糖尿病患者の総エネルギー摂取量の計算方法変更について ~糖尿病診療ガイドライン2019版より~

栄養科

昨年、糖尿病診療ガイドラインが改訂されました。
その中で栄養に関する箇所の変更もあったので、お話したいと思います。
2019年9月2日の栄養科の記事で投稿した
【知っている?みどり病院の「糖尿病食」】http://midori-hp.or.jp/nutrition-blog/web19_9_01/
の中でお話しした糖尿病の食事の主なポイントの①適正なエネルギー量にする。
という話題がありましたがその中でBMI22を基準とした「標準体重」を用いて1日の総エネルギー摂取量の目安を計算するとお話ししました。
この度、用いるBMIの数値に年齢別に幅が出ることにより、総エネルギー摂取量の目安の計算にも幅がでることになりました。

まず、BMIとは・・・・・

ではまず、BMIについて少しお話しします。
健康診断などでもよく目にするBMIとはBody Mass Indexの頭文字をとったものであり、現在の身長と体重を元に、体格が肥満型かやせ型なのかを表す数値です。
計算式は体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)になります。
計算して出た数値をみて評価します。
WHOの国際的な基準によると、BMI25以上が過体重、30以上が肥満です。
しかし、日本人を含むアジア人の場合、BMI25以下であっても2型糖尿病や循環器の病気の発生リスクが高いとされています。そこで、日本ではWHOの基準によらず、BMI25以上を肥満とし、もっとも病気にかかりにくい標準体重をBMI22とすることが、日本肥満学会による判定基準になっています。

日本肥満学会による肥満度判定の基準
低体重(やせ)18.5未満
普通体重18.5以上25未満
肥満(1度)25以上30未満
肥満(2度)30以上35未満
肥満(3度)35以上40未満
肥満(4度)40以上

手軽に用いやすいため、様々な場面で利用されるBMIですが弱点があります。それは筋肉や脂肪量、骨など個々の要素を区別することができないことです。筋肉もりもり ボディビルダー体型の人であれば、脂肪より重い筋肉がたくさんあるため体重が重くなります。その為、筋肉量だけでBMI値30を超えてしまうこともあります。逆にやせているようでも実は筋肉量が少なく、脂肪量の多い、かくれ肥満という人もいます。BMIも万能ではないので、肥満を詳しく知るためには体脂肪率などを測り体の状態を知ることもあります。

BMIが高くても低くても問題

肥満だけでは病気とはいえませんが、合併症を伴う肥満症になりやすく、BMIの上昇とともに死亡リスクが上昇するとされています。
また、BMIが高いと問題視されることが多いですが、昨今は食の細い高齢者など、低いBMIにも注意が必要とされています。摂取エネルギーの不足から筋力が低下し、転倒や寝たきりの原因となる危険性が特に問題視されています。

では、糖尿病診療ガイドライン 2019はどう変わったのか

冒頭で、糖尿病診療ガイドライン 2019が改訂されて食事療法の総エネルギー摂取量目安の算出の基準が変わったことに触れました。
そのことについて話していきたいと思います。
今までは標準体重であるBMI22を基準に目標体重を計算していましたが、糖尿病診療ガイドライン2019からは65歳以上は総死亡率の最も低いBMIをもとにした年齢ごとに応じた目標体重を算出することになったことにより、BMI22ではなく、個人差を加味してBMI22~25の幅を持たせることになりました。

  • 65歳未満:〔身長(m)〕2×22
  • 65歳~74歳:〔身長(m)〕2×22~25
  • 75歳以上:〔身長(m)〕2×22~25*

*75歳以上の後期高齢者では現体重に基づき、個人の背景を踏まえ、適宜判断する。

例えば、160cm(65~74歳)だと
従来のBMI22だと目標体重は56kgとなります。
糖尿病診療ガイドライン2019で65歳~74歳の方だとBMIの基準は
BMI22~25になったため56~64kgとなり、個人の設定により8kgの差がでます。
つまり、体重の基準に幅が出ました。
そのことによりこれから話す総エネルギー摂取量の目安の計算にも個人差が出てきます。

新しい基準のBMIを元に総エネルギー摂取量目安を計算してみよう

総エネルギー摂取量の目安の算出式は
総エネルギー摂取量(kcal/日)=目標体重(Kg)**×エネルギー係数(kcal/kg)
**原則として年齢を考慮に入れた目標体重を用いる
ここにあるエネルギー係数(kcal/kg)とは下記の数値になります。
【身体活動レベルと病態によるエネルギー係数(kcal/kg)】
①軽い労作(大部分が座位の静的活動):25~30(kcal/kg)
②普通労作(座位中心だが通勤、家事、軽い運動を含む):30~35(kcal/kg)
③重い労作(力仕事、活発な運動習慣がある):35~(kcal/kg)

そこで、改訂された目標体重をもとに総エネルギー摂取量の目安を計算すると
②の普通労作の方を基準に計算すると体重あたり30~35kcalになります。
従来はBMI22の一律のときは
30~35kcal/kg×56kg=1680~1960kcal/日でした。
糖尿病診療ガイドライン2019では基準の体重に幅がでたため
30~35kcal/kg×56~64kg=1680~2240kcal/日となり、
より幅が広がり個人に合わせた設定が出来るようになりました。

今回は糖尿病診療ガイドライン2019を元に1日の総エネルギー摂取量の目安量の計算の改訂についてお話ししました。
個人の背景などに応じて食事の基準にも幅が出てくる内容になっています。
気になった方は医療機関で相談してみてくださいね。

追伸 BMI25より大きくかけ離れて高い場合のあなたへ

とはいえ、今の体重がBMI25より大きくかけ離れている場合は体重の調整が必要になっていきます。
肥満症診療ガイドラン2016ではHbA1cの改善については肥満症の体重減量目標を3~5%としています。その為、まずはこの基準を元に今より体重を減らしていきます。
例えば
160cmの方だと BMI30ある場合は体重77kgになります。
基準となるBMI22(56kg)~BMI25(64kg)とはだいぶん差があります。
その場合はまず体重減量目標を3~5%に設定し、2.3kg~3.8kg減量することになります。

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