涙もろいIさんのこと

ホープ/希の丘


私がIさんと知り合ってから2年が経とうとしています。
初めてお会いしたのはデイケアでの送迎時、「今日からお世話になります」穏やかに挨拶してくださいました。
デイケアをご利用時のIさんはいつも控えめで、周りの利用者さん、スタッフにとても気遣いをされ、いつも「ごめんね」「ありがとう」とおっしゃっておられました。

送迎の時、出迎えてくださる娘様が少し遅れただけで「もう!ちゃんと出てこないと!」と、娘様を優しく叱ることがありました。
躾をきっちりされてこられたのだと思いました。
いつも周りを気にされ、ご自分のことは後回し、できることはご自分でされる。
とても誇り高くて自尊心がおありで、苦しみや悲しみを表に出さない、というとても素敵なIさんです。

Iさんが希の丘に入居されたのは昨年の10月でした。
それまではマンションにおひとり暮らしをされており、隣の区にお住いの娘様が毎日通いで食事のこと、デイサービスの準備、お見送り、お迎え、等生活全般をお手伝いされておられました。
昨年の夏、おひとりでいらっしゃる際に冷房の入れ方がわからなくなられたり、しんどいと近所の方にお声をかけられたりという日が何度か続き、娘様も一人暮らしを続けていくことの難しさを感じてこられたようで、デイケアとショートステイを併用され、おひとり暮らしを支援されておられました。
みどりの丘の前に希の丘が建ち、入所を検討されるようになられました。

ですが、Iさんは、娘様の支えがなければ生活できないということは分かっておられるのですが、認めたくないという思い“まだ自分で何でもできる”“一人で暮らしていける”というIさんの気持ちを知っておられ娘様はかなり悩まれておられたようです。
ですが、意を決して入居を決められました。
入所までに2か月程悩まれて10月の入所となられました。
入居されてからもIさんは、ご自身でトイレに行かれたり、杖をつきながらご自身のコップをキッチンまで運んでくださったり、できることはご自身で行ってくださっています。
こちらでの生活で一番の楽しみは絵手紙だそうで、毎月の絵手紙の日を楽しみにされ、積極的に参加されておられます。

ですが最近のIさんは少しお元気がありません。
娘様はしょっちゅう訪問され、お二人で散歩に出かけられたり、会話をされておられますが。
「もうみんなのところに行きたい」「早く迎えに来てほしい」と弱気に話されることが増えました。
以前なら、弱気な発言をされたときに涙がこぼれそうになるのを上を向いて我慢されておられたのですが、最近は食欲もあまりなくなってこられています。

そんなIさんを心配された娘様はIさんが行きたがっておられた熱海に旅行の計画を立てられました。
「そんなんやめといたほうがええ」「行かない」と話されていたIさんですが、昔、よく行かれていたそうで、Iさんがもう少しお元気なときに“熱海にいきたい”と話されており、娘様はお元気のないIさんを何とか元気づけたいという思いで、熱海行きを決行されました。
そして本日お二人で決行されました。

「お土産話を聞かせてくださいね」と私が言うと笑顔でうなずいてお元気に出発されました。
どうか楽しい旅となり、以前の笑顔の凛とされた表情が素敵なIさんで戻ってこられますように。

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