抗インフルエンザ薬の予防投与って?~効果と持続期間・かかる費用を解説します~

年号が令和に変わり半年が経とうとしています。
今年の1月にインフルエンザが猛威をふるったことも過去の記憶となりつつあります。振り返ってみると、今年の流行では各地の医療機関や施設で集団感染が起こりました。淡路市の養護老人ホームでは、入居者と職員で計74人が、インフルエンザに集団感染し、うち71~99歳の入居者7人が死亡したとの報道がありました。当院においても年明けからの検査陽性者は120名を越え、職員も10名が羅患しました。又、4月~5月の暖かい時期になっても、小学校や老人施設でインフルエンザ集団感染の報告があり、当院では院内感染防止対策として入院患者さんへの面会制限やマスクの着用、手洗い励行を再徹底していきました。高齢者や透析患者等の免疫力の低下した方は重症になりやすいため特に注意が必要です。当院の透析施設では1回に24人が同じ空間で一斉に透析を受けるので、インフルエンザワクチン接種を義務付けています。

“ちょっと ちょっと ちょっと”

「インフルエンザの予防投与ってワクチン接種じゃないの?」と
疑問に思ったあなた!解りやすく解説いたしましょう。

#インフルエンザのワクチン接種と予防投与との違い

インフルエンザのワクチン接種は、長期間にわたってインフルエンザの発病や重症化を予防するものです。一方で、予防投与の場合、予防できるのは薬を服用している間だけです。また、予防投与は身近にインフルエンザにかかった人がおり、一定の空間で濃厚接触した時期がはっきりしている場合におこないます。そのため不特定多数の人と接するような場で、感染する可能性があったとしても、予防投与をすることは出来ません。

ご存じの通り、インフルエンザワクチンを接種したら=「インフルエンザにかからない」、というわけではありません。かかった時に重症化になるのを防ぐのが目的です。しかし、「受験直前に家族がインフルエンザにかかり、受験生本人に感染しないか心配」とか「子供がインフルエンザにかかり、寝たきりのおばあちゃんにもうつるかもしれない」などと、自分の周囲の人が感染してしまった場合、抗インフルエンザ薬の予防投与を検討しても良いかも知れません。しかし、予防投与には保健適用されず、全額自費となります。そこで、インフルエンザの予防投与とは何か?予防投与にかかる費用その効果まで詳しく解説します。

#抗インフルエンザ薬の予防投与とは何か

抗インフルエンザ薬の『予防投与』とは、インフルエンザに感染する可能性が強い場合に予防として薬を投与することです。家族など身近にインフルエンザにかかった人がおり、濃厚接触が疑われる場合の感染を防ぐときに行います。

#予防投与にはどんな効果があるか、又投薬のタイミング

抗インフルエンザ薬の予防投与とは、インフルエンザを発症する前に薬を投与し、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることで、発症しないか、発症しても軽い症状で済む可能性が高いといわれています。予防投与は、基本的に患者と接触してから『36時間以内』の投与が原則です。最も予防効果が高いのがこの時間なので、早めに投与する必要があります。

#インフルエンザの予防投与って具体的にどうする?

インフルエンザの予防投与には『タミフル』や『リレンザ』など、罹患した場合に治療する薬剤と同じ薬を減量して使います。通常治療で使用する量の1/2量を服用するのが基本です。1日1回服用しそれを10日間続けます。

#予防投与で、どれくらい発症を防げる?

36時間以内に服用すれば、かなりの高確率で発症を防ぐことが出来ると、いわれています。しかし完全に発症を防ぐものでは無いので、注意してください。

#感染から36時間を越えると、効果は少なくなります

特に、48時間以上経過した場合は、予防投与をおこなっても効果はありません。

#予防投与の効果が続く期間

先に記したように予防投与の効果が続くのは、基本的に服用している間のみです。
1週間または10日ほどの服用期間を終了すると、感染する可能性は十分にあります。

●かかる費用は100%自己負担

抗インフルエンザ薬の予防投与にかかる費用は100%自己負担です。インフルエンザの予防投与には、健康保険が適用されません。そのため100%自己負担になるのです。病院等によっても値段は多少変わりますが、薬代のみでおよそ¥5000円が必要です。加えて、問診などの診察料も加算されますので、それ以上の費用がかかると考えておきましょう。(予防投与の為に病院を受診した場合、診察料にも保健は適用されません)

いつになく「だるい、しんどい」などの自覚症状が出現した時点からウイルスの排出は始まっています。発熱して6時間ぐらいは簡易検査をしてもウイルス検出されない場合がありますが、ウイルスは排出されています。解熱後も数日間はウイルスを排出しますので、仕事復帰や登校時はマスクを着用し、外から帰ったら手洗いうがいを励行してください。

この記事を閲覧してくださった皆様のご健勝とご多幸をお祈りし申し上げます。