成年後見制度って知ってますか?part1~自分一人で判断できなくなった時のために~

みなさんは成年後見制度という言葉を聞いたことはありますか?
私自身、福祉の勉強をしているときに成年後見制度について勉強したことはあったものの、入職当初は実際利用している方や支援されている方と関わったことはありませんでした。
最近は入院患者様にも利用している方が増えてきており、先日成年後見制度について神戸市の勉強会に参加し、とても勉強になったので報告も兼ねて記事にさせて頂きます。

成年後見制度とは

成年後見制度とは認知症、知的障がい、精神障がいなどで、判断能力が十分でなくなった方々は、財産や金銭の管理、介護サービス・施設入所に関する契約などを自身で行うのが難しい場合があります。法的に権限を与えられた成年後見人などは、その人らしい生活ができるよう心身の状態や生活状況を把握し、財産管理※1や身上保護※2を本人に代わって行います。
※1財産管理…主には現金、預貯金、証券等の管理を行うこと
※2身上保護…生活・医療・介護に関する契約や手続きを行うこと

成年後見制度には大きく分けて2種類に分けられます。

〇法定後見制度
既に本人に判断能力が十分でない場合に利用します。判断能力によっては、後見・保佐・補助の3つの類型があります。

〇任意後見制度
判断能力が十分でなくなった時の備えのためにあらかじめ後見人を定めておきます。

今回は法定後見制度について詳しくお伝えしたいと思います。

法定後見制度について

法定後見制度には判断能力によって後見・保佐・補助の3つの類型があります。
類型の違いについては以下をご覧ください。

神戸市成年後見支援センターHPより

成年後見人、保佐人、補助人の3つをまとめて「成年後見人等」といいます。判断能力の種類(類型)は医師の診断書を参考に家庭裁判所が決定します。成年後見人に対しては代理権、取消権の全ての権限が付与されますが、保佐人、補助人に対しての代理権、取消権は裁判所への申立ての内容によりますので、どの権限が与えられるかもそれぞれ異なっています。

※3代理権…本人に代わって法律行為を行うことができる権限
※4取消権…保佐人等の同意を得ずにした本人の行為を、保佐人等が取り消す権利
※5同意権…本人が法律行為をする上で、保佐人等の同意を必要とする保佐人等の権利

成年後見制度の利用者数

下のグラフは令和元年~令和5年の成年後見制度の利用者数の推移です。令和5年12月末日時点における、成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)の利用者数は合計249,484人(前年は245,087人)で、対前年比約1.8%の増加となっています。類型では成年後見人が一番多いですが、対前年比の増加率をみると成年後見が0.2%増になっているのに対し、保佐が6.0%、補助が6.5%増になっており、保佐、補助の増加率が高いことがわかります。

成年後見関係事件の概況より

成年後見人等を申し立てるきっかけ

成年後見等の開始原因としては、認知症が最も多く全体の約62.6%を占め、次いで知的障害が約9.9%、統合失調症が約8.8%の順となっています。
このグラフからも認知症が後見人等を申し立てる原因として最も高いことがわかります。

成年後見関係事件の概況より

成年後見人等にお願いできること、できないこと

成年後見人等に頼めば何でもしてくれるわけではありません。では、どんなことが成年後見人等にお願いできるのでしょうか?

〇お願いできること

  • 福祉サービス・介護の手続きや契約のお手伝い、保険料や税金の支払いやお金の出し入れのお手伝い
  • よくわからずにした契約のとりけし
  • 定期的な訪問や状況の確認

〇お願いできないこと

  • 食事を作ったり、ティッシュなどの日用品の買い物を代わりにする
  • 手術をする、しないを決めたり実際に介護をする
  • 毎日のように来てもらったり話相手になってもらう
  • 医療に関する同意

さいごに

今回は成年後見制度の概要について紹介させて頂きました。次回は第二弾として成年後見人等が決まるまでの具体的な手続きや実際に必要な費用等をお伝えしていきたいと思います。
みどり病院地域連携室では成年後見制度利用についてのご相談も承っていますので、お気軽にお声掛けください。

参考資料

神戸市成年後見支援センターHP
https://www.with-kobe.or.jp/kouken/

成年後見制度早わかり 厚生労働省HP
https://guardianship.mhlw.go.jp/

成年後見関係事件の概況
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/kouken/index.html