心臓外科術前カンファレンスに参加しています

みどり病院では、毎週水曜日が心臓外科の手術日となっています。
また、月曜の午後に、その週に行われる手術に対してのカンファレンスを心臓外科の執刀医を中心に循環器内科、我々検査科、看護科(受け持ち病棟の看護師と手術室の看護師、人工心肺管理の臨床工学技士)、薬剤科、放射線科、リハビリ科が集まり色々な検討や再確認をします。
より安全迅速で患者さんの負担を出来る限り軽減できるようにと、念入りに話し合われています。

まずは、主治医から患者さんの病歴や現状の提示があります。
手術に至った経緯、服薬歴、レントゲン写真、CT画像にはじまり、心臓カテーテル検査データ、心電図、ラボデータなどを供覧します。
そして、ダイレクトに心臓の動きや大きさが分かる心エコー画像の供覧をします。
私達が日々検査をしている心臓超音波検査です!

供覧する心エコーの内容を具体的に上げてみましょう。

先ずは、病変部位について
•どこの部位に病変があるのか?
•主病変の他に副病変はないか?

どの程度、逆流が心臓に影響しているかについて
•心臓の腔(左室、左房、右室、右房)や血管(大動脈や肺動脈、下大静脈)それぞれの大きさはどうなっているか?
•左心機能はどうか?(左心室は心臓から全身に血液を送り出す為、よりダイレクトに心臓の様子を反映)
•右心機能はどうか?(右心室は身体から戻ってきた血液を心臓に取り入れ、それを左心室に送る重要な役割をもつ)
•肺高血圧がないか?
•合併症はないか?

手術の内容について
•どの弁、どの部位を対象とするか?
•術式、リングサイズ、人工腱索は?自己心膜は使うのか?

色々な要素を細かくチェックします。

心エコー所見を提示するだけでなく病変の詳細について執刀医から質問を受け、具体的に自分達が観察し評価した内容を更に詳しく伝えます。

先日のカンファレンスの症例では…

僧帽弁位の弁膜症の症例で、後尖の逸脱がありました。
P1の病変に加え、交連部のAC部位と前尖A1の病変も疑われました。
AC、A1の同定が難しく、色々な角度から観察して得られた所見や、血液の流れから間接的に推測される内容などを提示しました。

*経胸壁心エコーでは、術中とは反対で左室側から見た画像となり、短軸画像では、向かって右から、前尖はA1、A2、A3 右端が前交連部(AC)、後尖はP1、P2、P3 左端が後交連部(PC)と分類されます。

サイズを測定する断面を側壁側に傾け
後尖(P1側)の観察をし、逸脱を認めました。
明らかな腱索の断裂は確認されませんが、ACの評価が困難でした。

短軸断面でP1の逸脱は同定できますが、ACやA1の病変も隠れているかもしれないため、カラードプラを評価の助けとしました・・・・・・・・・・

ちなみに・・・

*こちらは別の症例です・・・・
手術でPC,P3の逸脱がありました

執刀医から更に細かく厳しく問われます。
今回は…
なぜ、その病変を疑ったのか?
更には、もう少し違うアプローチで観察出来なかったのか?
左室長軸像(心臓を縦切りにして得られた画像)で、評価する時に左右にじっくりと観察部位を動かして(tilting)みたのか?
左室短軸像(心臓を輪切りにして得られた画像)ではP1とA1、ACはどう見え、どう分離して評価したのか…
血液の流れを示すカラー画像では病変の同定には限界があり、出来るだけ2D画像で病変の描写をするように指導を受けました。
何千例という実際の僧帽弁を手掛けた心臓外科医に指導してもらえるのは、身が引き締まり、更にモチベーションが上がります。

対象の病変だけでなく左室の大きさ、左房の大きさ、右心室の機能や三尖弁に対して追加手術が必要か等も考えを問われます。
術後の予測も話し合われます。
術前は高度な僧帽弁逆流があるため、左房へ戻った血液を何とか全身へ送ろうと左室は過収縮傾向を示していますが、手術をして逆流がなくなったら、どうなるのか?
左心室の大きさの予測値や、左心室の収縮機能を示す左室駆出率(LVEF)はどの程度になるか?も問われます。

僧帽弁は前尖、後尖に分けられ、例えば後尖の同じ部位に分類されても、その部位の中で細かく違いがあります。
2つ以上の弁病変を抱えた連合弁膜症となっている場合、年齢や性別、基礎疾患に寄っても、術後の回復に大なり小なり差が生まれます。
術中の使用器材や輸血の有無、種類(赤血球製剤、凍結血漿製剤、血小板製剤)も再度確認されます。
前回までの患者さんの術後の経過も細かく報告され、週一回のカンファレンスに出席する事で、評価の仕方だけでなく、周術期のあらゆる管理についても学べます。

みどり病院弁膜症センターが出来て6年が経ちました。
検査科もハートチームの一員としてカンファレンスに参加し、心臓血管外科や循環器内科の先生達と術式についての議論まで交わせる事は心エコーをするソノグラファーとして非常に喜ばしいことです。
もっともっと、腕を磨き、知識を蓄え、みどり病院検査科の質の向上に努めていきたいと思っています。
そして、我々の検査が、手術される患者さんの一日も早い回復に繋がる事を願っています。