腹部超音波検査 Vol.4「肝臓を占拠する!!パート2」

検査科

前回の続きを、はじめましょう。

んん?前回…? と、思われた方へ。
当院検査科発信の前回分の記事をご覧ください。
もちろん、この記事だけでも伝わるように作成しているので、前回の記事をご存じでなくても気軽にご覧いただけます!

さて。
前回は、肝臓にできる病変の中でも、
現時点で治療の必要がなかったり、経過観察対象だったり…
比較的、悪性のリスクが少ないできものについて紹介させていただきました。
今回は、いよいよ、悪性腫瘍について紹介していこうと思います。

肝癌には、大きく分けて、原発性と転移性の2つがあります。
原発性肝癌のなかでも肝細胞癌の割合が大部分を占め、肝内胆管癌は、まれです。
肝臓には冠動脈や門脈から血液が流入しており、血流豊富であるため、
乳癌や大腸癌など他臓器の癌が血液に運ばれる形で転移しやすいと言われています。

肝細胞に由来する上皮性悪性腫瘍
そのほとんどが慢性肝疾患(肝炎ウイルス感染→慢性肝炎→肝硬変)を背景として発生し、原発性肝細胞癌のうち約95%にのぼります。

日本における肝細胞癌の最大の原因C型肝炎ウイルスであり、肝細胞癌の約75%を占めています。(B型肝炎ウイルス由来のものは約15%)
アルコール多飲、アフラトキシン曝露、喫煙、高齢なども原因になるそうです。

←腹部超音波画像
ここでは、腫瘍が複数集まり(矢印)、内部エコーが不均一な像(nodule in nodule/mosaic pattern)として描出されています。

典型的なものでは、上記に加え、後方エコーの増強辺縁低エコー帯(halo)を伴う結節として描出されます。

がん細胞は、肝動脈からの血流を主な栄養として育っていくため、腫瘍部分の血流が豊富です。腹部超音波検査でもカラードプラ検査で血流の有無を確認することができ、腫瘍への豊富な流入血のことをバスケットパターン(basket pattern)と呼びます。

慢性肝炎、肝硬変は、肝細胞癌を発症しやすい危険因子とされていますが、
日本肝臓学会の情報によると、近年では肥満や糖尿病など生活習慣病由来の脂肪肝から肝細胞癌が発症することもあるんだそうです。

腹部超音波検査と腫瘍マーカー

腫瘍マーカーとは、癌細胞が産生する物質および正常な細胞が癌細胞に反応して産生する物質のことを言います。
肝細胞癌が産生する特徴的な物質(腫瘍マーカー)は、AFP、PIVKA-Ⅱ等であり、血液検査によって上昇を認めることで肝細胞癌を大きく疑う判断材料になります。

基準値
AFP 20 ng/mL以下(IRMA法)
PIVKA-Ⅱ40 mAU/mL未満(ECLIA法)

※PIVKA-Ⅱは健康な方の血液中には存在せず、ビタミンKの欠乏時や、肝障害、肝細胞癌などのときに血液中に出現します。
PIVKA-Ⅱについては、肝細胞癌で50%以上の陽性率を示しますが、肝硬変での陽性率は10%以下で、肝癌と肝硬変との鑑別にも有用です。
PIVKA-Ⅱは、もう1つの腫瘍マーカーであるAFPとの関連性がなく、AFPが陰性の肝細胞癌でも陽性を示すので、AFPとPIVKA-Ⅱを組み合わせて検査を行うことにより、肝細胞癌の診断がより正確になります。
ただし、ビタミンKが不足している方や、ワーファリンなどの抗凝固剤を服用したとき、アルコール多飲でも検査値が上昇するので注意が必要です。
※AFPは健康な方の血液にはほとんど存在していません。 しかし、がん化した細胞では、大量に作られるようになります。現在、AFPは、肝細胞癌の早期発見に最も有用といわれており、原発性肝癌(はじめから肝臓にできたがん)では、約40~50%の方に顕著な上昇がみられます。
急性肝炎、肝硬変でも上昇することがありますが、原発性肝癌のような顕著な上昇はみられません。転移性肝癌(もともと他の部位で発生して、肝臓に転移してきたがん)では、ほとんどが陰性です。

その他の原発性肝癌

肝内胆管癌(胆管細胞癌)

その名の通り、肝内胆管から発生した悪性腫瘍のことです。
高齢者に多く、肝硬変に合併することは少ないと言われています。
肝内胆管に発生することから、肝細胞癌に比べ、局所浸潤やリンパ節転移など、体内を循環し、遠隔転移をきたしやすいのも特徴です。
血液検査では、胆道系酵素(ALP,γ-GTP)やビリルビンの上昇を認めます。
これらは、主に肝細胞が障害されたり、胆汁の流れが悪いと上昇します。
腫瘍マーカーはCA19-9やCEAが用いられることが多いです。
治療としては、手術が第一選択ですが、遠隔転移等で手術困難な場合は化学療法が用いられることもあります。

転移性肝腫瘍(転移性肝癌)とは、肝臓以外に生じた悪性腫瘍が肝臓へと転移したものを言います。
肝臓には動脈血だけでなく門脈血も流入するため、肺と並んで悪性腫瘍の転移先となりやすいので注意が必要です。
特に、門脈を介して、大腸癌などの消化器癌から転移する割合が多く、類似したエコーパターンをもつ腫瘤が多発してみられることが多いです。

がん治療後の経過観察等で、血液検査や腹部超音波検査を定期的に実施し、転移の有無を確認します。

腹部超音波画像
ここでは、Bull’s eye pattern(中心高エコーおよび辺縁低エコー(○印))を呈する、辺縁不整な結節(囲ってあるものすべて)として描出されています。
他にも、典型的な所見として、腫瘤内に石灰化と思われる高エコーを複数認めたり、腫瘤中心部に細胞壊死を示唆する無エコー域を認めることもあります。

今回は、肝臓の悪性腫瘍について紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
なんとなく解っていただけたでしょうか?
臨床検査技師の視点から、肝臓の悪性腫瘍について、腹部超音波検査の画像はどうみえるのかを簡単にまとめました。
同じ がん細胞であっても、やっぱりモノクロ画像のなかに隠れている病変は様々な姿をしています。
早期治療がより求められている昨今、私たちにできることは、悪性腫瘍や治療が必要となる病変を、早期の段階で病変をみつけることだと思っています。

早期発見をするには、まずは患者さんが自分の不調に気付くこと。
(肝臓の機能が低下すると、体がだるくなったりするようです。)
そこで、受診した病院の医師が腹部超音波検査を依頼するかも知れません。
そのときは、是非、この記事を思い出してください。
この検査で使用する超音波は、人体への影響が極めて少ないと言われています。
皆さんの心配を取り払えるように、医師や技師が待っています。
皆さんの協力の元、我々も尽力いたします。
一緒に協力し、早期発見・早期治療に繋がる検査にしたいと願って、
今日も患者さんと患者さんの超音波画像に向き合っています。

長らくお送りしていた肝臓についての記事は今回でひと段落しましたが、
腹部超音波検査についての記事は続きます。
次回は、いよいよVol.5!!「胆嚢について」です。
胆嚢について少しでも知ってほしいので、次回ご期待ください。

参考文献等
肝臓の基礎知識(http://kanzoukiso.com/)
日本肝臓学会
病気がみえる① 消化器 改訂第4版
日超検 腹部超音波テキスト 医歯薬出版株式会社

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