胸のレントゲン写真で心臓の大きさを測ってみよう!

最近、死亡原因としてテレビなどでよく耳にする「心不全」という言葉がありますが、病名だと思っている方が多いのではないでしょうか?
実は、「心不全」という言葉は病気の名前ではなく、心臓のポンプ機能が低下し身体のあらゆるところへと影響が及んだ状態を言います。
では、心臓の機能が低下すると身体にどのような影響が出てくるのでしょうか?

~心臓のポンプ機能が落ちるってどういう意味?~

心臓のポンプ機能とは、全身に必要な血液をポンプ内(心臓内)に満たし、それを全身へと送り出す(拍出する)働きをしており、送り出された血液は身体中を循環して再び心臓へと戻ってきます。
心臓のポンプ機能が低下すると、心臓が全身へと送り出す血液の量(心拍出量(1分間あたり))も低下します。
心拍出量が低下するということは、身体が必要とする血液量を送り出す事が出来ないということとなります。

~心拍出量が低下するとどうなるの?~

心臓のポンプ機能が低下し心拍出量が低下すると身体にどのような影響が出てくるでしょうか?
・心拍出量が低下すると、腎臓は血液をろ過して尿を作り出すため尿量も減少してしまいます。
・心拍出量が低下すると、身体は必要な血液量を維持しようと働きます。
その方法として、以下のような方法があります。
・ポンプ内に溜めたぶんだけ全身へと送り出せる性質から、手や足などの末消血管を収縮して心臓へ戻る血液量を増やし、必要な拍出量を補う方法。
心拍出回数を増やして心拍出量を補う方法。
しかし、これら2つの方法は一時的には有効ですが、長期間に及ぶと心臓へ負担がかかり、心臓が拡大したり(心拡大)、脈拍が増加するなどの「心不全」と呼ばれる症状が現れます。

脈拍数の増加は自覚症状が出たり、ご自身で脈拍を測ったりなどすることが出来ます。
では、心臓の大きさはどうすれば分かるのでしょうか?
心臓の大きさは、「胸のレントゲン写真」で測ることが出来ます!

~胸のレントゲン写真を見てみよう!~

胸のレントゲン写真と聞くと、を見ているというイメージを持たれている方が多いと思います。
実際、「今日は心臓を診てほしくて来たのに、肺のレントゲンを撮るの?」という質問を受けたことが何度もあるほどです。
胸のレントゲン写真では、実は肺だけではなく心臓もみえているのです。
まずは、正常な胸のレントゲン写真を見てみましょう!!


図1:胸のレントゲン写真

図1の左側には撮影したそのままの写真を、右側には肺と心臓部分に色を分けて斜線を入れた写真を用意しました。
胃だと勘違いされている方が意外と多い真ん中の白く写ったかたまりが、実は「心臓」なのです。

胸のレントゲン写真でどこに心臓が写っているのかが分かったところで!
本題の心臓の大きさを測ってみましょう!

~心胸郭比(CTR)の測定方法~

人によって体格が違うように心臓も人によって大きさが違うため、心臓の大きさを測定するには、個人個人の体格を考慮しなければなりません。
心臓の大きさを表した比を「心胸郭比(CTR)」といい、その名の通り”胸郭の幅”に対する”心臓の幅”の割合で計測します。

それでは、実際に測定してみましょう!


図2:CTRの測定
心胸郭比(CTR)は、図2に基づいて以下の式によって求めることが出来ます。

よってこの方は、
R:34.22[mm]、L:78.21[mm]、D:258.67[mm] となりました。
これらを計算すると、CTR=43.46[%] と求めることが出来ます。

心臓の大きさを求める方法は分かりました。
では、どのくらいが大きくて、どのくらいが正常なのでしょうか?

「心胸郭比」の正常値は50%未満とされており、50%以上の場合を「心拡大」と呼んでいます。
よって、図2の方のCTRは43.46%だったので、正常ということが分かります。

ここからは、心拡大と呼ばれる50%以上の心臓の写真をみてみましょう!


図3:心拡大の胸のレントゲン写真

上の図3の①と②では、どちらの心胸郭比(CTR)が大きいと思いますか?
それでは、計算してみましょう。

①の方の場合
R:58.25[mm]、L:105.50[mm]、D:275.37[mm] となりました。
これらを計算すると、CTR=59.47[%]

②の方の場合
R:52.10[mm]、L:138.25[mm]、D:323.01[mm] となりました。
これらを計算すると、CTR=58.93[%]

よって、答えは、、、① となります。
この結果に驚いた方も多いのではないでしょうか?
上記でも述べたように、CTRは各々の体格を考慮して計算を行います。
そのため、胸のレントゲン写真を見て②のように心臓が大きい印象だったとしても、胸郭の幅が大きいとCTRの値はそれほど大きくはならないのです。
しかし、①②の両者ともCTRが50%以上となるので心拡大となります。

~まとめ~

今回は胸部レントゲンからわかる心拡大について紹介させていただきました。
健康診断などで胸のレントゲン写真を撮ったことがある方も多いと思います。
今回の記事をきっかけに、皆さんが自分の胸のレントゲン写真を見て肺だけではなく心臓にも着目していただければと思います。