透析を導入する時、もしくは透析を続けていると「血圧が高いですね」と言われたことがある方も多いと思います。
今日は、透析や腎不全が血圧とどういう関係で、なぜ血圧が上がるのかを解説していきたいと思います。なぜ腎不全になると血圧が上がるのか? これには大きく分けて3種類の原因があります。
1:体の中に蓄積した水分が原因
腎不全になると尿が腎臓の機能低下に応じて少なくなっていきます。ではそうなると今まで尿として出て行っていた水分はどこへ行くのか?答えは血管や体の組織等に蓄積されます。特に血管内に水分が蓄積してしまうと、多くの血液を送り出すため心臓が強く拍動しなければならなくなり、結果血圧の上昇へとつながります。
<患者さんへのアドバイス>
- 透析患者さんは水分を摂り過ぎないようにしましょう
- しっかり透析をして水を抜き、日常でもドライウェイト付近を維持するようにしましょう
透析患者さんやご家族の方はおそらくドライウェイトという言葉を聞いたことがあると思います。これは血液検査にて測定される数値や、レントゲン等で測定された心臓の大きさ(心胸比)で設定される目標体重です。
この体重に近い状態であるほど身体に余分な水分がない(ドライ)という事になり、その透析患者さんの適正な体重にあった血圧という事になります。水分のとりすぎは体液量の増加をきたし、血圧もあげます。
2:動脈硬化
一般的に知られている動脈硬化のイメージは、「血管の内側にコレステロール等がへばりつく(高コレステロール血症)」ことだと思いますが、高血圧や糖尿病、喫煙、加齢なども大きな動脈硬化の危険因子です。
透析患者さんは高血圧や電解質異常なども大きく影響し、一般の方より動脈硬化になりやすいです。
*特に腎不全によりリンやカルシウムの代謝が上手くされなくなり、それが血管に付着。そして血管の内側に石のようなものが形成され石灰化をきたします。
<患者さんへのアドバイス>
全身の血管に生じた動脈硬化(特に石灰化)は一度生じると元に戻らないと言われています。その為、事前策として血管にコレステロール付着や石灰化を起こさせない事が重要となります。
つまり、
- 脂っこい食事を避ける
- リンの多い食事を控える
- 処方された薬にはリン等を下げ、石灰化を防ぐものがある場合もあるため処方された薬はきちんと飲む
ことが大切になります。
3:血圧調節ホルモンの亢進
腎臓はレニンという酵素を分泌し、アンギオテンシノーゲン、アンジオテンシンI、アンジオテンシンⅡ、アルドステロンといった血圧調節ホルモンの連鎖(シグナルカスケード)を制御し、血圧や血液量の変化に応じて体内の血圧を一定に保つよう働いています。
そのため、腎不全で腎血流量が大きく低下すると、それを補おうと腎臓はレニンを過剰に分泌し血圧を上昇させようと働きます(高血圧をきたす)。こういった腎不全時のレニン-アンジオテンシン系の亢進による高血圧には、レニン-アンジオテンシン系のシグナルをどこかでブロックする降圧薬などが有効です。
<患者さんへのアドバイス>
- 医師より処方された降圧薬を用法容量をしっかり守って内服を続ける
まとめ
血圧が高いと血管に過剰な負荷がかかり、動脈硬化が更に進みやすくなります。それをそのまま放置すると血管はボロボロになりいずれは心筋梗塞や脳梗塞という命を脅かす事態へ繋がります。
平時より自分の血圧を意識して管理し、健やかに過ごせるよう頑張りましょう!