診察室から消えたレントゲンフイルムとシャウカステン〜アナログからデジタルへ、時代の移り変わり〜

はじめまして。私は当院で30年以上勤務している放射線技師です。
時代の変化とともに診察室から姿を消したもので、私たち放射線技師に関わりのあるものといえば、レントゲンフイルムとシャウカステンです。シャウカステンとはレントゲンやCTの写真を見る道具のことで、ドイツ語で見る(schauen)と箱(kasten)を合わせた言葉です。近年日本ではデジタル化が進みフイルムを使用しないで撮影されたレントゲン画像などはモニター画面に映し出され診療に使用されています。

ここからは便利になる前のレントゲンフイルムの話です。
レントゲンフイルムには大きいものから半切・大角・大4F・4F・6F・8Fと様々なサイズのものがあり撮影する部位にあわせ大きさを変えていました。(胸部なら半切か大角、手の指なら8Fと。)
私が放射線技師として仕事を始めた35年前は、撮影したレントゲンフイルムを暗室に入りカセッテから取り出し自動現像機に投入すると現像し定着され水洗いし乾燥され早い機器で45秒、遅い機器でも3分でフイルムとなって出てきます。今のように撮影後すぐに画像が映し出されないため、ドキドキしながら出来上がりを待っていました。

撮影されたフイルムは患者さんごとに収納する袋があり表に撮影日と撮影部位を書き込みます。整形の撮影では頸椎6方向と腰椎4方向を撮るとフイルムが10枚出来上がります。これを袋に入れて診察室へ。午前診察が終了するとその日の撮影分を回収しフイルム倉庫に。フイルム倉庫には8年分のフイルムを保管していました。

1人の患者さんも数年も通院すると小さなフイルム袋が数袋入るまちのついたものになります。これを撮影するごとに撮影した患者さんのすべてのフイルムを診察室に持っていくのですが10kgを超える袋も沢山ありました。毎日、移動が大変でした。PACS(医用画像管理システム)が導入されても数年はつづきました。

▲当院の倉庫に残っていたフイルムと保管袋

私が印象に残っているシャウカステンの話をさせてください。大学病院に実習に行っているときのことです。お腹の血管造影の検査もフイルムで連続撮影が行われていて1回で16枚撮影されていました。自動現像機から大角サイズのフイルムが次々と出てきます。それを撮影室横のスペースに4枚掛かるシャウカステン4台(2m×4台)を横に並べ出てきた順に掛けていきます。

そこに撮影室から清潔な術衣を着たDr.が両手を小脇に抱え横横にカニ歩きしながら画像の確認をしていき、一通り見終わると次の撮影に。検査・治療が終了するまでこれを繰り返していました。

現在ではデジタル化が進み、レントゲンフイルム→CRシステム→フラットパネルとなり、撮影から2秒後には画像確認ができるようになりました。
フイルム倉庫はPACSのサーバーに置き換わり、クリックひとつでどの患者さんの画像でも見られるようになりました。デジタル化により画像の確認が迅速になり、診断の効率が大幅に向上しました。今後はAIなどの最新技術が普及、導入されることで、画像診断領域の更なる進化が期待されます。

ちなみに当院では、電子化が進み使用することがなくなったシャウカステンを取り外すことなく現在は診察室にて掲示板として利用しております。「フィルムを見る」機能としては使わなくても、味わいのあるインテリアとして、みどり病院のシャウカステンはまだまだ活躍してくれそうです。