日差しの強い日が続いています。紫外線の量が多くなるこの季節に注意していただきたいのが光線過敏症です。今回は薬剤性の光線過敏症についてお話ししたいと思います。
光線過敏症とは? ~日光に過敏に反応して皮膚に炎症が起こります~
日光アレルギーとも呼ばれ、日光によって引き起こされる免疫系の反応です。日光にさらされた部分の皮膚に痒みを伴う発疹や発赤、炎症を生じます。原因は遺伝や代謝異常など内因性の場合と、薬剤や化粧品など外因性の場合がありますが、一番多いのが薬剤性の光線過敏症です。
薬剤性光線過敏症には、薬を内服または注射した後に日光に当たった部位に発疹等が現れる光線過敏型薬疹と、貼り薬や塗り薬を使用した部位に日光が当たって免疫反応を起こす光接触皮膚炎があります。
肩こりや腰痛によく使われているケトプロフェン外用剤(当院ではモーラス®テープを採用しています)による光線過敏症はよく耳にするのでご存じの方も多いかもしれません。モーラス®テープの袋には下の写真のような注意書きが書かれています。皮膚からの剥離後3~4週間後に発現する症例も報告されているため、剥離後少なくとも4週間は紫外線にあたらないよう注意が必要です。
ケトプロフェンの他にもフルルビプロフェン、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクなどの消炎鎮痛薬でも光線過敏症が起こることがあります。湿布などは気軽に家族や友人に譲り渡してしまいがちですが、それが原因で光線過敏症を引き起こすこともあるので控えたほうが良いでしょう。
薬剤性光線過敏症の原因薬剤
多数ありますが一部を下表に示しました。
*1970年代ヒドロクロロチアジドがよく使用されていましたが、光線過敏症が多発したため新薬が開発されるとあまり使われなくなりました。ところがその後、ヒドロクロロチアジドを配合した降圧剤が開発され、再び光線過敏症が増加することとなってしまいました。
治療方法 ~治療の基本は原因薬剤の中止、ステロイドの外用、抗ヒスタミン薬の内服、遮光です~
まず原因薬剤を中止、または代替薬へ変更します。ほとんどの薬剤性光線過敏症の原因となる光の波長は紫外線のうちUVA(320~400nm)のため、遮光はUVAに対して行います。UVAは窓ガラス越しの光にも含まれるため、室内にいる時も注意が必要です。治療にはステロイドの外用剤を使用します。痒みが強い場合は抗ヒスタミン薬の内服を行うこともあります。
予防方法 ~衣類やサンスクリーン剤(日焼け止め)で紫外線対策を~
日中の外出の頻度を減らし、長袖の衣類や帽子、日傘、サングラスなどを使用し遮光します。またサンスクリーン剤の使用も推奨されます。サンスクリーン剤は適量をむらなく、日光曝露する15分以上前に塗布し、2~3時間おきに塗り直しするとより効果的です。
サンスクリーン剤(日焼け止め)の選び方
太陽光に含まれる紫外線の中で地表に到達するのは280〜320nmのUVBと320~400nmのUVAです。UVBに対する防御効果指標にSPFが、UVAに対する防御効果指標にPAが用いられます。光線過敏症の多くはUVAで誘発されるためPAの指標の高いもの(+の数が多いもの)を選択してください。また、紫外線吸収剤のオキシベンゾンやオクトクリレンはケトプロフェンと交差感受性を有するため、これらを含まない製品を選ぶと安心です。「紫外線吸収剤フリー」や「ノンケミカル」と記載されているものはこれらの紫外線吸収剤を含みません。
おわりに
薬剤性光線過敏症は原因薬剤の交差性が認めることがあり、既往がある人には同系統の薬でも発症リスクがあります。未然に防ぐために、特に光線過敏症の既往がある患者さんには、ハイリスク薬の情報提供と予防方法について指導することが重要だと感じています。また、薬剤性光線過敏症は比較的高齢者に多くみられます。このブログでも何度か触れていますが、高齢者では使用している薬剤が多く、ポリファーマシーが問題視されています。使用薬剤の増加は他の有害事象と同様に、薬剤性光線過敏症のリスクも高めることになってしまうため、日頃から使用薬剤の整理・見直しをすることの大切さを再認識しました。