ヘルパー研修報告〜「知っておきたい生活習慣病と高齢者の健康管理~

近年、私達の生活は豊かになり食生活も充実しています。テレビなどでも「人生100年時代」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。日本の平均寿命は世界でもトップレベルです。しかし、介護を必要としない「健康寿命」は平均寿命の約10年前にやってきます。この研修では生活習慣病の要因・予防、高齢者の健康管理について介護業務を担うヘルパーとして知っておきたいことを学びました。

■「知っておきたい生活習慣病と高齢者の健康管理」

生活習慣病

「人生100年時代」を最後まで自立した健康な状態で生活するためには「健康寿命」を伸ばす必要があります。そのためには生活習慣病(がん・心臓病・脳卒中など)とフレイル(虚弱:筋力や心身の活力低下の状態)を予防することが大切です。そこで私達介護職にとって、知っておきたい生活習慣病の怖さや予防法を重点的に学びたいと思います。

生活習慣が招く病気、生活習慣病はかつて成人病とも言われました。中高年に多い病気として知られていましたが、現在では食生活や運動不足・ストレスなど多くの要因があり若い人でもみられる病気となりました。日本人の平均寿命は世界でもトップレベルですが、それに伴い介護が必要な高齢者も増えています。

「健康寿命」とは自立して介護を必要としない健康的な生活を送ることのできる期間を言いますが、現在の日本では平均寿命に対して健康寿命が10年前後短くなっています。そこで健康寿命を延ばす「生活習慣病とフレイルの予防」が必要となります。

現在は高齢化が進んで老衰や肺炎で亡くなる方も増えていますが、三大生活習慣病と呼ばれる、がん、心臓病、脳血管疾患は下の表のように日本人の死因の約半数を占めています(※これ以外でも腎臓が機能しなくなる「腎不全」や「血管性の認知症」「糖尿病」「高血圧症」なども生活習慣病と関係しています)。

‣「日本人の死因」 三大生活習慣病:がん・心臓病・脳卒中 ~出典:厚生労働省2019年「人口統計」~
‣食べ過ぎ・飲みすぎ・夜更かし・飲酒や喫煙・運動不足・ストレスなど ~あなたの生活習慣は大丈夫?~

食べ過ぎ・偏食など食事の偏りは健康に大きく影響します。飲み物もお酒を別にしても清涼飲料水やスポーツドリンクには大量の砂糖、果糖、ショ糖、ブドウ糖が含まれていますし、牛乳は体によいが飲み過ぎると脂肪の取り過ぎになります。こうした生活習慣が原因で血管が老化することで、心臓病・脳卒中を招く「動脈硬化」の原因となります。太り過ぎ(内臓脂肪のたまり過ぎ)、「高血圧」「高血糖」「脂質異常」は動脈硬化を促進します。

高血圧症
健康な状態よりも高い血圧が続く病気で高血圧が続くと血管に傷がつき動脈硬化が進み血管が詰まったり破れたりします。
糖尿病
血液中の糖分を血糖と言います。この血糖の量が高い状態が続くと糖尿病です。全身に様々な影響や合併症を招く恐れがあります。糖尿病は「病気のデパート」とも言われるほど様々な合併症を引き起こす怖い病気です。
脂質異常症
脂質異常とは血液中の脂質(検査項目で言えばコレステロール・中性脂肪など)が基準値より高いor低い状態を言います。血管にコレステロールがたまり動脈硬化が進行し、心臓病や脳卒中を引き起こす危険性があります。
高齢者の健康管理
‣生活習慣病予防とフレイル予防

食生活(飲みすぎ・食べ過ぎ・塩分・糖分・脂肪・栄養バランス)の管理や定期的な運動習慣・質の良い睡眠・ストレス解消・喫煙/飲酒の節制・健康診断は生活習慣病の予防における重要な要素です。食習慣、運動習慣の改善によるフレイル予防への対策や心掛けが寝たきり状態や認知症リスクを予防して健康寿命を延ばす鍵となります。

例えば、高齢者が立たずに手を伸ばして届く位置に全てのモノを置くことは日常の動きを減らし、フレイルの危険性を大きくします。そして、フレイルを放置すると介護が必要になる可能性が大きくなります。

‣元気な高齢者を目指しましょう!(健康寿命を延ばす)
  • 食生活(栄養バランス・質・量・時間帯など)に注意する。
  • 「健康づくり」に関する地域の集いに参加する。
  • 散歩や買い物など出来るだけ外出を心掛けるなど人とのふれあいを大切にする。
  • 屋内でも出来る家事は継続して行う。
  • 高齢者の「口腔ケア」は健康管理に欠かせません。
‣代表的な感染症

代表的な感染症としては、新型コロナウイルス・インフルエンザ・感染性腸炎があげられます。身体が冷え免疫力が低下しやすい季節は感染症にかかりやすく注意が必要です。(発熱がおもな症状ですが高齢者の場合は熱が出ないこともあります(熱を出す体力が無い)。)

‣高齢者にありがちなヒートショック

高齢者の入浴時にはヒートショックを起こさないよう注意が必要です。高齢者は、脱衣所・浴室・浴槽など室内温度の急な変動により(寒くなると血圧が上昇するなど)ヒートショックを起こします。入浴介助を行う時はヒートショックを起こさないように温度差に十分配慮しましょう。

‣気を付けて観察しましょう ~介護者から見た体調の変化・観察のポイント~

「食べているか」「排泄は出来ているか」「清潔保持・入浴が出来ているか」「歩き方がおかしくないか」「呂律や体の動きに変化はないか」「意識が飛ぶことはないか」「尿量・浮腫・脱水があるか」など「普段と違う」を素早く判断することが大切です。

これらに合わせてバイタルサイン(脈拍・呼吸・血圧・体温)にも注意しましょう。いつもと違う場合は決められた手順で素早く対応しましょう。※決められた手順とは、利用者により異なります。事前に「こんな時はどう対応するか」という緊急時用の対応を決めておきます。迅速に対応できるように日頃から利用者個別の緊急時対応を把握しておきましょう。

■みんなで考えよう「業務継続計画(BCP)」

さて、介護事業者は常に、地域への安定的な介護サービスの提供を求められます。感染症の大規模な流行時やその他自然災害の発生時においては、高齢者の健康管理に重大な支障を来たしかねず、むしろそういう時にこそサービス提供の継続性が問われることになります。

この研修では、そうしたこともふまえて介護事業の業務継続計画について学びました。今後、みんなで計画の目的や課題を共有しつつ計画を固め周知徹底していきたいと思います。概要を以下にご紹介します。

業務継続計画(BCP)とは

介護事業者は2024年度までに自然災害(大雨・洪水・河川氾濫・土砂崩れ・地震等)など、地域にもたらす影響の大きい災害の発生や感染症が蔓延した場合を想定し、そのような状況下において業務の継続を可能とする業務継続計画(BCP)の策定を義務付けられています。※BCP ≂ Business Continuity Plan

‣自然災害発生に備えてのBCP

自然災害については、訪問先で被災する可能性を想定するなど、様々な場面を想定した「業務継続計画」を策定します。事前に作成したフローチャートを基本に迅速に連絡を取り合うことが望ましいですが、上手く連絡が繋がらない場合の行動も事前に決めておかなければなりません。

その際には、①職員が被災した場合の業務優先順についての検討、②職員の出勤率に対する「業務内容の優先・変更・縮小・代替え・休止・追加」の選定を行い、

  • 生命を維持するために最低限必要なサービスを検討しておく。
  • 同居家族の有無・近隣協力者の有無・利用者(平時)の心身の状況を把握しておく。
  • 家屋の状況・避難場所や利用者の希望等を把握しておく。

ことなどが必要になります。

‣BCP策定の前に知っておきたいポイント!
  • 災害に備えた自宅の工夫(家具転倒防止など)
  • 災害時に必要な備品・避難時に必要な備品の準備
  • 自宅近くの避難場所(ハザードマップ)
  • 担当利用者の避難場所や希望する避難方法
  • 利用者の内服薬を含めた避難時に最低限必要な持ち物などチェック
  • 連絡体制の構築
  • 事業所との連絡が途絶えてしまった場合の対応
‣感染症(新型コロナウイルス・インフルエンザ・感染性胃腸炎等)蔓延に備えてのBCP

感染症の蔓延時については、平時の対応 → 感染疑い者の発生 → 初動対応 → 診察・検査 → 感染拡大防止体制の確立、という流れに沿った「業務継続計画」を策定し、策定のポイントについて職員の理解と共通認識を深めます。

例えば、①感染症が発生した場合の対応に当たる体制、②職員確保、③業務の優先順位 について計画を策定し、内容について職員間での周知・研修・訓練を実施して徹底を図ります。

上記をふまえて、自然災害・感染症に備えた準備・業務継続のための準備について具体的に考え、①業務を継続できる職員が減少した場合の業務優先順位、➁職員の出勤率が減少した場合、担当者以外でも支援できる状態にするにはどうすれば良いか などについて検討しておかなければなりません。

■終わりに

自立してすこやかに過ごせる健康寿命を延ばすためには、高齢者に限らず、日々の生活の中で、まずは何か一つでも体に良いことを習慣化して継続することから始めてみることがとても大切です。例えば「甘い清涼飲料水は控える!」「脂肪の摂り過ぎに注意!」「夜9時以降は飲食しない!」など自分が普段出来ることをまず継続して頑張っていきたいものです。

運動については、激しい運動は避けて習慣化できる優しい運動から始めましょう。出来ないことを無理にするのではなく出来ることを継続しましょう。
また、近年頻度を増している自然災害の発生時や感染症蔓延時の「業務継続計画」についても、自分事として理解を深め身近なものとして認識することが大事だなと思います。

私たち自身(家族)も災害に見舞われた時に備え、

  • 避難時の持ち物について
  • 災害に備えた自宅での工夫
  • 自宅・通勤順路・利用者宅の避難場所(ハザードマップ)確認
  • 事業所との連絡が途絶えてしまった場合の対応

などについて考えておこうと思いました。

感染症についても、日頃から継続した感染予防を徹底し、自身が新型コロナウイルス・インフルエンザ・感染性腸炎に感染または疑わしい場合の対応や、利用者が新型コロナウイルス・インフルエンザ・感染性胃腸炎に感染したり、蔓延した場合の対応についての備えや心構えが必要だと感じました。