取り組んでいこうと頑張っています。

今日も奥様がTさんに会いに来られました。
とびっきりの笑顔で奥様を迎えておられたTさん。
「すごくいい笑顔。そうだった、この人はこんな風に笑う人だった」と奥様がポツリと話されました。
胸が熱くなりました。
この笑顔をもっとたくさん奥様に見せてあげてほしいと思いました。
まだまだできることはたくさんあると思います。
Tさんや奥様、スタッフと一緒に考えていきたいと思います。