ある訪問看護師の休日オンコールの過ごし方

みどり訪問看護ステーションでは、希望される全ての利用者の方に24時間対応体制をとっています。
「24時間対応体制」とは、その名のとおり24時間電話がつながり、必要に応じては訪問もできるということです。
俗に「オンコール体制」とも言います。
病院の外来が閉まっている祝日や夜間に、馴染みの看護師に連絡がとれるということは、訪問看護を利用している方にとっては大きなメリットです。
しかしその裏には、24時間対応できる体制を整えた訪問看護師の存在があります。
24時間対応体制をとる訪問看護ステーションの大部分は、ステーションに常駐している当直ではなく、ステーションから転送した携帯電話を自宅に持ち帰っています。
いわゆる宅直ですね。
たまに夜の電話で「遅くまで働いてるんやね~」と感心されることがありますが…
もう自宅ですよ。(笑)
当番制で携帯を持ち回りますが、当ステーションではこの携帯を“コール携帯”と呼び、コール携帯を持つことを“オンコール”と称しています。
ちなみにコール携帯に着信があることを“泣く”と言い、オンコールに慣れないスタッフは、もっぱら当番の直前に「どうか泣きませんように!」と願掛けをしています。
ステーションの誰もがオンコールを担当しているのではなく、常勤をはじめ熟練したパートスタッフで回しています。
とはいえ、やはりオンコールは緊張するものです。
管理者の私が一番多く、ここ1年、祝日全てのオンコールを担当しています。
今回はそんな私の祝日を紹介したいと思います。

祝日の朝は目覚ましをかけません。
若い頃のように朝遅くまで眠っていたいのですが、なぜか平日とほぼ同じ時間に目が覚めます。
これはオンコールが原因?それとも年のせい?
朝起きて一番にすることは、まずコール携帯に着信がないかの確認。
コール携帯の着信音は大きく設定していますが、爆睡して気付いていなかったらどうしよう!という不安は、10年以上オンコールを経験してもぬぐえません。
着信がないことを確認したら、ほっと一息。
いつものように朝刊を読みながら、トーストを食べ、朝のコーヒーブレークです。
出勤する平日と変わらず、洗濯機を回し、顔を洗って身だしなみを整えます。
人様に見せても恥ずかしくない姿(ただの自己満足です)になったらスタンバイOK!

ちなみに私は家庭の中ではとりあえず主婦。
夫と息子たちは私の仕事に理解をしてくれていますが、やはり殿方、家事の協力はなかなか得られません。
コール携帯を連れて掃除、洗濯(祝日は3回転ぐらい必要)、アイロンがけ、炊事をこなします。
途中でコール携帯が鳴り、訪問となるとこの家事は中断されます。
かといって帰宅しても中断された家事が終わっているわけではなく、そこからまた再開となります。
いつ呼ばれてもいいように、時間のあるうちに家事をすませるようにしています。
掃除機をまともにかけられるのは祝日のみ。
平日は我が家の必須アイテム“コロコロ”でカバーです。
ヘルパーさんに週1回しか掃除をしてもらえないとぼやく声を聞くことがありますが、「我が家も同じですよ」と思わず心の中でつぶやいています。

祝日はどこにも出かけられないのかと思われたかもしれませんが、買い物や研修に行くことも多々あります。
少し遠くに行く場合は、スタッフに「もしかしたらSOSするかもしれない」と事前に頼むようにしています。
外出先でコール携帯が鳴り訪問が必要になったら、今いる場所と予想される到着時間を伝え、それまでにご本人やご家族でできる対応方法を伝えるようにすることで、概ね乗り切ることができています。
本当は月に1~2回の祝日当番で、その時は外出を控えるという調整ができれば理想的なのですが、マンパワー不足の事業所ではそういうわけにはいかないのが現状です。

ようやく1日の家事が終了。
コール携帯を脱衣場に置き、お風呂に入ります。
人によっては密封袋に入れて浴室内に置いているそうです。
夜10時には就寝を心がけています。
もちろんコール携帯は枕元で寝かせます。
夜更かしはしません。
眠れる時に眠っておく!これが健康を守る秘訣です。
夜間の訪問があっても、翌日の勤務に変わりはないのです。
中年のおばさんにとって睡眠不足はこたえます。
夜間訪問をした時は、翌日の勤務は免除または遅出勤できるステーションもありますが、そのように恵まれたステーションは多くありません。
見たいテレビ番組は全て録画。
忙しい時期は録画したビデオが山ほどたまり、家族からクレームを浴びる日々です。

こうやってオンコールの祝日はあっという間に過ぎていきます。
よく「大変なお仕事ですね」と言われます。
確かに大変なのかもしれません。
でも利用者や家族の方から「ありがとう」「助かった」という声を聞くと、“大変”は“やりがい”に変わります。
この“やりがい”が訪問看護師の原動力なのかもしれません。

今日のオンコールの祝日はどうなるかしら?
このスリルもまた楽しみにしたいと思います。