糖尿病の運動療法

〇糖尿病とは

糖尿病はインスリンの作用不足に基づく慢性の高血糖状態を来す代謝疾患です。
糖尿病を患うことで、細小血管障害である糖尿病腎症・糖尿病網膜症・糖尿病神経障害となる危険性があります。
これらは糖尿病の「三大合併症」といわれています。
さらに糖尿病が悪化することにより、大血管障害である心筋梗塞・脳卒中となる危険性もあるのです。
糖尿病は1型と2型に分類されますが、今回は主に生活習慣と大きく関係する2型糖尿病についてのお話をしたいと思います。

〇なぜ糖尿病に運動療法が効果的か?

1. 運動の急性効果として、ブドウ糖・脂肪酸の利用が促進され血糖が低下する。
2. 運動の慢性効果として、インスリン抵抗性が改善する。
3. エネルギー摂取量と消費バランスが改善され、減量効果(基礎代謝の向上)が期待できる。主に以上が糖尿病の運動効果としてあげられます。そのほか、運動により高血圧や脂質異常の改善、心肺機能の向上など身体に良い効果が得られます。このように運動は健康な生活を送るために良い効果が得られるのです。

〇糖尿病にはどんな運動が効果的か?

1. 全身を使った有酸素運動
糖尿病の運動は有酸素運動が良いとされています。
有酸素運動というと難しく聞こえますが、少し早足でのウォーキングを15~20分行うだけでも効果が期待できます。
2. 負担の多すぎない全身の筋力トレーニングも有効的
筋肉が刺激されることで細胞内タンパク質である(GLUT4)が活動し、盛んに血液中の糖を細胞に取り込む効果が期待できます。

〇運動のタイミングと注意点について

1. 有酸素運動は食後1~2時間がベスト
血糖値の上昇は食後1~2時間後にもっとも高くなるといわれています。
この血糖値が高くなる時間帯に運動をすると高い効果が得られます。
2. 運動の頻度は週3回以上が目標
もちろん毎日の継続が理想ですが、実際には仕事などで時間が取れない方が多いのではないでしょうか。
運動による血糖値の下降作用は24~48時間持続されるともいわれます。
無理のない程度で構いませんので生活習慣の中に運動を取り入れてはいかがでしょうか。
3. 低血糖の症状に注意
低血糖の症状として手の震え・動悸・顔面蒼白・頻脈・発汗などがあげられます。
これらは主に血糖コントロールのための薬物療法を行っている方に多い症状です。
このような症状がある際は運動を中止し専門医師へご相談下さい。

〇当院での糖尿病教育入院について

糖尿病治療の3本柱として、1.食事療法 2.薬物療法 3.運動療法が重要とされています。
医師を中心に専門の栄養士・薬剤師・理学療法士が個々に合わせて介入させて頂きます。
糖尿病教育入院された患者さまの声としまして
「どんな運動をしたら良いのか分からない」
「運動はしたいけど時間がない」
このようにおっしゃる方が非常に多いのも現状です。
当院では糖尿病の運動療法としまして、NU-STEPという全身有酸素運動が可能な機器を使用するなど工夫をしております。
実際に患者さまに合わせた負荷にて、適切な運動時間に合わせて運動を体験して頂きます。
加えて、患者さまが日頃から、運動を日常生活の中に取り入れられるように自分でできる運動方法などをご提案させて頂きます。

糖尿病の運動は日頃からの継続が大切と考えております。
皆さまの治療に対する疑問点にお答えできるように、当院では定期的に『糖尿病教室』を開催しております。
費用は無料、糖尿病の有無は問いませんので、奮ってご参加頂けたら幸いです。
リハビリテーション科では日頃からの継続した運動習慣が身に付くように「あなたの自分でできる」を応援いたします。