「頭が痛くて仕事に集中できない・・・とりあえず痛み止めを飲んでやりすごそう。」そんな経験はありませんか?みどり病院の薬剤師である私自身、天気の悪い日や寝不足だったりするとよく頭痛が起こります。今回は頭痛のなかでも、多くの人が悩まされている片頭痛を中心に、原因や対処法、治療薬についてまとめてみました。
頭痛にはどんなものがある? 〜普通の頭痛と命に関わる頭痛〜
頭痛は大きく一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます。一次性頭痛には片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などがあり、いわゆる慢性頭痛、「頭痛もち」の頭痛はこちらを指します。二次性頭痛はくも膜下出血や髄膜炎などの原因疾患のあるもので、見逃されると命にかかわる危険な病気が原因のこともあります。今まで経験したことのない急な激しい痛みや、悪心・嘔吐・意識消失・めまい・発熱を伴うような頭痛の場合は無理せず早めに受診することが重要です。
片頭痛とは 〜女性に多く繰り返す頭痛〜
頭痛発作を繰り返すもので、発作は4~72時間持続します。「ズキズキする痛み」あるいは「脈打つような激しい痛み」が月に1~2回程度から、多いときには週に1~2回続きます。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。頭の片側のこめかみから目にかけてのあたりが痛むことが多いですが、頭の両側や後頭部が痛むケースもみられます。日本での有病率は8.4%と高く、女性に多いのも特徴です。
片頭痛の原因は? 〜血管拡張と炎症〜
実は片頭痛の発生機序は不明な点が多いのですが、脳内の神経伝達物質のひとつであるセロトニンとの関連性が示されていて、脳血管や三叉神経終末に分布するセロトニン受容体(5‐HT1B/1D受容体)が深く関与していることが知られています。片頭痛の病態仮説としては1984年にモスコビッツが提唱した「三叉神経血管説」という説が有力です。何らかの原因で頭の中の血管に分布する神経終末が刺激され、血管作動性物質が放出され、血管が拡張し、炎症が引き起こされることで頭痛が起きるという説です。
*片頭痛の誘発因子*
・精神的因子:ストレス、精神的緊張、疲れ、睡眠
・内因性因子:月経周期
・環境因子:天候の変化、温度差、頻回の旅行
・食事性因子:アルコール、チョコレート、チーズなど
日常生活のポイント 〜ストレス解消・規則正しい生活・強い日差し・アルコール〜
・日頃からストレスをため込まないようにする。
・空腹時や寝不足・睡眠のとり過ぎによっても起こりやすくなるため、規則正しい生活を心がける。
・日差しの強いところではサングラスをかけ、混雑時を避けて外出する。外出時は光や音、暑さ、換気の悪さなどの刺激をできるだけ避けるようにする。
・発作が起こってしまった場合は、静かな部屋で横になり安静にする。可能ならそのまま少し睡眠をとる。できないときは座って安静にする。
・血管拡張作用のあるアルコールは片頭痛を誘発するため避けるようにする。人によりチョコレートやチーズなど、チラミンを含む食品が誘発因子となる可能性があり、思い当たるようであれば注意する。
片頭痛の治療薬 〜急性期治療薬と予防薬〜
発作時に使用する急性期治療薬と予防薬があり、前者は頭痛発作を頓挫させる目的で、後者は頭痛発作の頻度や程度を減少させ、急性期治療薬の効果を高める目的で使用します。
・急性期治療薬
①トリプタン系薬剤(イミグラン®、ゾーミック®、レルパックス®、マクサルト®、アマージ®)
セロトニン受容体の5‐HT1B受容体に作用して拡張した血管を収縮させ、5‐HT1D受容体に作用して血管作動性物質の放出を抑制することで片頭痛発作を鎮めます。頭痛がひどくなってから服用すると十分な効果が得られないため、発作時は我慢せず早期に服用することが重要です。
②エルゴタミン製剤(クリアミン®)
セロトニン受容体に結合することでトリプタン系薬剤と同様の作用で片頭痛発作を鎮めます。副作用が強く、トリプタン系薬剤が登場し治療の中心として使われるようになったこともあり、現在はクリアミン®以外は販売中止となっています。
③鎮痛薬
軽度~中等度の片頭痛に有効で、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使われます。
④制吐薬(ナウゼリン®、プリンペラン®など)
吐き気を伴う場合に使用します。
・予防薬
片頭痛発作が少なくとも月2回以上起こり、トリプタン製剤やその他の発作治療薬の効果が十分でない場合に予防薬の適応があります。以下の薬剤の中から、併存する疾患や身体的状況を考えて薬剤を選択します。予防薬の効果はすぐには現れないため、効果の判定は2~3カ月を目途に行い、十分量を2~3カ月投与しても効果が得られないときは他剤へ変更します。また、発作回数が減少するなどの効果が現れたときは、3~6カ月を目途に一旦中止して経過をみます。
①抗てんかん薬(デパケン®)
片頭痛予防薬の第一選択薬として用いられます。用量は400~800㎎/日です。
②抗うつ薬(トリプタノール®)
適応外使用が認められており、用量は低用量(10~20㎎/日)から開始し、効果を確認しながら漸増し、10~60㎎/日が推奨されています。
③β遮断薬(インデラル®)
片頭痛予防薬の第一選択薬として用いられます。用量は20~30㎎/日から開始し、効果不十分な場合は60㎎/日まで漸増します。トリプタン系薬剤のマクサルト®の作用を増強するため併用禁忌です。
④Ca拮抗薬(ミグシス®)
脳血管に対して選択的な血管収縮作用を示します。用量は10~20㎎/日です。妊婦に禁忌のため妊娠の可能性のある女性には使用できません。Ca拮抗薬としては他にワソラン®の適応外使用が認められています。
最後に
一口に片頭痛の薬といってもこれだけたくさんの種類があります。トリプタン系薬剤や鎮痛薬は使用しすぎるとかえって頭痛がひどくなることがあります(薬物乱用頭痛)。自分に合った薬を正しいタイミングで服用することが重要ですので、薬を飲んでもあまり効果がないという方は、医師や薬剤師に相談していただきたいと思います。