続“ADL”について

作業療法では、「生活をする為に必要な能力の獲得」を目指して、日々の訓練をしています。
病気やケガの直後からリハビリテーションを開始して、その人に必要な生活行為の訓練をしていきます。
まずは、食事・整容・更衣・排泄・入浴といった身の回りに関することを課題として取り組むことが多いですね。
これらの「日常生活動作」のことを、“Activities of Daily Living” ADLといいます。
ADLがお一人で出来るか出来ないかで、介護の負担が大きく変わってくるので、なるべく早い段階で訓練を開始して、ご自身の生活を考えていくことが大切になってきます。

しかし、身の回りのADLが自立すれば、在宅生活が継続できるでしょうか?
生活をする為に必要な活動は、それだけではありませんよね。
ご飯は誰が作るの?掃除や洗濯は?買い物に一人で行けるかしら?
私たちは多くの生活行為を行いながら暮らしているのです。
ADLよりも複雑で高次な行為や動作を、「手段的日常生活動作」 “IADL(Instrumental Activity of Daily Living)”といいます。
具体的には、買い物や洗濯、掃除等の家事全般や、金銭管理や服薬管理、外出して公共交通機関を利用する等を指しています。

手段的日常生活動作(IADL)尺度
項目
A電話を使用する能力
1自分から電話をかける(電話帳を調べたり、ダイアル番号を回すなど)
22,3のよく知っている番号をかける
3電話に出るが自分からかけることはない
4全く電話を使用しない
B買い物
1全ての買い物は自分で行う
2小額の買い物は自分で行える
3買い物に行くときはいつも付き添いが必要
4全く買い物はできない
C食事の準備
1適切な食事を自分で計画し準備し給仕する
2材料が供与されれば適切な食事を準備する
3準備された食事を温めて給仕する、あるいは食事を準備するが適切な食事内容を維持しない
4食事の準備と給仕をしてもらう必要がある
D家事
1家事を一人でこなす、あるいは時に手助けを要する(例:重労働など)
2皿洗いやベッドの支度などの日常的仕事はできる
3簡単な日常的仕事はできるが、妥当な清潔さの基準を保てない
4全ての家事に手助けを必要とする
5全ての家事にかかわらない
E洗濯
1自分の洗濯は完全に行う
2ソックス、靴下のゆすぎなど簡単な洗濯をする
3全て他人にしてもらわなければならない
F移送の形式
1自分で公的機関を利用して旅行したり自家用車を運転する
2タクシーを利用して旅行するが、その他の公的輸送機関は利用しない
3付き添いか皆と一緒なら公的輸送機関で旅行する
4付き添いか皆と一緒で、タクシーか自家用車に限り旅行する
5まったく旅行しない
G自分の服薬管理
1正しいときに正しい量の薬を飲むことに責任が持てる
2あらかじめ薬が分けて準備されていれば飲むことができる
3自分の薬を管理できない
H財産取扱い能力
1経済的問題を自分で管理して(予算、小切手書き、掛け金支払、銀行へ行く)一連の収入を得て、維持する
2日々の小銭は管理するが、預金や大金などでは手助けを必要とする
3金銭の取り扱いができない

みどり病院のある神戸市の65歳以上の人口は約41万人。
また、神戸市の高齢者世帯数(高齢者のみの単身世帯および高齢者夫婦世帯数)は総世帯数の22.9%と緩やかに増加傾向にあるそうです。
高齢の方だけで暮らしている人が増えてきているということですね。
実際に訓練を担当させていただいている患者様を思い返しても、独居の方や高齢者夫婦で暮らしている方のほうが多いように思います。
ですから、高齢になってもADLだけでなくIADLを含めた日常の生活行為の獲得が、在宅生活を継続するうえで必要になってきています。

IADLのリハビリテーションは、それぞれの背景疾患や生活環境が異なるため、その人その人に合わせた動作の分析や評価が求められ、適切な訓練を提供しなければなりません。
自宅の隣に食料品店がある方もいれば、車で数十分かけて行かなければならない方もいるでしょう。
エレベーターのない集合住宅にお住まいの方は、毎回のゴミ出しにも一苦労です。
肩が痛ければ、洗濯物を干すことができません。
物忘れが気になってきた方は、正しくお薬を飲めているか心配です。
細かいことですが、一つ一つ出来ることと出来ないことを評価し、その原因を考えて練習したり、介護保険サービスの利用をお勧めしたりしながら、在宅生活が継続できるように支援しています。

ADLやIADLのことでお困りの際はお気軽に、お尋ねくださいね。
我々リハビリテーション科は、お一人お一人に合わせて生活を評価し、全力で皆様の“できるADL”を応援します。

最後に、つぶやき…

昨年の日本作業療法学会で、認知症に関する講演を聞きに行きました。
それによりますと、認知症のスクリーニング検査の一つであるMMSEとIADLは相関するそうです。
また、認知症の前段階と言われる軽度認知障害(MCI)の時期から、金銭管理や服薬管理といった、より複雑なIADLが難しくなってくると言われていました。
さらにそれよりも数年前にさかのぼって、極めて複雑なADL“Complex ADL”(財産管理や各種の契約、旅行など)が出来なくなってきている事が分かったそうです。
もちろん、加齢とIADLも関係しており、平均的に78歳を越えてくるとIADLが徐々に低下してくるといわれていますが、アルツハイマー型認知症の方は、IADLの低下開始年齢が早く、発症する前の60歳代よりIADLの低下がみられたそうです。
病院で生活を考えるということがとても重要で、しっかりと評価や訓練のできる作業療法士でありたいと思う今日この頃です。

メニュー