最期までその人らしく~患者さん本人の意志を尊重した看護~

こんにちは。3階病棟で勤務するMです。

 

3階病棟は、様々な患者さんが入院されています。辛い治療を終えて元気に退院していく患者さんもいれば、最期の時を病院で過ごされる患者さんも少なくはありません。患者さんが自身の厳しい状況と向き合っている中で、私達看護師が大切にしていることは、「その人らしく過ごすことが出来る」ということです。

 

ちょうど1年ほど前、ある男性患者さんが入院されてきました。その患者さんは、無愛想で頑固で、初めは中々話もしてくれませんでした。それでもめげずに毎日話しかけていると、ある日私が発した、「小豆島に行きたいんですよね」の一言に「小豆島は俺の庭や!」とたくさん話をしてくださり、その日から笑顔で話をしてくださるようになりました。

 

しかし、だんだんと状態が悪くなり、力も弱り、自分の力では立つことも出来なくなってしまいました。ふらつきが強く、立ち上がることも一苦労な状況の中でも「トイレに行く」と言う患者さんに私は「尿瓶を持ってきましょうか?」と問いましたが頑なに拒否されます。「つらくない?無理してでもトイレに行きたい理由があるの?」と言うと、か細い声で「プライド。」とだけ言われました。昔から人の手を借りず、仕事と子育てを一人で行ってきたその患者さんにとって、最期まで自立した生活を送ることが望みであるのだと感じ、時間はかかりますが、出来る限り手助けをし、最後までトイレに行っていただくことにしました。

 

また、息子さんと外出されることをすごく楽しみにされ、いつも見える位置に大きいカレンダーを貼り、ペンを握ることもままならない身体で、外出の日にいびつな形の○を書き込まれていました。私達看護師、主治医はなんとしてでも外出出来る様に万全のケアを行い、外出が出来る様にサポートしました。いつも外出後は、疲れて帰ってこられますが、思い出話をされるその顔は穏やかで、嬉しい気持ちになったことを覚えています。

 

「その人らしく」と、言葉にすることは簡単ですが、その為にはまず、その人を知ることから始まります。カルテだけではなくその人の元へ足を運び、その人と関わり、信頼関係を作ることがまず第一歩だと私は思います。

 

忙しい日々ではありますが、今後も患者様とゆっくりと関る時間を大切にしていきたいと思います。