心臓リハビリテーションに大切なこと

心臓リハビリテーションは、1995年、米国公衆衛生局により、「医学的な評価、運動処方、冠動脈危険因子の是正、教育およびカウンセリングからなる長期にわたる包括的なプログラムであり、このプログラムは、個々の患者の心疾患に基づく身体的・精神的影響をできるだけ軽減し、突然死や再梗塞のリスクを是正し、症状を調整し、動脈硬化の過程を抑制あるいは逆転させ、心理社会的ならびに職業的状況を改善すること。」と定義されています。
自分の病気を理解して指導・安全管理・危険因子管理・心のケアなどを総合的な治療を受けるもので、医師・理学療法士・看護師・薬剤師・臨床心理士など多くの専門医療職が関わって、患者一人一人の状態に応じたリハビリプログラムを提案し実施します。
運動療法を行うことで筋力の低下を改善し末梢循環の改善、自律神経のバランスを改善し少しずつでも、もとの生活・活動性に近づくことにより、社会生活を取り戻すことができます。
また、運動を続けていくことで再発を予防し、QOL(生活の質)を向上することができます。
リハビリテーションには、運動内容の指導、生活習慣の指導、栄養科による栄養指導、薬剤師による服薬指導が入院期間中のプログラムに盛り込まれています。
運動指導のみでなく、生活習慣指導・食事(栄養)指導・服薬指導なども包括的に行われることが大切です。
手術前日の患者様は、やはりどなたも多かれ少なかれ不安をもってらっしゃいます。
われわれは、お部屋を訪ね担当者の挨拶をします。
お気持ちを伺いながら身体の状況確認をし、術後のリハビリテーションのご説明をします。

・いよいよ明日ですが、お気持ちはいかがですか?
・眠れますか?
・今までどんな時に息苦しさ等の症状があったのですか?
・どれくらい歩けましたか?
・関節のどこかに痛みはないですか?
・肩、頸の動きはどうですか?
・肩はこりやすいですか?など

お話を伺うことで、不安な気持ちを少しでも和らければと思っています。
また、術後、目覚めた時に知った顔の者が訪ねることで少しでもホッとされるのではないかと思っています。
術前の身体状況を把握することで、術後のリハビリテーションに結び付けています。

当院で以前、手術をうけられた女性の患者様は、高齢で背が低く長年畑仕事をされていた為か、円背が強い方でした。
円背のためにあおむけの姿勢で横になる事も難しく背中にクッションを入れる必要があるほどでした。
もともと家の中では、伝い歩きで生活されていましたが、院内の廊下を歩いていただいた様子から、手術後に伝い歩きは難しいだろうと判断しました。
そこで 歩行器を使ってみると、スムーズな歩行ができ、本人も「これは楽に歩ける。」とおっしゃいました。
「術後はこれを使って歩きましょう。」と話すと非常にホッとされたお顔をされていました。
実際に術後、歩行器を使用しました。
体への負担も少ないこともありましたが、患者様が「これに頼っていいんだ。」という安心感を得られたことにより順調に歩行へとつなげたのだと思います。
退院時には歩行器を購入し、自宅でも使用されているということです。
病からの回復、再生していくことは、忍耐、努力、辛抱も必要です。
そのためには、心理的な援助であるご家族の協力も必要です。
治療中は孤独を感じることもあるでしょうが、私たち治療者がそばにいます。
あなたの“自分でできる”を応援しています。