ACE阻害薬が誤嚥性肺炎の予防に効く!?~副作用も時には役に立つ~

薬剤科

降圧剤のACE阻害薬に空咳の副作用があることは有名ですね。
この副作用のために、薬が使用できなくなるケースもあります。
しかし、このやっかいな副作用を逆に利用して、高齢者の誤嚥性肺炎の予防にACE阻害薬が使用されることがあるのですが、どうしてそのような効果が認められるのかを今回ご紹介したいと思います。

ACE阻害薬の作用機序~降圧作用と空咳が出る理由~

ACEとはアンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme)のことです。
この酵素は、人体内で血圧を上昇させる物質アンジオテンシンⅡを合成します。
ACE阻害薬はこの酵素の働きを弱めて、血圧を下げる働きがあります。
しかし、この薬は同時に、咳を引き起こす物質ブラジキニンやサブスタンスPの分解も阻害してしまうため、人によっては空咳の副作用(約1~5%)が出てしまいます。

誤嚥性肺炎とは

食べ物を飲み込む働きを嚥下機能、食べ物が食道に行かずに誤って気管に入ってしまうことを誤嚥といいます。
誤嚥性肺炎は、加齢や脳梗塞などが原因で嚥下機能が低下し、唾液や食べ物などと一緒に細菌が気道に入ることで起こる肺炎です。

なぜACE阻害薬が誤嚥性肺炎予防に効くのか~嚥下反射と咳反射を高める~

嚥下機能は、食べ物を飲み込む嚥下反射と気管に入った異物を出そうとする咳反射によって支えられており、この反射機能を調節しているのが神経伝達物質のドパミンとサブスタンスPです。
ドパミンは迷走神経知覚神経を介してサブスタンスPの合成を増加させ、サブスタンスPは咽頭や気道に作用して嚥下反射と咳反射を高めます。
前述のとおり、ACE阻害薬はサブスタンスPの分解を阻害するので、その結果嚥下反射と咳反射が高まり、誤嚥性肺炎を予防できると考えられています。
当院には、高齢のため嚥下機能が低下し、誤嚥を度々起こしている方がしばしば入院されていますが、そのような方に使用中の降圧剤を、ACE阻害薬に切り替えることで、誤嚥性肺炎が起きなくなった症例を私は経験しました。
誤嚥性肺炎を予防する薬には、ACE阻害薬以外にも、前回紹介したアマンタジンや、シロスタゾール、半夏厚朴湯などがあります。

副作用を利用した薬の使用例

ACE阻害薬のように、副作用と思われていた働きを治療に利用した薬は他にもまだあります。
例えば・・・。

<シロスタゾール>
抗血小板薬のシロスタゾールは頻脈の副作用がありますが、この作用を利用して徐脈性不整脈の治療に使用されることがあります。
「不整脈薬物治療に関するガイドライン」にも記載があり、洞性徐脈性不整脈の方で、ペースメーカの埋め込みをしない場合などに使用されます。
当院でも使用例があります。

<抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン塩酸塩)>
蕁麻疹・皮膚疾患の掻痒感や鼻炎などに使用される薬ですが、市販薬のドリエル®など、眠気の副作用が強いことを利用して睡眠改善薬として使用されるようになりました。

<緑内障治療薬(ビマトプロスト)>
緑内障治療薬のビマトプロスト点眼は、まつ毛が長く、太く、濃くなる副作用があります。
同成分の外用液は、まつ毛貧毛症治療薬として厚生労働省に承認されており、美容目的や、抗がん剤の副作用でまつ毛が抜けてしまった方に使用されています。
自費購入になります。

<麻薬性鎮咳薬(コデインリン酸塩)、麻薬(アヘン)>
鎮痛作用・鎮咳作用をもつ麻薬は、同時に消化管運動抑制作用をもつため便秘の副作用が出現しやすい薬です。
コデインリン酸塩、アヘンは止瀉薬としての適応があります。

最後に

紹介している使用方法はきちんとしたエビデンスがあり、ACE阻害薬は「脳卒中治療ガイドライン」、シロスタゾールは「不整脈薬物治療に関するガイドライン」に記載されています。
それ以外の薬は適応が認められていますね。
多くが実臨床で症例に出会ったり、医師から教えて頂いたりして使用方法を知りました。
このような使用例は他にも数多くあると思うので、今後も病棟業務・服薬指導などのon-the-job trainingと並行して、学術論文の探索などでどのようなエビデンスかを確認していきたいと思います。

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