「心臓の治療を受けに来た私が、どうして足のレントゲン写真を撮るの?」

放射線科

「心臓の治療を受けに来た私が、どうして足のレントゲン写真を撮るの?」
これは、先日レントゲン写真を撮りに来られた患者さんからの質問です。
こけてもいないし、痛みもないとなると、このように思われるのが当然かと思います。

では、なぜ先生はこの患者さんに足のレントゲン写真のオーダーを出したのでしょう?
順番に紐解いてみましょう♪

先生は足のレントゲンのどこを見ているの?

足のレントゲンには、骨や脂肪、筋肉が写っていますが先生はどこを見ているのでしょう?
それは、「アキレス腱」です。


図1:足のレントゲン写真

アキレス腱は図1の写真において赤色の矢印の部分であり、白く写ります。

先生はなぜアキレス腱を見ているの?

アキレス腱は歩行などで常に伸びたり縮んだりして負担がかかるため痛みやすく、その痛んだ所へ血液中のコレステロールや中性脂肪が付着します。
コレステロールや中性脂肪が多い人は正常な人より多く付着するため、アキレス腱が太くなってしまいます。
つまり、アキレス腱の太さをみることで、コレステロールがアキレス腱にたまるほど増加しているかが分かるのです。

コレステロールが増加すると身体にどんな影響があるの?

コレステロールが過剰に増えるとアキレス腱に付着するだけでなく、血管内の壁にも付着し蓄積します。
この蓄積により血管が詰まったり、動脈硬化が進行したりすることで心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患(CAD)へと繋がるのです。

「心臓の治療を受けに来た私が、どうして足のレントゲン写真を撮るの?」

ここまでの説明では、まだこの疑問は解決していませんよね?
アキレス腱が太くなると冠動脈疾患(CAD)の危険因子が隠れている可能性があることは分かりました。
しかし、「すでに冠動脈疾患(CAD)があることが分かっているのに、足のレントゲンを撮るのは順番が逆なのでは?」と思いますよね?

「アキレス腱の肥厚が認められるもの。」
この特徴が診断基準の1つとなっている病気があります。
「家族性高コレステロール血症:Familial Hypercholesterolemia (FH)」という病気です。
この病気は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を処理する遺伝子の異常によりLDLコレステロールの値がとても高くなる病気で、遺伝的な体質のため食事や運動だけではコレステロール値を下げることは難しく、FHに対する治療をしなければなりません。

また、FHは頻度の高い遺伝性疾患といわれており、日本ではFH患者数は推定約30万人と言われています。
しかしその診断率は1%未満であり、冠動脈疾患(CAD)を起こす高いリスクを持ちながら、自分がFH患者だとは気付いていない方が多いのです。
そのため、FHと診断された場合はその家族の方々も調べることが望ましいといわれています。

どのくらい太くなるとアキレス腱肥厚になるの?

FHの患者さんの60~70%でアキレス腱の肥厚があるといわれており、X線低電圧撮影(レントゲン写真)によりアキレス腱が一番太くなっているところの長さ(最大径)が9mm以上だった場合、アキレス腱の肥厚が認められています。


図2:X線低電圧撮影によるアキレス腱

図2の写真において、
左の①の写真では、最大径は13.4mmで、
右の②の写真では、最大径が7.09mmという結果になりました。
よって、①の写真の方はFHの診断基準項目のうちのひとつが当てはまることとなり、他にLDLコレステロール値が診断基準を満たすか、あるいは家族(2親等以内の血族)にFHか早期性冠動脈疾患の方がいた場合、①の写真の方はFHであると診断されます。

なぜ心臓の治療を受けに来た患者さんが足のレントゲン写真を撮ることとなったのか分かって頂けましたでしょうか?
アキレス腱の太さでいろいろなことが分かるなんて、驚きですね!

次回からは、心臓CTについてご紹介していけたらと思っておりますので、是非ご覧下さい。

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