幻覚!?どうしよう!

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幻覚とは

幻覚とは実際にはないものが見えたり、音や言葉が聞こえたりすることです。
認知症では幻覚を訴える方が多くみられます。
アルツハイマーに続いて多く見られる認知症のレビー小体型認知症では、脳の神経細胞がたくさん集まった部分に異常なたんぱく質が蓄積され、初期段階でも幻覚を見ることがあります。
そのため認知症だとは自覚しない時期に、「知らない人がいた!」などと言われ、幻覚だと気付かずに慌てることも。
またパーキンソン病の薬の副作用でも幻覚が現れる場合があります。
その他にも、高齢者では脱水症状や便秘が原因で幻覚が現れることもめずらしいことではありません。

訪問で出会ったユニークな幻覚

Aさん 88歳
レビー小体型認知症が疑われていますが確定診断はされていません。
パーキンソン病の薬も飲まれているAさんは昼夜を問わずに幻覚がみられています。
ある日亡くなられたご主人が部屋にやってきて「風呂に入らせてもらおか」と言われたそうです。
「どうぞ」言うとそのままどこかに行ってしまわれたとのこと。
「せっかくだから入っていったらよかったのにね」と私が言うと、「あの人はあっちに行っても忙しいんでしょう」とAさんは笑っていました。
Aさんは赤ちゃんが見えることもよくあります。
ある日訪問するとさっそくお話ししてくださいました。
「昨日そこ(ベッドの足元)に赤ちゃんが寝とってね。ちょっと間して見たらもう爺さんになっちょった」これには浦島太郎もびっくりです!
また夜中に芸能人が来られることが時々あります。
歌手やお笑い芸人、お相撲さんなど私はいつも誰が来たのか楽しみにお話しをうかがうのですが、先日は郷ひろみさんが来たとのこと。
「暗くてよう見えんかったから誰ですか?と聞いたんよ」
「そしたらどう言ったの?」
「郷です!って立っちょった」
次は私が思わず笑ってしまいました。

Bさん 71歳
くも膜下出血後遺症があり認知症が発症したBさんは夜間の徘徊が見られます。
幸い家から外に出てしまうことはありませんが、夜間一睡もせずに家の中をうろうろすることがあります。
もともと警備の仕事をされていたBさんは「うちに泥棒が来るから見張ってるんだ!」と言われます。
訪問しても寝不足で眠そうにしているBさんに「お勤めごくろうさまでした」と声をかけます。
そしてBさんを介護されている奥様にも思わず「お疲れ様でした」。

Cさん 78歳
パーキンソン病で薬を飲まれているCさん。
幻覚ですが小さな子どもがよく遊びに来ます。
ケア中も「そこで遊んだら危ないよ」と子どもに話しかけています。
ある日Cさんはしきりに何かをつかもうと手を動かしていました。
「どうしたの?」
と聞くと
「飛んでる…」
「何が?」
「わき毛…」
「えっ!」
思わず本当に飛んでいないか目を凝らしてしましました。
想像もしていなかった幻覚に思わず笑いです。

幻覚が起こったときの対応

幻覚では実際には何もなくても、ご本人には本当に見えて聞こえています。
それを誰もいない、聞こえるはずがない、間違っていると否定したり、いい加減にしてなどと怒るとご本人は混乱し不安になったり、悲しくなります。
その結果幻覚がますますひどくなるやもしれません。
また同じように見えると嘘をつくこともしないほうがよいと言われています。
どうすればいいのか、その方その方で違いがありこれが一番とは言えませんが、まずは話しを聞いてあげて下さい。
そしてどんな幻覚か想像してみて下さい。
思わず笑ってしまう幻覚であればいいのですが、不安になったり辛くなる幻覚であれば、それを取り除こうとする行動(演技)をすることがおすすめです。
例えば虫がいると言われたら、虫をつかんで窓から外に逃がしてあげる。
怖い人がいると言われたら、あっちへ行け!と外に追い払うなど。
「もう大丈夫」と言ってあげるとご本人は安心しますし、自分だけがおかしいという疎外感を感じることがありません。
環境面ではカーテンの模様や壁のシミ、動物などに錯覚しやすい家具などは隠したほうがいい場合もあります。
また脱水など体調が悪いことも考えられますので、熱がないか、水分が不足していないか、便秘になっていないかなどをチェックしてみましょう。
おや?と思ったら、早めにかかりつけの医師や外来看護師、訪問看護師に相談することをおすすめします。