「肝臓を占拠する!!パート1~できもの(悪くないもの)」腹部超音波検査 Vol.3

肝臓の病気。

そう聞いて思い浮かぶのは、肝炎・脂肪肝・肝硬変でしょうか?

これらは肝臓全体に変化を及ぼすものがほとんどですが、今回は、肝臓のなかにできるできものについて、腹部超音波検査で描出される代表的なものを紹介しようと思います。

肝臓の腫瘍や腫瘤が、腹部超音波検査で見つかって、良性か悪性かを判断する場合、腹部超音波検査の結果だけでは難しいことが多いです。
そんなときは、血液検査や造影CTなど、他の検査とあわせて評価する必要がありますが、ここでは、腹部超音波検査での画像の見え方を中心にイラストと一緒にまとめます。

肝臓内にできる漿液性の内容物が入った袋状構造物のことを言います。
比較的高頻度に認められ、通常は、無症状で良性、血液検査には影響がでないことが多いです。

ただし、大きなものになると腹部に圧迫症状が現れたり、嚢胞により肝臓内の胆汁が通る管をふさいでしまったり、また圧迫されると肝臓でつくられた胆汁がうっ滞し、閉塞性黄疸を起こしてしまうこともあります。
まれですが、嚢胞内に出血や感染を合併することもあるので注意が必要です。

原発性の良性肝腫瘍のなかでは最も高頻度に発生する疾患で、通常単発で無症状、そのほとんどは血管網でできていて、中身はスポンジのようにスカスカ、海綿状のものが多いです。

巨大なものだと、腹部不快感や
膨満感を伴うことがあり、このような症状があるものに関しては腫瘍摘出を行う場合もあります。

←腹部超音波画像
この画像では、肝血管腫の指標の1つである辺縁高エコー帯(marginal strong echo)が見られます。

最近、飲み過ぎて、肝臓に負担をかけているのか。。。
なんだか、肝臓が痛いような気がして心配。。。
そもそも肝臓って痛くなるの?

実は、肝臓自体には知覚神経が通っていないのです。
そのため、肝臓自体が原因で痛みを感じることはありません。ゆえに“沈黙の臓器”と呼ばれたりします。
ただし、肝臓に腫瘍ができたり腫れたり炎症を起こすことで、肝臓を覆う膜や、周辺の臓器が影響を受けて痛みを伴うことがあります。
このあと説明する肝膿瘍がその例です。

肝内に微生物(多くは細菌)が感染することで、膿が溜まり膿瘍を形成する疾患で、その多くに痛みを伴います。
感染経路としては、経胆道性のものが最も多く、胆石症、急性胆のう炎、胆管炎などの基礎疾患に合併する例がほとんどです。

細菌の侵入によって、肝臓や胆管に炎症が起こり、肝臓を中心に炎症が拡がることで、痛みが発生します。
血液検査では、白血球、CRP、ALPの値が上昇し、肝胆道系の炎症が示唆されることがある。
治療としては、重症例ならば経皮的ドレナージ、そうでなければ、抗菌薬を投与します。
自覚症状の特徴としては、悪寒・戦慄を伴う発熱、右季肋部痛、全身倦怠感などがあり、炎症による影響がほとんどです。

上記、腹部超音波画像。
膿瘍の辺縁は不整で、内部不均一な低エコー域として描出されています。
ここでは、感染した細菌が産生するガスによる点状高エコー(矢印)が観察されます。

肝臓のできもの(SOL)について、少しだけ紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
臨床検査技師の目線で、腹部超音波検査でわかる肝臓の占拠性病変(SOL)について簡単にまとめました。
この検査を、ご存じの方、そうでない方、モノクロ画像のなかに隠れているかもしれない病変は様々な姿をしています。
私たちの仕事の1つは、病変がないか探す、ということです。

一般に、この検査で使用する超音波は、人体への影響が極めて少ないとされています。
なので、不調の原因がはっきりしなかったからと言って、検査による体への負担をあまり考えなくていいと言えるのは強みですね。
自分の体(肝臓)のことを知れるよい機会だとも思います。

健診結果など、心配になったときには、腹部超音波検査などについて担当のスタッフに相談してみてください。
皆さんの不安を軽くできるように、医師や技師が待っています。
気になることがあれば、お話ししてください。
腹部超音波検査をすることで気持ちが楽になるのなら、私たちも安心します。

この記事を読んで、腹部超音波検査に少しでも関心をもっていただき、安心して腹部超音波検査を受けてもらえるきっかけとなれるならば嬉しいです。

さて、これで終わり。。。。。と見せかけて。
また次回に、この《肝臓を占拠する!!できものシリーズ》続きます。
なんと、二部構成なんです。
次回は肝臓の悪性腫瘍を中心にまとめますので、よろしければご覧ください。

参考文献等
肝臓の基礎知識(http://kanzoukiso.com/)

病気がみえる① 消化器 改訂第4版 メディックメディア
日超検 腹部超音波テキスト 医歯薬出版株式会社