いつまでも元気に食べるために ~食べやすい食形態~

以前、嚥下障害についての説明をさせて頂きました。今回はその続きで、食べやすい食形態についての記事を書かせて頂きます。

ですが、その前にもう一度簡単に「嚥下障害」についての説明をさせて頂こうと思います。

摂食・嚥下(えんげ)とは、食べ物を目で認識するところから始まり、口腔、咽頭、食道を経て胃に至るまでの一連の流れの事を指します。
そして摂食・嚥下障害とは、この一連の動作に障害があることです。
そして、誤嚥(ごえん)とは、食べものの一部、あるいは全部が声門より下にある気道に入ってしまう事をいいます。
また、飲食物や唾液などの分泌物を誤嚥した事により起こる肺炎を、誤嚥性肺炎といいます。

近年、テレビや新聞でも「嚥下障害」という言葉が取り上げられることが増えたように思います。
「嚥下」や「誤嚥」について上に書いたような事を知っておられる方も多く、当院に入院される患者様が、主治医の先生から「誤嚥性肺炎です。」と説明を受けても、すんなり理解されるご家族様も多い印象があります。
では、嚥下障害を持っておられ、誤嚥性肺炎を発症してしまったら今後食事が食べられないのかと尋ねられると、一概にそうではありません。
勿論、嚥下障害には重症から軽症と様々あるのですが、食事の内容や食べ方に気を付ければ、退院してからも食事が食べられる場合も多くあります。
では、どういった食品が食べやすく、どういった食品が食べにくいのかという説明をしたいと思います。

食べにくい食品として、意外に思われるかもしれませんが、「水分」が挙げられます。
水は、どんな形にも変化しますね。
そして、どんな狭い隙間にでも流れ落ちていきます。
嚥下障害は、飲み込みの一連の流れに障害があることです。
ですから、飲み込むのに時間がかかる方や、一度でしっかり飲み込みきれない方の場合、まだ飲み込む準備が出来ていないのに下へと流れてしまう可能性があるのです。
そうすると流れてしまった水分は、気管の方へと入ってしまうことがあります。
水分は例え小さなスプーン一杯でも誤嚥してしまう可能性があり、大変誤嚥リスクの高い食品と言えます。

そこから派生して、味噌汁や高野豆腐などは誤嚥しやすい食べ物と言われます。
味噌汁は、口の中に入れると具と汁が一度に入ってきますね。
具(固形物)を噛み砕きながらも汁(水分)は口の中に入っている状況にあるので、機能が低下していると水分だけが喉の奥へと流れ込んでしまう可能性があります。
高野豆腐は、噛むと水分がじわっと出てきます。
味噌汁と同様に、水分と固形物が口腔内に混在することになるので、こちらも食べにくい食品と言われています。

では、どんな対処があるかと言いますと、とろみを付けることがその一つです。
サラサラの水分より、とろみのある水分にすると、流れていくのが多少緩やかになるイメージがありませんか?
片栗粉で少しとろみをつけたスープなどを思い浮かべて頂くとよいかと思われます。

次にあげる食品は、皆様も思い当たる節があったり、納得して頂きやすいかと思いますので、箇条書きで述べていきます。

  1. 固いもの:肉のかたまり、タコ、イカなど
  2. 繊維が残るもの:蕗(ふき)、ごぼう、筍、セロリ、水菜など
    繊維質のものは、「噛んでも噛みきれない」という訴えをよく伺います。
    「噛んでも噛みきれない」ものは、「飲んでも飲みきれない」「飲みにくい」となりやすいです。
  3. 口の中でバラバラになるもの:煎餅、焼き鮭、ゆで卵など
    口の中でバラけてしまい、ひとまとまりになりません。
    まとまらないと、大変飲みづらいのです。
  4. 口の中に張り付いたり、喉につまりやすいもの:海苔、ワカメ、こんにゃく、餅など
    海藻類は、細かく刻んであれば良いのですが、大きいものだと飲みにくいです。
    餅や団子が詰まるというのは、もう何十年も昔からでしょう。きっと。
  5. パサパサするもの:パン、粉ふき芋、そぼろなど
    ③と同様に、ひとまとまりになりにくいので、飲み込みにくいですね。
  6. 酸味が強いもの:酢の物、梅干し、ミカンなど
    強い酸味(お酢など)は、近づいて空気を吸い込むだけでムセが出ることがあります。

これらが食べにくい食品です。
ですから、食べやすい食品は、これらの逆であればよいという事になります。
こちらも箇条書きで述べていきます。

  1.  粥状:お粥、パン粥など
  2. トロリとしたもの:ポタージュ、シチュー、カレー、ヨーグルトなど
  3. ゼリー状:ゼリー、水ようかん、煮こごりなど
  4. プリン状:プリン、ムース、卵豆腐など
  5. ミンチ状:肉団子、つみれ、つくね、ハンバーグなど

食べやすい食品は、全体的にとろりとしていて、ひとまとまりになっているものが多く挙がっているのに気づいて頂けると思います。
ですが、嚥下障害にも様々なものがありますので、一概には言えない部分もあります。
不明な点や気になる事がありましたら是非、かかりつけの先生にご相談ください。
次回は、実際の食べ方や食べる姿勢などのお話をしたいと思います。

私がみどり病院で勤務させて貰って一年が過ぎました。
そして今年の春から、もう一名の言語聴覚士が入職しております。
嚥下訓練や言語訓練をさせて頂くにあたり、同じ専門職のスタッフがいるのはとても心強いものです。
様々な職種のより多くの目線で、障害の評価や訓練を出来るというのは、患者様にとっても、とても良いことだと思います。
これからも皆様の「自分で出来る」を応援させて頂きますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

最後に…
今年はとても暑い夏。
と思っていたら、急に涼しくなったように思います。
私の自宅の周りにはまだ緑も多いので、車の音も一切聞こえてきません。
エアコンもテレビも付けずに窓を開けていると、秋らしい虫の音が聞こえてきて、とても豊かな気分になりました。
こんな虫の音は、きっと大昔から変わっていないんだろうなと思うと、しみじみした気持ちになります。
そして食欲の秋ですね!!
しっかり食べて、そして運動をして、元気に日々を過ごしましょう。

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