新しい便秘治療薬グーフィスについて

便秘とは? ~まずは「便秘」を知ることが大切です~

便秘の症状は、大きく2つに分かれます。
排便回数や量が減少した状態、排便困難の状態です。
この2つの状態が混在することもあります。
このような症状が6ヶ月以上持続する場合に「慢性便秘症」と診断されます。
さらに原因により「器質性便秘」と「機能性便秘」に分かれます。
器質性便秘は腸の形態や構造の異常が伴うもので、胃腸の疾患によるものが多いです。
機能性便秘は胃腸の機能低下が伴うもので、ストレスや運動不足、食生活によるものが多いです。
便秘の患者様は日本人の1~2割程度で、年齢が高くなるほどその割合は多くなります。
女性に多くみられるイメージですが、高齢では男女差はありません。
便秘症に対しては、食環境や生活習慣の改善が大切ですが、並行して下剤を使った薬物治療が行われます。

便秘の治療薬 ~さまざまな種類があります~

便秘薬の一部は市販薬としても売られています。
また剤形としても錠剤、カプセル、水薬、粉薬、坐薬など幅広く存在します。
作用としては、腸内の水分を保って便をやわらかくするもの、腸の動き(蠕動運動)を活発にして排便を促すものがあります。

新しい便秘薬、グーフィスの登場 ~世界初の作用機序~

そこで今回は、新しい慢性便秘症治療薬『グーフィス』の紹介をしたいと思います。
この薬剤は、機能性便秘の慢性便秘症に使うことができます。
グーフィスは上記の「腸内の水分を保って便をやわらかくする」「腸の動きを活発にして排便を促す」2つの作用を併せ持ちます。
その作用機序は、胆汁酸トランスポーターを阻害するという世界初のものです。
通常の服用方法は1日1回2錠、食前に服用します。

作用機序をもっと詳しく ~そもそも胆汁酸とは?~

胆汁酸は胆汁の主成分です。
胆汁は肝臓で合成され、胆嚢に貯蔵された後、胆管を通り十二指腸に分泌されます。
脂質の消化や吸収を助ける働きの他に、大腸管腔内に水分を分泌させ、さらに腸粘膜に作用して蠕動運動を促進させる働きがあります。
そのため、腸管内の胆汁酸が不足してしまうと便秘を発症してしまいます。
胆汁中の胆汁酸は80%以上が回腸から門脈に再吸収され、肝臓に戻り再利用されます。
この再吸収に関与しているトランスポーターを特異的に阻害するのがグーフィスです。
胆汁酸の再吸収が抑制されるため、腸管内の胆汁酸が増え、便秘治療効果が発現されるのです。

注意すること ~副作用や飲み合わせ~

副作用で一番多いのは腹痛です。
低下していた腸の働きが薬を飲むことで活発になるため、軽度の痛みを感じることがあります。
また、下痢もあらわれるおそれがあるので、症状に応じて減量や中止を考慮する必要があります。
飲み合わせの相性が良くない薬もあります。
たとえば、胆汁酸製剤のウルソデオキシコール酸などは、グーフィスの作用点と同じトランスポーターで再吸収されるため、それが阻害されることによってウルソデオキシコール酸の作用が弱くなるおそれがあります。
一方で、消化管内の胆汁酸を吸着することにより薬効を示すコレスチラミンなどは、反対にグーフィスの作用を弱めてしまうことがあります。
また、胆汁酸がもともと出にくい肝障害のある患者様には効果が得られにくいため慎重に投与する必要があります。

最後に

高齢化により高齢者における便秘症が多くなり、これからますます慢性便秘症の治療の需要が高まっていくと考えられます。
今回紹介したグーフィスのような新しい作用機序の便秘症治療薬も加わり、治療薬の選択肢も広がってきています。
そんな中、適切な治療薬の選択、投与期間の検討など、薬剤師としても介入していき、患者様の排便コントロールに貢献できたらと思います。
また、市販の便秘薬の乱用も問題になっているようです。
自分の判断で市販薬を頻回に使用すると、症状がよくならないどころか、悪化させてしまう方も少なくないです。
ですから、医師や薬剤師に相談し、適正な薬剤を選択してもらうことが大切です。