治療抵抗性高コレステロール血症にも効く新薬「PCSK9阻害薬」

薬剤科

■LDLコレステロール管理の重要性~ハイリスクではLDL-C 70mg/dL未満~

脂質低下療法の解析からLDLコレステロール(LDL-C)値の低下量が大きいほど、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)を発症するリスクが低下することが明らかになっています。
特に冠動脈疾患を起こした既往がある患者さんは再発のリスクが高く、LDL-C値の厳格なコントロールが求められています。
2017年度版の日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドラインの改訂では、家族性高コレステロール血症(FH)や冠動脈疾患など、二次予防(再発予防)でのハイリスク病態においては、現在のLDL-C 100mg/dL未満よりさらに厳格なLDL-Cの管理、すなわち70mg/dL未満を目標としたより厳格な管理を考慮する旨が追加されました。
LDL-C値低下を目的とした治療には、内服のスタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害剤)が中心になっており、多くの症例では有意なLDL-Cの低下が認められています。
しかし、スタチン系薬剤でも効果不十分(治療抵抗性)の場合もあり、ハイリスク症例では100mg/dL以下のLDL-C目標値の達成率は約50%、更に厳密な目標値である70mg/dL以下の達成率はわずか10~30%と十分コントロールできているとはいえない状況です。
そこで今回、LDL-C値を強力に下げる新たな治療薬「PCSK9阻害薬」の皮下注製剤が発売され、治療抵抗性の症例に対してその有用性が注目されているのでご紹介します。

■PCSK9阻害薬とは~強力にLDL-Cを下げる薬剤(レパーサとプラルエント)~

PCSK9阻害薬はLDL受容体分解促進タンパク質であるPCSK9(プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)をターゲットとする新しい機序の皮下注薬剤です。
本剤はヒト型モノクローナル抗体製剤で、PCSK9とLDL受容体の結合を阻害することで、LDL受容体の分解を抑え、LDL-Cの肝細胞内への取り込みを促進する作用を持ちます。
日本で現在使用されているPCSK9阻害薬はエボロクマブ(製品名:レパーサ)およびアリロクマブ(製品名:プラルエント)が発売されています。

■治療抵抗性LDL-C血症~2週間あるいは4週間に1回の在宅自己注射も可能~

では、どのような症例に使用できるのでしょうか? 
PCSK9阻害薬の効能・効果は、「家族性高コレステロール血症(FH)、高コレステロール血症」となっており、LDL-Cが極めて高く心血管イベントの発現リスクが高いと医師に判断される方、スタチン系薬剤で治療抵抗性の場合に限ります。
「PCSK9阻害薬」は高コレステロール血症の薬剤の中で最も大きなLDL-C低下作用を持つ薬剤ですが、薬価も高く誰でも安易に使える薬剤ではありません。
基準を満たした方のみが用いる事ができる薬剤になります。
原則としてこれらはスタチン系薬剤と併用する必要があり、現在のところ単独で用いる事は出来ません。
用法は2週間に1回、あるいは4週間に1回皮下注となっています。
また投与に慣れてきますと、在宅での自己注射も可能です。

■スタチン系の限界とPCSK9阻害薬併用の理由~併用で相加的なLDL-C低下効果~

スタチン系薬剤はコレステロール生合成の抑制やLDL受容体の合成を促進し、LDL-Cを下げる作用を持ちますが、スタチン系薬剤にはLDL-Cを下げる限界があります。
倍量に増量しても効果は6%しか増加しないと言われています。
この原因としてスタチン系薬剤はPCSK9の合成を促進してしまうという側面を持っています。
したがって、スタチン系薬剤とPCSK9阻害薬を併用することで、相加的なLDL-C低下効果が期待されると考えられています。
併用することで60-70%LDL-C値を下げるという報告があります。

■主な副作用 ~検査値異常と注射部位反応~

主な副作用としては検査値異常があり、血糖値上昇、肝機能上昇、CK上昇などが報告されています。
その他として腫れや痒み等の注射部位反応や筋肉痛なども報告されています。

■二次予防の厳格なLDL-C管理~冠動脈プラーク退縮効果~

今回のガイドライン改訂で、冠動脈疾患の二次予防でLDL-C管理目標値が70mg/dL未満が設定されたのは、冠動脈疾患の既往例や糖尿病合併例では動脈硬化の原因である冠動脈プラークを退縮させるためには70mg/dL未満に管理することが有用であるとの複数の報告があるからです。
つまり、今までの100mg/dLの基準ではプラークは大きくなり、再発を防ぎきれないということがわかったということですね。

■最後に

PCSK9阻害薬の登場により、新たな脂質治療の選択肢が加わりました。
当院でもPCSK9阻害薬の投与が開始されています。
冠動脈疾患の発症をさらに減少させることができるPCSK9阻害薬(レパーサとプラルエント)に期待したいと思います。

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