突然ですが、皆さん骨密度検査を受けたことがありますか?
当院骨密度検査では通常骨折の起こりやすい腰椎、大腿骨近位の2か所の計測を行っています。ですが、実はこちらの機械で手関節(橈骨遠位端)の検査も行うことができます。
なぜ手の骨密度も計測できるのか・・・そうです骨折が起きやすいからです。皆さん不意につまずき転倒してしまった時、まずは手をついて身体を守りますよね。その時、手首に強い衝撃でかかり骨折(特にご高齢の方)が起きやすいのです。今回は、手首(橈骨遠位端)骨折についてお話します。
○手首について
手首(手関節)には、手と肘をつなぐ前腕骨が2本あり、親指側に橈骨(とうこつ)という少し太めの骨があり、小指側に尺骨(しゃっこつ)という細い骨があります。それに加えて8個の手根骨を合わせて10個の骨があり、骨折が起きやすいとされる場所は橈骨手根関節 (下の写真緑の〇)辺りになります。
高齢、骨粗鬆症の方はほんの少しの力で手をついても骨折する可能性があります。そして、若年の方でもスポーツや高所からの転落、事故による高エネルギー外傷により骨折をする可能性があります。
○骨折について
今回骨折が起こりやすいとされる橈骨遠位端骨折ですが、骨折の仕方によって様々な呼び方があり、今回は代表的な2つの骨折についてご紹介します。
転んでしまい、手をつく際に多くの方は手のひらを下についてしまいますが、突然の出来事で手も反射的にでるため、中には手の甲を下に突いてしまう方もいます。この時に骨のズレ方が変わりそれぞれ呼び方も変わってきます。
手のひらを下にしてついた場合、手首から手の甲にかけての骨が反り返った方向にずれて折れてしまう骨折、これを「コーレス骨折」と言い、橈骨遠位端骨折の中で一番多い骨折になります。
一方、転倒した際に手の甲を地面に付いてしまうと、手首から手の甲にかけての骨が手首を内側に曲げた方向にずれて折れてしまう骨折、これを「スミス骨折」と言います。あまり、手の甲をついてしまうことはないように思いますが、バイクや自転車の運転中ハンドルを持ったまま転んでしまった時によく起こります。
詳しくは以下をご参照ください。
日本整形外科学会 橈骨遠位端骨折 より参照
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/distal_radius_fracture.html
Pic1,コーレス骨折になりやすい手のつき方
Pic2,スミス骨折になりやすい手のつき方
【画像チェック】
骨折の確認は、一般撮影(レントゲン)やCTの検査で行います。
①まず、レントゲン画像の正面画像で骨折があるか、どれだけズレがあるか診断します。
②次に側面像や斜位像で、正面では分かりづらい骨折や、どちらにズレているか(スミス・コーレス骨折)の診断を行います。
③骨折が分かりづらい場合や精密検査が必要な場合は追加でCTの検査を行い、レントゲンで分かりにくいズレや細かな骨折やヒビを探します。CTの3D画像があれば、骨折した場所が見やすくなります。
Pic3,4 手関節一般撮影(レントゲン) 1枚目)正面 2枚目)側面
Pic5, 一般撮影(正面)
pic6,CT 3D画像
転倒した時の力が強ければ強いほど骨は大きく折れて、ズレも大きくなります。このズレの大きさによって治療方法も変わってきます。
○治療方法 ※放射線技師の執筆記事のため、詳しくはお近くの整形外科の医師にご相談ください
・骨折のズレがほとんどない場合
整復せずにそのまま「ギブス固定」が行われます。利き手の場合日常生活が少し不自由になりますが、入院や手術等の治療は必要ありません。
・少しズレがある場合
X線テレビ(透視)室で、医師が画像を見ながらズレている骨を正常の位置まで戻します(徒手整復)。その後ギブス固定などが行われます。
・徒手整復では困難な骨折
手術が必要で、直接骨を整復し、ピンニング(Kワイヤー)やプレート、髄内釘によって折れた骨を接合します。
Pic7,8 手関節プレート手術術後写真 1枚目)正面 2枚目)側面
○さいごに
今回まで骨折シリーズを記載しましたが、どこの部位でも骨折すると大きな痛みを伴うため、痛みのコントロールをする必要があります。日常生活においても様々な支障が出たり、高齢の方は後々の生活様式も変わる恐れがあるため、毎回毎回嫌というほどお伝えしていますが、まずは転倒しないよう気をつけること、骨折を未然に防ぐことを心がけてください。
当院では、骨粗鬆症の治療や検査、リハビリ等行っているため、もし何か気になることがありましたらスタッフにお声掛けください。また、「X線」「被ばく」「画像(CT、MRI)」等気になることがあれば放射線科担当スタッフまでお尋ねください。
最後までご覧頂きありがとうございました。