在宅看護実習を通して感じること ~看護学生さんの声~

専門職である看護師ですが、人によりまだ就職したての新人看護師から、10年20年のベテラン看護師まで人によりさまざまです。
訪問看護師でも同様、新人看護師もいますし、病院ではベテランと呼ばれていても在宅看護の現場ではまだ新人、そして10年以上のベテラン訪問看護師までいます。
どうせならベテランさんにみてもらいたいという方もおられますが、どのベテラン看護師にもはじめがあります。
私もベテランさん(時にはおばさんと呼ばれます)の域に入ったと自覚していますが、私にも新人時代、そして看護学生という若い時代がありました。
これから訪問看護師が地域社会でさらに活躍し皆さまの支えとなるためには、新人教育、学生教育はとても大切なことだと感じています。
みどり訪問看護ステーションでは現在看護専門学校2校と看護大学1校の学生実習を受け入れています。
学校により実習期間は4日間から2週間などのちがいがあり、病院や施設など実習経験も様々です。
学生さんも子どものころから看護師に憧れていた人、社会人の経験があり一念発起し看護学校を受験した人、親に看護師になるように言われた人、第一志望の大学に落ちたからなどなど志望動機もさまざまです。
きっかけはどうあれいつか「看護師になってよかった!」と、心から感じてもらえることを信じています。
今回は在宅看護実習後の学生さんの声をいくつかご紹介したいと思います。

どのような療養者を担当しましたか?

  • パーキンソン病により筋力が低下し寝たきりとなった状態、ストーマ・PTEG造設、認知症の夫と二人暮らしの老々世帯の方
  • 脳梗塞後遺症で要介護5、老々世帯の方
  • 100歳を越えた要介護5の方
  • 1軒家の1室で寝たきりの方

在宅看護実習でどのようなケアが印象に残りましたか?

  • 家にあるもの(洗剤の容器、100均あれこれ、S字フック、新聞紙、ふろおけなど)を使って工夫してケアを行っていたこと。
  • ティッシュや尿パットなどの消耗品の使用を最小限にして、家計を配慮していたこと。
  • オムツを使用していても療養者の思いを大切にしてポータブルトイレへの移乗を介助していたこと。
  • ストーマケアの物品の多さと丁寧なケア。
  • あなどれない口腔ケア!丁寧に観察し歯ブラシや口腔ケアスポンジ、舌ブラシなどを使って、その都度汚れが落ちるのを確認していたこと。
  • 週に何回かの訪問なのに、その方の日常を考えて訪問のない時でも困らないように指導していること。
  • 訪問看護師さんの振る舞いでその場の雰囲気が明るくなっていること。
  • ご本人だけでなく、ご家族の健康にも気を配って話を聞いていたこと。
  • 療養者さんの思いやモチベーションを下げないケアや声掛け。

在宅看護実習を終えての感想

  • 今まで病棟での実習が多く、”患者様への退院後の生活を見据えた看護”について理解やイメージが持てずにいました。
    今回の実習で、療養者さんとその家族の療養生活の実際に触れ、入院中の患者様への予防的なケアや不安の軽減、関わりの重要性を自身の中に落とし込むことができました。
  • 生活を支えるという視点で療養者の生活や家庭、生き方、考え方などを重視し、広く長期的な視点でのその人の看護を考えていく面を柱として、療養者のニーズや希望に沿った支援を行うということ。
    だからと言って何でも希望に沿うのではなく、危険と判断した時は違う方法を提示し、支援するということも訪問看護師の役割であると勉強になりました。
  • 入院から在宅まで切れ目なく継続してその人を支えるためには、看護師だけではなく医師・薬剤師・保健師・ケアマネジャー・ソーシャルワーカーなどといった多職種が連携しながら協働していくことの必要性を学んだ。
  • これまで教科書でしか感じ取れなかった在宅看護の魅力や難しさなど、実習で直に感じ取ることができ、自分の視野や考えに刺激を与え影響を受けたように思います。
    とても充実した経験となりました。
  • 家で生活したいと強く思っておられる療養者さんやご家族の思いに触れることができ、本当に良い経験となりました。
  • 訪問先で介護者の方が学生を快く受け入れてくれたことは、日頃から看護師さんとの信頼関係が成り立っていることであり、訪問先でしか学ぶことのできない家庭の空気を感じるなど、貴重な体験ができました。
  • 2週間という短い期間でしたが、在宅看護はとっても奥深いなど日々勉強になりました。
    いつか自分も在宅の分野で活躍できる看護師になりたいです!

訪問看護師から学生さんにエール!

在宅看護では”我が家”という病院では味わえない穏やかな時間や空間があります。
またケア中、療養者様やそのご家族と生活の中で交わす何気ない会話は、病院や施設とは違い、学生さんにとっては新鮮に感じるのではないでしょうか。
在宅看護実習で”ありのままのその人を観る”という看護の本質を感じることができたら、病院においても患者様が退院し、生活者となることを考えた看護を提供することができると感じています。
頑張れ看護学生さん!
覚えることは山ほどありますが、その一つ一つが将来の肥やしとなり宝となります。
そしていつか”素敵な看護師さん”になれることを期待しています。