「NEAT」って知っていますか?
NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis:ニート)とは、日本語で非運動性活動熱産生と呼ばれるもので、運動以外の活動での消費エネルギーのことを言います。働かない人、怠け者を意味する”NEET”ではありません。
運動以外の身体活動と言われてもピンと来ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。まずは、運動と運動以外の活動が一日の中でどのくらい行われているのかを考えてみましょう。一日の総エネルギー消費量の内訳を次のグラフで示します(図1)。
(図1 1日の総エネルギー消費量の内訳)
グラフの項目を一つずつ解説していきます。基礎代謝量とは体温維持・心臓や呼吸など生命維持のための最低限必要とされるエネルギーのことをいい、全体の約60%を占めます。食事誘発性熱産生は食事をした後、栄養素が分解される際に一部が体熱となって消費されるエネルギーのことで、全体の約10%がこれに当たります。残りの30%は身体活動による消費エネルギーが占めるのですが、身体活動は運動と家事や通勤、姿勢を保持することなどの日常生活活動の大きく2つに分けることが出来ます。
この家事などの日常生活活動、つまり運動以外の活動による消費エネルギーのことをNEATと呼んでいます。グラフを見ると、運動よりもNEATの方が占める割合が大きいことが分かります。運動時間を増やすことももちろん大切ですが、NEATを増やしていくことを意識するだけでも、より高いエネルギー消費が図れると言われています。
生活に「NEAT」の考え方を取り入れよう!
WHO「身体活動および座位行動に関するガイドライン日本語版」には、“座位行動の多さは、総死亡率・心血管疾患死亡率・がん死亡率・心血管疾患・がん、および2型糖尿病の発生率などの健康アウトカムが不良であることと関連している”と書かれています。座り過ぎは寿命を縮めてしまうことになりかねません。NEATを増やすことは健康のための第一歩かも知れません。
また、NEATは運動のように生活に新たに追加する活動ではなく、今、生活で行っている活動にちょっとした工夫を取り入れるだけで増やすことができます。そのため、NEATは運動が苦手な方や身体に障害をお持ちの方にとって、身体活動による消費エネルギー量を上げるために取り入れやすい手段と言えます。
では、NEATを増やすための具体的な方法を3つご紹介します。
- 安静時間を減らす
- 新しい動作を増やす
- 活動の中にちょっとした工夫を取り入れる
それぞれ詳しく説明していきます。
1.安静時間を減らす
「座っている時間」や「寝転んでいる時間」を減らしていきましょう!立っているだけでも、エネルギー消費を上げることができます。横になって行っていた活動は、まず座って行うように変えてみましょう。座ってしがちな家事動作は立って行ってみましょう。立って行うことが難しい場合は、座ったままでも構いませんので、姿勢よく活動することを意識しましょう。
例えば・・・
- テレビは横になって見るのではなく、座って見る
- 立って洗濯物を畳む、アイロンがけをする
- 立って歯磨きをする、髭を剃る
2.新しい動作を増やす
普段しない家事や生活動作をすることも、NEATの時間を増やすことになります。できるだけこまめに動くことを意識して、高いエネルギー消費を目指していきましょう。普段、家事にあまり参加されない方も、この機会に家事に参加してみてはいかがでしょうか?
例えば・・・
- ペットの散歩に行く
- ガーデニングをする
- 掃除をする
3.活動の中にちょっとした工夫を取り入れる
普段の生活動作に“ちょっとした工夫”を取り入れることでもNEATを増やすことが出来ます。
例えば・・・
- ながら運動(つま先立ちや足踏み、片脚立ちなど)を取り入れる
例:歯磨きをしながらつま先立ちをする、料理をしながら足踏みをする、など - 常に姿勢を正すことを意識する
例:食事をする時、新聞を読む時、スマホを見る時、など - テレビCMの時間、パソコン作業の休憩時間になったら伸びや屈伸をする
- 自宅の一駅前から乗るor降りて歩く
- エレベーターやエスカレーターの代わりに、階段を使う
- 出かけた先で遠回りをする(駐車場は遠い所に停めるなど)
「NEAT」チェック、していきましょう!
いかがでしたでしょうか。NEATは少し意識を変えるだけで増やすことが出来ます。思っていたよりも簡単に取り入れられそうではないですか?
昨年度、当院リハビリテーション科の新たな取り組みとして、NEATを増やすための資料「NEATチェックシート」を作成しました。今行っているNEATをチェックしていただき、個人個人に合わせた今後生活に取り入れていただきたいNEATや、ちょっとした工夫をお伝えする資料です。ご興味がある方はリハビリテーション室までお越しください。
5月8日より、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に引き下げられ、患者さんからは、出かけることが増えた、ちょっと遠くまで出かけてみたいと思う、という声が聞こえてきました。手洗い・うがいなどの感染対策を続けながら、外での活動を増やすと同時に、普段の生活にNEATを意識した新しい身体活動を取り入れてみてはいかがでしょうか。
みどり病院リハビリテーション科は、あなたの“自分でできる”を応援します。