訪問看護をはじめてみませんか?~ブランクが長く迷っている看護師さんへ~

~訪問看護の印象は?~

訪問看護の印象を問うと、まず初めに…
*やりがいがあるけど大変そう
*興味はあるけど、私には難しそうで無理
*一人で判断できない
*何かあった時に相談できない
*経験が浅いので怖い…
という答えが返ってくるように思われます。私もそうでした。
今回は臨床の現場から離れ専業主婦をしていたブランクの長い私が、限られた時間の中でも訪問看護師として勤務している現状をお話ししようと思います。

~新人の頃~

私が学生の頃は、在宅看護論という教科はなく、訪問看護について教育も受けることはありませんでした。卒業後は当たり前のように医療機関へ就職をし、小児の専門病院ということもあり、仕事が後ろから追いかけてくる毎日でした。
ある時、小児がんで化学療法を受け、副作用で苦しんでいた中学3年生の男の子が、一年目の私に「何もしなくても傍に居てくれるだけでホッとするから」と言ったのです。自分が一番辛く苦しい時にそんな言葉をかけてくれたのです。きっと彼には、何もできない私が何かをしなければとオロオロしていたのが分かったのでしょう。その時、“あっこれも看護なんだ”と心が熱くなったのを覚えています。

~患者さんとじっくり関わりたいという思いと訪問看護との出会い~

その後、手術室勤務(配属)となりましたが、患者さんと時間をかけて向き合いたいという思いが明確となり、退職後一般病院へ転職しました。約7年間勤務、その後結婚を機に退職、育児も一段落した時、今の病院を紹介されました。ブランクも長く、知識や看護技術に不安はありましたが、そこは昔取った杵柄と度胸です。当時在宅室という部署(今のステーションになる部署)があり、研修で同行訪問をさせてもらえた時、病院とは違った自宅ならではの温かい雰囲気と患者さんの落ち着いた表情がありました。介護者となるご家族の笑顔、安心し信頼しきった言動に、驚きとこれが私の思っていたやりたい看護なのではと感じました。
しかし、パートであり勤務時間も短かった私は難しいだろうとあきらめかけていましたが、何とか異動が叶い訪問看護師として仕事をすることになりました。

~訪問看護師となって~

病院では治療が優先されますが、在宅では患者さん、ご家族が主体となり、看護師は多職種と連携して、自宅でその人らしく生活していくことのサポートをしていきます。
しかし、病棟にはあるものが無く、頼れるものは自分の持っているだけの知識、技術、判断力。お供は、訪看バッグと呼ばれる商売道具を入れたカバンです。
初めの頃は、先輩や所長との同行訪問から始まりますが、ブランクが長かった私は、不安も大きくこれから一人で訪問なんてできるだろうか?看護師とは言え他人が家に入ってくることを受け入れてもらえるのだろうか等、色んな思いがありました。
在宅では、モニタリングできる機器も限られている為、フィジカルアセスメントがとても重要となります。所長をはじめ先輩スタッフの「判断に困ったら連絡して」「ヘルプに行くから」など、様々な協力を支えに現場へ向かうことができました。もちろん、一人でアセスメントして判断が適切でない時もあります。そんな時は事務所へ戻ってミニカンファレンスです。自分は一人ではないんだという安心がこれでいいんだという自信にも繋がっていきました。

~スタッフの協力で~

訪問看護師を続けていく間に葛藤もありました。私は家族の要望もあり、パートという勤務形態をとらせてもらっていた為、24時間365日の対応ができず、患者さん全てを把握することが難しかったからです。そんな私でも、所長は訪問可能な患者さんを担当させてくれ、職場のスタッフのフォロー、ある時はご家族の協力を受けながら、勤務が短い時間でも、私が患者さんの為に出来る事があるならと訪問を続けています。

~“暮らしに笑顔を”をモットーに~

患者さんや介護をされるご家族が、私達訪問看護師が訪問する際に笑顔になる瞬間があります。その時こちらも笑顔がこぼれます。
まだまだこういった信頼関係を築くためには、自身のスキルアップ、コミュニケーション能力の向上、モチベーションの維持など、私には課題が山積みですが…。
恵まれた職場環境に感謝し、病棟で退院指導の時、“この方はこの後自宅に帰られてどんな生活を送るのだろうか”といつも疑問に思っていた場所で仕事ができている訪問看護を微力ながら続けたいと思っています。