暖かくなってきましたね。
この時期は多くの方が卒業し、そして新たに入学・就職する方も多いと思います。そしてこの時期に健診を受けられる方も多いと思います。
私たち放射線技師が1番携わることが多いのが一般撮影(レントゲン)で、その中でも『胸部撮影』を1番多く撮影しています。胸部撮影は病気やケガが起こった時だけでなく、元気な方でも健診で撮影していると思います。
当院など一般的な病院では、何か疑いがあれば胸部の写真に加えCT検査も追加で行うことができるため、病気やケガの発見率はあがります。
そして、今回は、胸部のレントゲンやCTで診断に至る『気胸』の画像をご紹介したいと思います。
○気胸とは
気胸とは、肺に穴があき、そこから肺の外側の胸腔内に空気が漏れて肺がしぼんだ状態のことを言います。下の画像で水色の部分が肺ですが、右肺部分(画像の左側)が反対側に比べて小さくなっています。(→)
Img.肺の3D画像(CT検査WS再構成画像)
症状は、突然胸が痛くなったり、呼吸困難、ひどい咳が続いたりします。気胸の程度が大きいとショック状態になることもあります。
原因は、交通事故や高い所からの転落などで肋骨が肺に刺さって穴が開く『外傷性気胸』と、もともと間質性肺炎や肺気腫などの疾患を患っていて肺の状態が悪く穴が開きやすい人におこる『自然気胸』の2つに分けられます。
自然気胸は、もともと肺疾患を患っている人以外でも健康な若い男性(15~30歳くらい)で身長が高く、痩せた人は肺尖部(肺の1番上)に穴があきやすく気胸になる可能性も普通の人に比べ高いです。女性では、まれですが生理の際に発症する月経随伴性気胸といった気胸もあります。
〇気胸の画像
私たち放射線技師や医師・看護師など普段から胸部レントゲンを見慣れている人ならば写真を見てすぐ気胸がわかると思いますが、あまり見慣れてない方は見つけるのが難しいです。また、一部分の僅かな箇所のみ気胸になっていたりすると、レントゲン写真では見逃してしまうこともあります。
ここからは写真についてご説明します。
まず、胸部レントゲンで気胸を探すときは「肺紋理」と呼ばれる肺動脈・肺静脈の血管の走行に注目します。
Img.正常な人の胸部レントゲン写真
胸部レントゲンの一部を拡大してみると、緑の点線部分が肋骨で、肋骨の間と重なって線が多数見られるのが肺紋理になります(青矢印部分)。正常な人であれば、この線は肺の隅々まで張り巡らされていますが、気胸になり肺がしぼんでしまうと、その部分にこの線が見えなくなります。
では、気胸の方のレントゲン写真をお見せします。どこに気胸があるか分かりますか?
Img.気胸患者の胸部レントゲン(来院時)
分かりましたか?
では、次にこの患者さんのCT画像をお見せします。
Img.気胸患者の胸部CT:肺野条件(来院時)
CT画像を見ると多くの方はもうお分かりですよね。左肺(画像では右側)の一部が小さくなっています。この患者さんは18歳の男性で、もともと疾患もなく健康な方でした。
この後、胸腔ドレナージ術という胸の横から大きめの管を入れて空気を体の外へ排出する治療を行い、定期的に胸部のレントゲンを撮りました。
まずは翌日の胸部レントゲンです。
Img.気胸患者翌日の胸部レントゲン
少し肺が膨らんで、先ほどのレントゲンより肺紋理が増えました。しかし、緑色の矢印の部分に気胸が残っています。
そして、4日後のレントゲン写真では、
Img.気胸患者4日後の胸部レントゲン
肺がほぼ元通りに膨らんでいます。そしてこの後ドレーンを抜きました。
軽度の場合は、何もせず経過観察の場合もありますが、症状が大きくなったら今回のようにドレナージ術をする場合もあります。
被ばくが少なく、簡単にすぐ撮影できる胸部レントゲン撮影でも、気胸のようにわかりやすく診断できる肺の病気もあります。もしかかりつけの先生と一緒にレントゲン写真を見る機会があったら、ご自分の肺紋理を確認してみるのも面白いかもしれません。