ナトカリ比とは?〜食事のカギは「食塩」と「カリウム」のバランス〜

栄養科

「ナトカリ比(Na/K比)」という言葉を聞いたことはありますか?

今まで高血圧などのお食事では「減塩」が注目されてきました。最近は、ナトリウム(塩分)に加えてカリウムという成分も注目されています。今回はナトカリ比についてお話したいと思います。

ナトカリ比とは、ナトリウム(Na)とカリウム(K)という2つの栄養素のバランスを示す指標で、最近では血圧の管理や心臓病の予防にとても重要な役割を果たすことがわかってきています。

*腎臓病のある方は、カリウム摂取量に注意が必要です。腎機能障害(腎不全)の場合にカリウムを過剰摂取すると危険な高カリウム血症を生じる恐れがありますので、主治医にご確認ください。

■ ナトリウム・カリウムとはなんでしょう?

  • ナトリウム(塩分)
    体に必要な成分ではありますが、とりすぎると体に水分がたまり、血圧が上がる原因になります。特に、日本人は塩辛い食事が多く、必要以上の塩分をとっている傾向があります。
  • カリウム
    ナトリウムの排出を助け、血圧を下げる働きがあります。野菜、果物、いも、海藻などに多く含まれています。

この2つのバランスを整えることが、健康維持には大切です。

■ ナトカリ比とは?

ナトカリ比とは、尿に出てくるナトリウムとカリウムの割合です。

尿中のナトリウムとカリウムなどを測ることで、尿中ナトカリ比や推定食塩摂取量や推定カリウム摂取量がわかります。食べた食事のナトリウム(塩分)が多く、カリウムが少ないと、この比率は高くなります。

この尿中ナトカリ比が高い状態は、血圧が上がりやすくなったり、心臓や血管に負担がかかりやすくなるなどのリスクと深く関係しています。

一方、尿中ナトカリ比が低い(=カリウムがしっかり摂れている)人は、高血圧や脳卒中、心筋梗塞などの予防につながるとされています。

■ ナトカリ比の理想的な数値とは?

日本では2023年に、日本高血圧学会が「尿ナトカリ比の評価と活用に関するコンセンサスステートメント」を発表し、理想的な値を2未満、実現可能な目標値を4未満とするガイドラインを示しました。

これは日本人の食塩摂取量が依然として高い一方で、カリウム摂取が不足している現状を踏まえたものです。ナトリウム摂取量だけでなく、カリウム摂取の充足がリスク低減に重要であることが明らかとなってきました。

日本高血圧学会では、尿中のナトカリ比を使って以下のような目標を示しています:

  • 理想的な尿中ナトカリ比:2.0未満
  • 目指したい実現可能な範囲:4.0未満

つまり、ナトリウムよりもカリウムを多くとることが望ましいということです。
日本人の平均的な尿中ナトカリ比は2.5〜3.5程度とされており、目標値よりやや高めです。改善の余地がある人が多いと考えられます。

■ どうすれば尿中ナトカリ比を改善できる?

日本人の食事摂取基準(2025年版)での摂取目標では
男性:食塩7.5g/日未満、カリウム3g/日以上
女性:食塩6.5g/日未満、カリウム2.6g/日以上
です。

尿中ナトカリ比を下げるには、次の2つのポイントを心がけましょう:

① ナトリウム(塩分)を減らす

  • しょうゆや味噌は「減塩タイプ」にする
  • 漬物や佃煮などの塩分が多い食品は控えめに
  • ラーメンやカップ麺のスープは飲み干さない
  • 外食やお惣菜は、栄養成分表示を確認して選ぶ

② カリウムを多く含む食品をとる

  • 野菜(ほうれん草、小松菜、トマト、にんじんなど)
  • 果物(バナナ、みかん、キウイ、メロンなど)
  • いも類(じゃがいも、さつまいも、里芋)
  • 豆類(納豆、豆腐、ゆで大豆)
  • 海藻(わかめ、昆布、ひじき)

→摂取目標:野菜350g/日、果物200g/日です。

健康日本21(第三次)では多くの方が足りていない結果になっています。
※繰り返しになりますが、腎臓機能障害のある方はカリウムをとりすぎると危険な場合があります。医師などに相談してください。

■ 尿中ナトカリ比はどうやって測るの?

尿検査をすることで、尿中のナトリウムとカリウムの量がわかります。
当院では、心臓リハビリテーションを今年9月から開始しました。心臓リハビリテーションを受けられている方に月に1回、お食事の注意点をお話しています。

この度、対象患者において尿中ナトカリ比を測定することになりました。今まで、減塩の注意点をお話するときは、食事内容や傾向を聞いて、摂取塩分量など推定して食事の修正を行ってきました。

しかし、尿中のナトリウム・カリウムなどを測定し、「見える化」することで、聞き取りで得られる、食塩摂取量と検査で得られる数値を比較し、減塩のお話をすることができるようになりました。始めたばかりで、2つの数値がどのように反映されてくるかなど、手探りな点もありますが、具体的数値に現れることでより、改善点が明確化されたように思います。

■ 最後に…

ナトリウム(塩分)を減らし、カリウムを増やす。

「減塩しよう」「野菜や果物をもう一品増やそう」といった小さな工夫の積み重ねから始めてみてはいかがでしょうか?

血圧が高めの方、心臓に不安のある方はぜひ一度ご自身の食生活を振り返り、尿中ナトカリ比を意識した毎日を送ってみましょう。(腎臓病のある方はカリウムに注意が必要です)