腹部超音波検査 Vol.2 「びまん性肝疾患(よくある肝臓の病気を超音波で見てみよう)」

今回は肝臓の超音波検査についてお話します。
肝臓は重さが1000~1500gにも及ぶ、人体の中で最大の臓器です。
口から取り入れた食物は、消化を経て小腸で吸収されます。
豊富な栄養分は血液に取り込まれ、その血液は全身を巡る前に、『門脈』と呼ばれる、専用の血管によって肝臓へ運ばれます。
肝臓では、栄養分を貯蔵したり、栄養分の代謝を行い体に必要な物質を合成しています。
また、肝臓は取り込まれた有害な物質を体に無害な物質へ解毒する働きも持っています。
体に有害な物質の代表選手は、アルコールやアンモニアですが、肝臓で代謝され無害な物質へ変換されます。
このようにいろいろな働きを持つ肝臓ですが、その多様さから【小さな化学工場】に例えられることもあります。
この化学工場の働きが悪くなったり、働きそのものが失われてしまうのがいろいろな肝臓の病気です。その原因には、(肝炎ウィルス・アルコール・栄養過多・薬剤)によるものなどがあります。
実際の超音波画像を交えながら、よくある肝臓の病気についてお話します。

【脂肪肝】

脂肪肝の成因はいろいろありますが、栄養過多がやはりトップです。
実際の超音波画像です。

【アルコール性肝障害について】

体の中でのアルコール代謝
〈アルコール性肝障害の発生機序〉
①過度なアルコール摂取によって、脂肪代謝が抑制されることで、肝細胞に脂肪が蓄積される。(脂肪肝)
②アセトアルデヒドは直接的に肝臓を傷つけ、線維化を引き起こす。(線維増生)
③アルコール代謝のため、血流の上流で大量に酸素が消費され、下流では低酸素状態となる。(低酸素状態)
④持続する肝細胞障害により線維化が起こる。

大量飲酒を継続すると、脂肪肝→肝炎→肝硬変と肝障害が進行します。
ではどれぐらいの量の飲酒を続けると、肝障害が起きるのでしょうか?
日本酒換算で1日3合の飲酒を5年以上継続すると肝障害へと進行すると言われています。

※超音波検査では、脂肪沈着の有無や程度、肝障害の進行具合、肝細胞癌ができていないいかなどを調べることができます。定期的な検査がおすすめですよ。

次回は、肝臓の腫瘤性病変についてお話します。

謝辞 資料を引用させて頂きました神戸常盤大学の田村周二先生に感謝申し上げます。