1回4時間の透析治療が標準の訳

日本の医療に於いては、週3回、1回4時間の血液透析が標準となっています。
最近では糖尿病患者や高齢患者の増加といった透析導入患者の多様化により、合併症の予防や生存率の向上などといった観点から標準透析時間が4時間といわれています。
しかし、透析中の血圧下降や嘔気・嘔吐などといった不均衡症候群の出現により標準透析時間の4時間という血液透析の維持が困難な場合もあります。
標準的な透析治療で透析中の血行動態が不安定となる症例や、高血圧状態が持続する高リン血症を呈する症例などといった、標準透析時間の4時間透析が困難な徴候を有する症例については、透析時間の延長や透析回数の増加などを検討し、長時間透析や臨時透析を考慮していきます。
長時間透析や短時間透析を施行するには施設における診療体制や、国が定める診療報酬などの観点から難しく、保険適応の縛りがあります。
ちょうど今年は診療報酬改定の年度になっており、その記載においても、3時間透析よりも4時間透析のほうが望ましいとなっています。

以前に「みどり病院の透析室の透析時間について」と題して掲載しましたが、再度振り返ってみましょう。
《長時間透析のメリット》
・緩やかに除水が出来るので体調の変化が少ない
・緩やかに除水を行うので、急激な血圧低下を防ぐ事が出来る
・貧血が改善し、造血ホルモンの使用量を減量する事が出来たり、リンやカリウムの吸着薬を減量、もしくは不要とすることが出来たりする
・長時間透析のほうが生命予後がよい
以上、上記の内容は長時間透析のメリットばかりをご紹介したように思います。
しかし、現状、現場の声としては、患者さんの希望は、ほぼ皆が短時間透析です。

新規導入時の説明をする際、「透析は1回4時間を週3回します。」と案内すると決まって「え~!そんな長いことすんの!もっと短くならんの!?」と言われます。
この会話からも分かるように患者さんにとって長時間透析は、いくら体に良いと説明されても苦痛でしかないのです。
そのため、生涯長く続く透析治療は患者さんのQOLを考慮した透析条件の設定が必要となってきています。
様々な状況や条件から治療のために長時間透析を施行したいと考えていても受け入れてもらえず、希望されない患者さんに対し、私達、透析室のスタッフが出来る事として、透析効率を評価する際は、毎月の透析前後の採血検査データを基に透析効率を計算し、シャント内の再循環を十分に考慮しダイアライザーの再検討・適正血流量の設定といった方法で、Drと相談しながら患者さんにとって、より良い透析が施行できるように努めています。

当院では、4時間透析が基本です。
4時間では除水が十分に行えなかった体重の増えの多い患者さんに対しては、5~6時間とやむを得ず延長して透析(除水)を施行することもあります。
が、しかし常に体重の増加が多く、明らかに暴飲暴食をやめられない患者さんに対しては、「あ~増えても水引いてくれるわ。」「好きなだけ食べても透析で何とかしてくれるわ。」といった楽な方に考えがいかないように、時には厳しく指導が行われる事もあります。
但し、心機能が低下していて4時間では除水が難しい方に対しては、体調の変化・血圧の変動をより観察しながら十分な説明と指導を行い納得してもらって長時間透析を施行しています。

私たちスタッフは、「今日は楽やったわ。」「4時間が早かったわ」の声が聞けるよう、そして患者さんが家族との楽しい時間が1日でも長く続くようにと願って、患者さんの日々の状態・血圧の変動、毎月の血液データを考慮し、常に1回4時間の効率の良い透析治療が標準であるように心掛けています。

以上が当院での透析時間が4時間の訳(理由)です。