抗菌薬を用いた感染症治療に関わる薬剤師

「抗菌薬」ってご存知ですか?
「抗生物質」と言ったらピンときますかね・・・。
今回は、抗菌薬についての内容です。
当院には「抗菌薬」について詳しい薬剤師さんがいますので、早速聞いてみましょう。

Q)「抗菌薬」ってどんな薬なのですか?また、どんな時に使うのですか?

A)抗菌薬は細菌の増殖を抑制したり、殺菌したりします。
通常は細菌感染を起こすと、患者さん自身の免疫作用が働いて細菌を殺菌することができます。
しかし高齢になると抵抗力が落ちてくるので肺炎や尿路感染症など様々な感染症を引き起こしやすくなってきます。
抗菌薬はその感染症を治療するために投与されるお薬です。

感染症はひどくなると死にもつながってしまう事もあるので、早期に正しい治療をする事がとても大切です。
そんな感染症治療の分野での薬剤師の役割について詳しく聞いていきましょう。

Q)薬剤師としてどのように「感染症治療」に関わっているのですか?

A) 抗菌薬には多くの種類があります。
これは感染症を引き起こす細菌によって、抗菌薬が効いたり効かなかったりするからです。
肺炎や胆嚢炎の感染症を起こす細菌は臓器によって違うので、主治医は感染症に応じて適切な抗菌薬を選択しています。
ところが、抗菌薬が思うように効かなかったりする時もあります。
そのような時に主治医から「抗菌薬が効いてないので相談したいんだけど」と電話が入ります。
私達は患者さんを診て、適切な抗菌薬の選択、適切な量、適切な投与期間、少ない副反応で感染症が治癒するように、主治医と一緒に治療法を検討しています。
このように私達は「執事」のように、見落としや忘れている点をそっとサポートしながら、患者さんの治療効果の向上を目指し、主治医が抗菌薬を正しく使えるように手助けをしています。

Q)「感染症治療」で耐性菌が問題になっていますが、何か対策をされているのでしょうか?

A)細菌は抗菌薬に対して抵抗力を持つようになった「耐性菌」に変身する場合があります。
耐性菌の出現は感染症治療においては非常に脅威です。
なぜなら、今まで効いていた抗菌薬が効きにくい、または効かなくなってくると感染症の治療が難しくなってくるからです。
その原因は、必要な期間以上に抗菌薬を投与し続けたり、投与量や投与回数が少なかったり、途中で抗菌薬を止めてしまうことなど抗菌薬の不適切な使用があげられます。
ですから、私達薬剤師は耐性菌が広がらないように抗菌薬を投与されている患者さん全てを常に「監視」しています。
耐性菌は徐々に進行してきますので、普段から監視して主治医に相談する事も私達の重要な役割なのです。

Q)最後に、これまでの経験で、記憶に残っている症例があれば教えて下さい。

A)78歳女性の方で、尿路感染からの敗血症性ショックの疑いで近医からの紹介入院となりました。
高熱と腰の痛みを訴えており、腎盂腎炎疑いで尿と血液の培養を採取して治療を開始していました。
数日後の尿と血液の培養結果は、尿からは大腸菌、血液からはブドウ球菌。
通常、尿路感染症なら大腸菌が血液中から培養結果として検出されるので、両方の培養検査の結果は一致します。
これはおかしいと思い、別に感染症があるのではないかと主治医に相談して検査していただいた結果、心内膜炎と脊髄炎という感染症が合併していました。
抗菌薬の選択も主治医と早急に検討しました。
治療期間は6週間と長い入院期間を過ごされましたが、抗菌薬の副作用も出ず、私がお部屋に訪問するといつも笑顔で対応して下さり、お元気になって無事退院されました。
この患者さんと出会ってからは、私達も抗菌薬の専門家としてより一層、研磨しないといけないなと感じながら日々業務に励んでいます。

ありがとうござました。
今後も抗菌薬の専門家として患者さんのために頑張って下さい。