看護学生さん頑張って~その人の「生きようとする力」を支える看護師を目指して~

みどり訪問看護ステーションでは、現在看護専門学校2校、看護大学1校の学生実習を受け入れています。学校により実習期間が4日間から2週間と違いがあり、コロナ禍のため病棟での基礎実習が行えずに、在宅看護実習に来られる学生さんが多くいました。

当ステーションは、実習指導者だけではなく全スタッフが学生さんに関わっています。20代の学生さんから見ると、親世代のスタッフが多いと思います。病棟と違い残念ながらお姉さん的な看護師はいませんが、在宅看護実習が楽しい、将来訪問看護師になりたいと学生さんが思えるように、我が子を育てるように全スタッフが関わっています。
私たちがそんな思いを持ちながら、関わってきたコロナ禍での看護学生さんの学びを紹介したいと思います。

<どのような利用者様を担当しましたか>

  • 80代女性 要介護5 脳梗塞後遺症(左不全麻痺) 慢性心不全
    夫と息子様の3人暮らし、夫が介護している
  • 60代男性 要介護5 脳出血後遺症 気管カニューレ留置中 胃瘻造設後
    妻と二人暮らし、20年以上妻が介護している
  • 70代男性 要支援2 喉頭がん術後 アルコール性肝硬変
    独居、近隣に住む娘様が定期的に、訪問し支援されている
  • 80代女性 要介護2 慢性腎不全(透析治療中) 糖尿病 アルツハイマー型認知症
    80代の夫と二人暮らし、夫が介護している。週1回遠方の娘様が訪問し支援されている
  • 80代女性 要介護2 虚血性腸炎にてストーマ造設 糖尿病
    80代の夫と二人暮らし、夫が介護している
  • 90代女性 要介護2 神経因性膀胱により膀胱瘻造設中
    要支援の夫と二人暮らし 通院は息子様の協力がある

<どのようなケアが印象に残りましたか>

  • その時だけでケアするのではなく、今後の生活を家族も含め困らないようにケアを行っていた。
  • 利用者様だけではなく、介護者の家族の健康状態、精神的支援をおこなっていた。
  • 利用者様、家族から何気ない会話から、情報取集をおこなっていた。
  • 消耗品を最低限に抑え、家計の負担が減るように行っていた。
  • 利用者様が安全、安楽に過ごせるように家族の方と話し合っていた。
  • 利用者様の不安が軽減できるような声掛けをしていた。又、家族の方に介護に対する思いを傾聴し、指導、アドバイスをしていた。
  • ケア時に使用する使用物品が、ペットボトルやドレッシングボトル等を利用し身近にあるもので使用されていた。
  • 利用者様と家族の希望に添うように、生活の支援をおこなっていた。

<実習を終えての感想>

  • 利用者様と家族の実際の生活と在宅医療を知り、自宅での生活が継続できるように支援していくことが必要だと学びました。
  • 訪問看護師間で情報共有し、他事業所の多職種とも連携することで利用者様が安心して暮らせることに繋がると学びました。
  • 利用者様の生活スタイルや思いに寄り添い、決められた時間内で看護を提供することで、その人らしい生活を支援できることを学びました。
  • 医療者側が思う支援と、本人が思う支援が違う時が難しいと感じましたが、利用者様が安心して暮らせるように何が必要なのかを考え、様々なアドバイスやケアを通し支援することの必要性を学びました。
  • 限られた時間内で、優先すべきことは何かを考え援助を行うことが大切だと学びました。
  • 病気だけを看ていくのではなく、生活全体を把握して支援していくことが訪問看護師の役割であることを学びました。
  • 看護師の訪問時だけではなく、それ以外の時も安心して自宅での生活を送れるよう関わることの大切さを学びました。
  • 利用者様だけではなく、家族の方が安心して介護できるように支援する事が大切だと学びました。

~訪問看護師から臨地実習を終えた看護学生さん達へ~

在宅看護では、病院では味わえない「我が家」という穏やかな空間、時間があり、住み慣れた家はその方の「生きようとする力」になると思います。普段の生活の中で、何気ない会話や、訪問時の笑い、ケアに使用する物品等、病院や施設と違い学生さんにとっては新鮮に感じ、驚いたのではないでしょうか。そこには、看護の原点があると思います。「食べる」「排泄する」「寝る」といった生きる為に、必須の人間の営みを支援し、利用者様の生きようとする力を支えることだと思います。

臨地実習は、コミュニケーション技術、看護実践能力をつけ、対象を理解できる場であり対象を疾患から看るのではなく、「Aさんが病気になってしまった」という意識を持つことで、ありのままのその人を看るという看護に繋がると思います。

2022年4月よりカリキュラム改正に伴い、在宅看護論から地域在宅看護論に変更となっています。地域で生活する人々とその家族の健康と暮らしを、継続的に支援する能力を育成することをねらいとしています。少子高齢化社会の影響により、地域で働く看護師の需要が高まっています。実習で得たことは、看護師になっても記憶に残っています。記録や事前学習に追われて大変な実習ですが、実習でしか体験できない事を大切にしてほしいと思っています。

又、私たちも学生さんから学ぶこともあり、一緒に学んでいきたいと思っています。実習を通して学生の体験を、自分の糧として成長してほしいと思いながら指導しています。将来、皆さんの何人かが訪問看護師になっている姿を期待しています。