今回はリハビリテーション科からみた“食事”についてお話しします。
当院でも、様々な疾患で食べることができなくなってしまう患者さんが大勢います。
食事についてのリハビリは言語聴覚士が専門で行うことがほとんどですが、当院では言語聴覚士が不在のため、理学療法士・作業療法士が患者さんが食事を安全にできるように工夫して行っています。
みなさんは食事について思い浮かべるのは、普段自宅で食べているものを思い浮かべると思います。
それは常食といって工夫がされていない食事形態です。
病院では栄養士からの話でもあったように食べやすいように工夫された食事を用意することがあります。
種類としては刻み食、ミキサー食、ムース食、ゼリー等に別れています。
それぞれの患者さんの状態に応じて使い分けています。
まず食事形態を決める前にしっかりと飲み込めるかどうかを飲み込みやすいゼリーや少量の水分を使用してテストします。
飲み込むことができず口の中に食べ物が残ったままの場合やムセてしまう患者さんもいるからです。
人は喉の奥に食べ物が行くと反射によって飲み込もうとします。
ですが、病気によって反射が起きない患者さんもいるのです。
また、飲み込めても、喉に詰まったものを咳によって吐き出すことができない患者さんもいるので、飲み込むだけでなく吐き出すことができるということも重要です。
食事をするために必要なことは、自分で口元にもっていく、咀嚼する、口の中で食塊をまとめ口の奥に送り込み、飲み込むといったところでしょうか。
自分で口元にもっていけない患者さんに対しては介助して食事をしていただいています。
この時ペースを患者さんに合わせることと、食間に水分が取れるのであれば取っていただくことが大切です。
咀嚼が難しい患者さんに対しては刻み食にしています。
初めから食物を刻むことで咀嚼の必要性をなくしています。
とろみをつけることで刻まれた食塊がバラバラにならないように工夫もできます。
ムセがなく飲み込める患者さんが対象です。
常食や刻み食でムセがある患者さんに対しては、ミキサー食やムース食をご用意します。
ミキサー食やムース食は食塊を作りやすくまとまって飲み込みやすいのです。
食塊の形成が不十分な患者さんは口腔内に残渣(残りかす)がある場合が多く、誤嚥の危険性が高くなります。
口の中で食塊をまとめ口の奥に送り込めない患者さんには姿勢の工夫をしています。ギャッジアップベッドを90°近くまで上げるのではなく、約30°まで上げる。
そうすることで重力によって食塊が喉の奥のほうへと送り込まれます。
このようなベッド上での工夫のように、食事をする時の姿勢も大事になってきます。
イスや車いすに座って食事をする患者さんにも気を付けてもらっていることがあります。
両足はしっかりと床につけ、背筋を伸ばし、あごを引きます。
また、見えやすく、取りやすい位置に食べ物を置くことも大切です。
食事形態が合っていなければ、誤嚥し肺炎になってしまったり、食べられなくなったりします。
先日、脳梗塞の後遺症があり、施設で刻み食をムセながら食べていた患者さんが誤嚥性肺炎になり、入院してきました。
まず訓練用ゼリーから食事を開始し、栄養士や看護師らとともに食事形態の検討を行い、最終的にはミキサー食であればムセなく食事ができるようになり、再び元の施設へ退院されていきました。
この患者さんのように、食事中にムセがある場合には何か問題あることが多いです。
誤嚥等のリスクを少なくするために、安心・安全な食事をするために、その人に合った食事形態や姿勢を選択することが大事です。
われわれ健常者にとっては“食べる”ということは当たり前のことですが、病気になってしまうととても大変になることがあります。
それでも、患者さんにおいしく、楽しく、安全に、食事をとっていただけるよう、栄養士や看護師などと協力しながら、一人一人に合わせた食事形態や姿勢などの工夫を行い、“自分で食べることができる”を目指します。