尿検査で何が分かる? ~定性、潜血、尿タンパク、尿糖、薬剤結晶など結晶成分~

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当院初診で来院されたら、必ず受付で尿カップを手渡されます!
なぜなら…

尿検査で色んな事が分かるのです!
再診の患者さまも、定期的に尿検査をさせてもらいます。
針を刺す痛みを伴う採血に比べ、採尿は比較的、優しい検査ではないでしょうか?

尿カップに採尿して頂く際のお願いがあります!
(良い検査を実施するため、尿沈渣が項目にある場合は特に注意)
1.尿は出はじめと終わりを除いた中間尿を採取して下さい。
2.尿カップの下から1cm程度(最低10mL以上が必要)で検査可能です。
3.採尿前に尿道口を清拭した後に採取して下さい。
4.女性の場合、生理中は赤血球が混入するため、生理前後を避けて検査を受けて下さい。(生理中の場合はお知らせ下さい)

その尿は、どう検査するの?
<定性検査>あるのか?ないのか?

皆さまに提出頂いた尿は、先ず試験紙により成分の定性を行います。
ウロビリノーゲン•ケトン体•PH•タンパク•糖•潜血などの陽性もしくは陰性が分かります。
尿は腎臓で作られ排出されます。
体内を循環している血液が腎臓で濾過して尿になっているのです。
皆さまの尿は身体の中の色々な情報を持ち出してくれているのです。
では、それぞれの項目についての説明を記載しましょう。

ウロビリノーゲン
ビリルビンを腸で分解することにより生成されます。
肝炎や肝硬変などで増加し、閉塞性黄疸では減少します。

ケトン体
脂肪が分解されてエネルギー源として利用される際にできて、アセト酢酸・βーヒドロキシ酪酸・アセトンを総称したもの、つまり脂肪分解時の中間代謝産物です。
糖質が不足したり、糖質の代謝が障害されると、体内ではエネルギー源を糖質から脂質に変換します。
そのため、脂質の代謝が盛んになります。
糖尿病、下痢や嘔吐、激しい運動後や過度のダイエットなどで陽性になります。

PH
ペーハー(水素イオン濃度)は尿がアルカリ〜酸性のどの状態にあるのかを調べることにより病態を見ています。
健常者の尿はだいたい6.5くらいの弱酸性です。
4.5~8.0程度の変動があります。
持続性の酸性尿(PH6.0未満)、持続性のアルカリ性尿(PH7.5以上)は病的と考えられます。
以下の状態が考えられます。
・アルカリ尿(アルカローシス):腎盂腎炎 膀胱炎 尿道炎など。
・酸性尿(アシドーシス):飢餓 フェニルケトン尿症 アルカプトン尿症など。

タンパク
血液が腎臓で濾過される際、まず糸球体というところで濾過されます。
蛋白質は大きな物質なので殆どが、濾過されません(血中のタンパク質は体に必要な物質であるため、尿ではなく再び血液に戻される)。
わずかに濾過された蛋白質も尿細管という細い管を通過している間に処理されるため、正常では尿に出る量は極々少量となります。
陽性の場合は急性腎炎、慢性腎炎、慢性糸球体腎炎、腎盂腎炎、腎硬化症、腎不全、腎臓がん、尿管結石、尿管がん、膀胱炎、膀胱結石、膀胱がん、前立腺炎、前立腺がん、尿道炎などで陽性となり、腎臓から尿路系での病気の存在が疑われます。


ブドウ糖は体に必要な物質ですので血液中の糖が腎臓の糸球体で濾過されても、ほとんど全量が尿細管で再吸収されます。
陽性の場合は糖尿病、腎性糖尿、甲状腺機能亢進症などのホルモン異常、クッシング症候群などが疑われます。

潜血
血液に存在する赤血球中のヘモグロビンが尿中に存在するかどうかを調べています。
腎臓や尿 路系に炎症や障害などがあると、そこから出血し、尿の中に血液が混入するため、尿潜血検査は陽性を示します。
また溶血性貧血など、体内で赤血球が大量に壊 される疾患の場合でも、赤血球に含まれるヘモグロビンが大量に放出されるため、結果的に尿中にもヘモグロビンが排泄されて陽性となることもあります。

どうでしょう?こんなにたくさんの事が分かるんです!
<定量検査>固形成分から数をみる!

更に詳しく調べる為に尿沈渣の検査も必要に応じて行います。
尿10mlをスピッツに取り分け5分間、遠心分離機にかけて尿の中の固形成分(沈渣)を液体成分から分離させます。
この固形成分を顕微鏡で観察すると、赤血球や白血球、色々な結晶、上皮細胞や円柱などに加え、時には細菌、酵母が観察できます。
沈渣成分の確認および同定のためにSM染色(Sternheimer-malbin染色)を用いています。
顕微鏡の一視野(顕微鏡で見た時に一度に見える範囲)の中の数をそれぞれに数え最低10視野を平均して評価をします。
まず、弱拡大(LPF:low power filed , 100倍)で、標本内の有形成分が均等に分布していることを確認した後、強拡大(HPF:high power filed , 400倍)による鏡検をします。

血液が濾過され尿路や膀胱を通過して排出される間に剥がれ落ちた成分を尿沈渣として調べることで、主に腎臓や尿路系の病気の種類や部位を知ることができます。
また、感染や炎症があれば菌や白血球が増しており、発熱などの原因と判断する事もできます。
疾患の鑑別や、その程度を知ること、炎症•がんに繋がる細胞などがないかどうかを調べることで、早期診断、早期治療につながるよう厳しい目で判定しています。

さらに詳しく!異常とは?

健康な人でも、赤血球やその他の成分が観察される事があります。
一視野内に、赤血球0~4個以下、白血球0~4個以下、その他の上皮細胞や結晶が少量程度なら正常です。
服用している薬剤や、運動・発熱などにより一時的に陽性(正常の基準値以上)になる場合もあります。

異常値が出て感染症が疑われれば、細菌培養検査により原因となっている菌の同定などをします。
出現により疑われる疾患および病態を以下に示します

赤血球
・出現する赤血球の形態によって出血部位の予測ができます。
・均一赤血球:尿路・生殖器出血を伴う疾患(膀胱炎、前立腺炎、尿路結石、膀胱癌)
・変形赤血球:腎性出血を伴う疾患(糸球体腎炎、IgA腎症、腎盂腎炎

白血球
白血球の増加は、腎・尿路系の炎症性疾患の存在を示唆します。
・好中球:腎尿路系疾患全般 急性炎症
・好酸球:アレルギー性膀胱炎、間質性腎炎、尿路変更術後、尿路結石
・リンパ球:慢性炎症、腎移植後拒絶反応時腎尿路系結核
・単球:慢性炎症、薬物性腎障害による腎炎
・異型細胞:悪性リンパ腫、白血病

扁平上皮細胞
扁平上皮細胞は膣トリコモナスや細菌などの感染による尿道炎や尿道結石症、カテーテル挿入による尿道の機械的損傷後、前立腺癌のエストロゲン治療中や放射線治療中になどで観察されます。
扁平上皮細胞はエストロゲンの作用で増殖するため女性では多く認めます。更に女性の場合は外陰部・膣部由来の扁平上皮細胞が混入しやすくなるため、注意(前文記載)が必要です。

尿細管上皮細胞
尿細管上皮細胞の存在自体が、急性並びに慢性の尿細管障害により、尿細管上皮が尿細管基底膜から剥離・脱落し尿中に出現したと考えられます。

移行上皮細胞
移行上皮細胞が規定値以上の場合には、腎杯・腎盂から尿管、膀胱、内尿道口までの炎症性疾患、結石、腫瘍もしくはカテーテル挿入による機械的な損傷などが考えられます。

各結晶成分
体の中にあるときは温かいのに排出されめ室温になると冷却されて、尿中に結晶が析出しやすくなります。
結晶の存在=結石の存在というものではありません。
PHや投与薬剤によって特徴的な結晶が認められ、食事によっても変動します。
•常在成分の結晶化したものには…リン酸塩・シュウ酸塩・尿酸塩・炭酸塩・酸化ナトリウムなどがあります。
•常在成分でないものには…薬剤結晶があります。
•シスチン・チロジン・ロイシン・ビリルビンなどの結晶が観察された場合は病的意味を持ちます。

円柱
通常ほとんど観察されません。種類や性状の観察により尿細管の崩壊過程と尿停滞の程度を知ることができ、円柱の数は病変の広がりを示します。
・ガラス円柱:蛋白尿、健常人でも運動後に出現します
・顆粒円柱:慢性腎炎、ネフローゼ
・赤血球円柱:急性腎炎、腎出血
・白血球円柱:腎盂腎炎
・上皮円柱:尿細管病変
・ロウ様円柱:腎炎、ネフローゼ
・脂肪円柱:ネフローゼ、ループス腎炎、糖尿病性腎炎など

トイレから小窓でつながっている検査室で皆さまの尿の到着をお待ちしています。