突然認知症といわれたらどうしますか

地域連携室

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高齢者が入院された後夜中に急に病院から電話がかかってきて、「○○さんが暴れて困っています。今すぐ病院に来てくださいますか?」という方は大勢いらっしゃると思います。
それでなくても身内が入院となり、困惑しているのに「何故?」「何が起こったの?」「どうして?」と思われる方は大勢いらっしゃるのではないでしょうか?
入院し、このような状態になると『認知症なのでは?』と思われる方が多く、医療従事者でもそのように判断してしまうことも多くあります。
ですが、その症状は認知症ではなく、『せん妄』と言われる状態であることが多いのです。
今回は入院せん妄のお話をいたします。

せん妄

せん妄とは意識障害が起こり、頭が混乱した状態になっていることを言います。
何らかの原因で脳の機能が低下し、上手く神経を伝えることが出来なくなっています。
幻覚を見ることもありますし、言葉をかけても落ち着くことが出来ず、興奮状態となって大声を出したり、暴力が見られたりする場合もあり、対応が難しく家族の負担になりやすいものです。

“ふだんとなにかおかしい”

昼間はいつもと同じく周りの様子がよくわかって落ち着いてお話もできていた患者さんが夜になって突然そわそわしたり、興奮して動き回ったり話が全然通じなくなったりして驚かれた方もいるかもしれません。
その症状が『せん妄』と考えられます。

せん妄の原因

ハイリスク
□70歳以上
□認知症
□重症患者
□侵襲の高い治療
□頭部疾患の既往
□向精神薬の多剤併用
□せん妄の既往
□アルコール多飲

憎悪因子
□不快な身体症状
・痛み・切迫尿意、便意・呼吸困難・尿バルーンカテーテル・点滴ルート
□環境の変化
・不眠・ICU/個室・可動制限(点滴、安静)
□精神面(不安・抑うつ)
□感覚低下(視力、聴力)

原因
□感染
□脱水
□低酸素血症
□その他
・臓器障害(脳・心・肝・腎…)・代謝異常・電解質・貧血・ビタミン欠乏・低栄養
□薬

せん妄の症状

せん妄は突然始まり、数時間から数日間かけて進行します。
せん妄状態の人は様々な行動をとりますが、大まかには徐々に酩酊していく人に似た状態になります。
アルコールを摂取し、酔っているときも一種のせん妄の状態です。
せん妄の状態の人は何かに集中することが出来なくなるため、新しい情報を処理できず、最近の出来事を思い出せなくなります。
思考が乱れ、あてもなく歩き回ったり、ときには支離滅裂な行動をとったりします。
また意識のレベルの変動が大きく、異常なほど覚醒していても次の瞬間には眠そうになり、外部の刺激に鈍くなることもあります。
せん妄状態の人は、睡眠中も落ち着きがなかったり、睡眠と覚醒のサイクルが逆転して昼間に眠って夜間に起きていたりすることも良くあります。
また、実際に存在しないものが見える幻視やそこにいない人が訪ねてきたと言い張ったりします。
せん妄は人格や気分を変えてしまうこともあるため、物静かで内向的になる結果、せん妄状態にあることを誰からも気づかれない人もいれば、イライラして興奮状態で活動過多となる人もいます。
夜中に病院から突然呼び出されるときはこの活動過多の対応の人がほとんどです。

せん妄の早期診断

“ふだんとなにかおかしい”⇒ 家族に確認する

せん妄の体験

●変な物が見える
●どこか分からない
●人間の尊厳(特に排泄トラブル)

本人は怖い⇒安心できる環境・対応

せん妄は不安・怖い体験となります。
せん妄での行動は、この不安、恐怖から逃れるための自然なものです。
たとえば、「どこに居るか分からず、変な物(点滴や医療用の管)につながれている。とにかくここから逃げなくては」といった具合です。
せん妄の患者さんは「つじつまの合わない行動」をするのではなく、患者さんにとってはちゃんと理由がある、やむにやまれぬ行動なのです。
せん妄の原因を治療することにより、症状が改善しますので治療が安全に行えるためにも安心できる環境づくりや対応をすることが重要となります。

意識を保つ工夫

・カレンダー、時計を見やすく
・時間や場所をこまめに伝える
・予定に関する情報提供
・窓から景色が見えるように
・眼鏡、補聴器の準備
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快適、安全な環境

・必要性の低いカテーテル抜去
・点滴のルートなど見えにくく工夫
・最小限の身体の固定、センサーなども活用
・アラーム音、環境雑音の調整
・危険物の除去

生活リズムの改善

・昼は明るく、夜は薄暗く
・座位、リハビリ、散歩
・テレビ、ラジオをつける
・巡回、処置の時間の配慮

ご家族の方へ

せん妄は何らかの原因により意識障害が起こり、頭が混乱した状態になっていることです。
決して「気が狂った」「認知症」ではありません。
ご家族が不安になると、患者の不安はさらに大きくなってしまいます。
できるだけ日中にお越しいただき、“ふだんとなにかおかしい”ことがあれば主治医や担当の看護師にお伝えください。
私たちがご家族にお願いしたいことは「安心を作るための協力」です。
遠慮なく、いつでもご相談ください。

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