我慢しない、遠慮しない、介護サービスの使い方 ~はじめの一歩は相談から~

こんにちは!指定居宅介護支援事業所ケアクラブでケアマネジャーをしている0です。
ケアクラブが再開し3年目の夏を迎えました。
2年前のブログ(https://midori-hp.or.jp/visitingnurse-midori-blog/web20_7_07/ )では、要介護認定申請後~サービス利用までの流れを説明させて頂きましたが、今回は介護保険でのサービス利用をする事で生活がどう変わっていくのかまた、どのくらい費用がかかるのかを実際に私が担当した利用者様とのエピソードをもとにお話しをさせて頂きます。

~はじまり~
「主人がご飯を食べられなくなっているが、歩く事ができないので往診に来てもらえないか?」
という相談の電話がみどり病院へかかってきたのが初めでした。
みどり病院より訪問診療調整をしたうえで、その時に介護サービス利用の必要性も考えられる事からケアクラブへ相談が入り、訪問診療時に一緒に行く事になりました。

~初めての訪問~
集合住宅で奥様と2人暮らし。訪問時、ご本人は6畳の和室に布団を敷いて横になっている状態でした。
両足の膝の関節が固まってしまい、拘縮(関節が真っ直ぐに伸びずに曲がった状態で固まっている状態のこと)し立つ事もできない状況でした。話を聞くと、以前は歩けて1人で病院受診もしていたが、徐々に歩けなくなり1年以上は病院にかかっていない。部屋の中は這って移動し、排泄はオムツで奥様が介助をしている状況でした。食事も牛乳180ccを1日2本程度で、お風呂も長い間入れていないとの事で往診の先生と相談をし、まずは食事が食べられなくなった原因は何かを精査する目的で入院をする方向で話がまとまりました。
入院の準備をしていく中で、奥様には退院した後の生活について、現状のままでは奥様自身に負担が大きく掛り疲れてしまう可能性があるので介護保険の申請、退院後のサービス利用の必要性を話し、承諾をして頂いたうえで退院後の生活に向けての準備を開始していく事になりました。

~入院当日~
介護タクシーを調整し、病院まで移動が出来るように調整はしましたが、玄関スペースに限りがあり、車椅子が入れませんでした。足の拘縮があり、歩けないご本人をどうやって玄関先まで移動をしようかと、介護タクシードライバー、訪問看護師、ケアマネジャーみんなで考えた結果、ハンモックを利用して人力で玄関先まで移動をしリクライニング車椅子に乗ってもらう事になりました。無事に家から出る事ができ、病院へ到着。

~入院中~
ご本人の入院中にも何度か奥様に連絡し自宅訪問をさせてもらい、生活環境を整える事を1番に取り組みました。奥様も小柄な体格ではありましたが、玄関先の下駄箱を片付け車椅子が入れるスペースを作ったり、ご本人が過ごす部屋の掃除を1人でされ、すぐにでもベッドが搬入できる環境を作ってくれていました。

 ~退院後のサービスについて~
1カ月程度の入院治療で病状安定し、いよいよ退院となります。
今回の検査入院にて【レビー小体型認知症】の疑いの診断を受けられました。排尿困難からバルーンカテーテル留置をした状態での退院となっています。退院時には要介護認定の結果がまだでしたが、退院後に「要介護5」の通知がありました。

💡レビー小体型認知症とは
物忘れや判断力の低下といった認知機能障害は初期には目立ちません。そのかわり、現実にはないものが見える幻視や、手足が震えたり筋肉が固くなるといったパーキンソン症状が現れます。歩幅が小刻みになり、転びやすくなったり、睡眠時の異常行動等の特徴があります。

①住環境整備:福祉用具レンタル
・レンタル用具:介護ベッド、ベッド柵、床ずれ予防用具(エアーマット)、車椅子
②入浴:2回/週の訪問入浴
・健康チェック、入浴介助、皮膚状態の確認、排尿量の確認など
③病状管理:1回/週の訪問看護
・健康チェック、バルーンカテーテルの確認、オムツ交換、皮膚状態の確認、主治医との連携、
排尿量の確認、家族への相談、助言等 が病状管理の中に入っています。
④奥様の介護負担軽減:1回/日のヘルパー訪問
・オムツ交換、食事介助、排尿量の確認

退院時の介護サービスのスケジュール(図表↑参照)です。
このカレンダーを利用者様の部屋に掲示して頂き、各サービス事業所が訪問時にスケジュール確認と排尿量の確認が出来る様にしました。

~費用~
前回のお話で、「介護保険でのサービスは点数で計算をしていきます」とお話させて頂きました。それに沿って今回の介護サービスのスケジュールでは、どの程度の費用負担が利用者様にかかるのか?

要介護5 35,830単位/1カ月  ※利用者様が1割負担の場合
①福祉用具レンタル:2,325単位⇒2,325単位×0×0.1=2,325円
②訪問入浴    :8,750単位⇒8,750単位×84×0.1=9,485円
③訪問看護    :2,546単位⇒2,546単位×84×0.1=2,759円
④ヘルパー:8,876単位⇒8,876単位×84×0.1=9,621円

合計24,190円が1か月の利用者様の負担して頂く費用となります。
※H25年頃のサービス利用時のものとなり、現在は介護保険制度改正にて要介護度の限度額や各サービスの単位数が変更となっています。あくまでもご参考までの単位数、金額となります。

~介護サービス利用開始から1年後~

1年が経過した利用者様の介護サービススケジュールです。

退院当初に比べ食事量も増え、この1年間で訪問リハビリも利用しながら、関節の運動や車椅子に座れるリハビリを実施した結果、車椅子に座れる状態となり、デイサービス利用が出来るようになりました。デイサービスを利用する事で奥様の介護休養の時間を作る事ができ奥様自身も安心してゆっくりと買物外出ができる様になり、ご本人自身の外出の機会を作る事で寝たきり防止に繋がりました。

 

~費用~
①福祉用具レンタル:2,950単位⇒2,950単位×0×0.1=2,950円
②訪問入浴    :5,036単位⇒5,036単位×10.84×0.1=5,459円
③訪問看護    :8,172単位⇒8,172単位×10.84×0.1=8,858円
④ヘルパー    :5,335単位⇒5,335単位×10.84×0.1=5,783円
⑤デイサービス  :9,056単位⇒9,056単位×10.54×0.1=,9545円

合計32,595円(+デイサービスの食事代)が1か月利用者様の負担して頂く費用になります。
※H25年頃のサービス利用時のものとなり、現在は介護保険制度改正にて要介護度の限度額や各サービスの単位数が変更となっています。あくまでもご参考までの単位数、金額となります。

~最期まで家での生活ができました~
介護サービス利用から2年が過ぎた頃に、Tさんはご自宅で永眠されました。
Tさんのご自宅に初めて訪問した際は、奥様も介護サービス利用に消極的な所があったので、介護保険利用の受け入れをしてもらえるのかどうか不安な部分もありましたが、Tさんや奥様との関わる時間が増え少しずつ奥様が打ち解けてくれ、昔の話やTさんとのエピソードを話してくれる頃には、私の中の不安も自然となくなっていました。レビー小体型認知症の疑いもあり、時々介護に抵抗し大声をあげてしまうTさんでしたが、時に奥様の事を「〇〇ちゃん」と呼んでいるのを聞くと、自然に笑みがこぼれてしまいます。仕事で海外にも行かれていたTさん、帰り際はいつもスペイン語で「グラシアス!(ありがとう)」と挨拶をしてくれていました。ケア内容としてはかなり重度な対応となっていましたが、主治医の先生や訪問看護、ヘルパー、デイサービス、訪問入浴、福祉用具レンタルとたくさんの人が関わりを持ち、1人の利用者様に対して多職種がそれぞれの視点から対応方法についての意見や提案がたくさん出てきた事や、みんながTさんのケアの時にはいつも笑いがあり、楽しい時間を過ごせていた事が印象に残っています。

~最後に~
家族の中に介護を必要とする人が出た時にどうしたら良いのか?分からずに時間だけが過ぎてしまうケースもあります。また、家族は助けを必要としているが、本人が必要ないと言われ、家族が相談に来られない事もあるかと思います。初めの1歩は少し戸惑いもあるかもしれませんが、少しずつでも進みだす事で良い方向に進む事もあります。介護サービス利用をするにはそれなりに利用者様にも費用負担がでてきます。今回の記事を少しでも参考にして頂けたらと思います。