「おいしい」から食べる
私たちは1日3食、食事を口から食べることは当たり前のことだと思っていますよね。
しかし、高齢や病気で飲み込むことが困難になったり、口内炎ができて痛みがあると、そうはいきません。
うまく噛めなかったり、飲み込めずにむせてしまう、しみる、痛いなど…せっかく楽しいはずの食事が苦痛になってしまうこともあります。
食事がとりにくくなると、栄養状態が悪化し、体力や免疫機能が低下します。
すると、感染症や病気にかかりやすくなる、あるいは病気とたたかう気持ちが弱くなるといったことが起こってしまいます。
最近では口から食べられなくても、点滴や胃にチューブを入れる方法で栄養をとることができますが、やっぱり口から食べることが「生きる」ということにつながるはず。
ただ栄養をとるために食事をするのではなく、「おいしい」から食べる、たくさん食べることができなくても「おいしい」と笑顔になっていただきたい。
食材で今の季節を味わっていただきたい。
それが私たちがモットーとする“暮らしに笑顔を”につながると感じています。
意外と知らない唾液のパワー!
口から食べることは、食べ物を味わうこと以外にも、噛むことによって唾液の分泌を促し口の中の衛生を保つなど、さまざまなメリットがあります。
唾液は1日に約1~1.5ℓも分泌されているのはご存知ですか?
唾液に含まれるペプチドや酵素、ラクトフェリンなどの抗菌成分は、細菌の増殖を抑えて口臭や虫歯、歯周病など、さまざまなトラブルから私たちを守っています。
また口の中の潤いを保つことで、粘膜を保護するだけでなく、言葉が話しやすくなります。
それ以外にも、食べ物を噛み砕くことを助け、消化を促進し、飲み込みやすくするなど、多くの重要な働きをしています。
まずはお口の手入れから!
おいしく食べるために、まず口の中の環境を整えましょう。
口の中が汚れていると、せっかくの食べ物の味がよく分からなくなります。
歯磨きができれば一番いいのですが、できにくい方は、こまめにうがいをするだけでも効果があります。
入れ歯の方は、1日に1回は外して洗浄することをおすすめします。
夜間は口の中が乾燥しやすいので、就寝前に保湿効果のあるマウスウォッシュやジェルを使うとよいでしょう。
痛みがあり歯ブラシが使えない場合には、口腔ケア用スポンジブラシを使うのも一つの方法です。
最近は歯医者に通院できない方でも訪問歯科診療をしてくれる地域が増えてきました。
口の中のことで気になることがあれば、早めに医師、歯科医師、看護師などに相談してみましょう。
ちょっとした食事の工夫
かたいものやパサパサしたものは飲み込みにくく、口の中の粘膜を傷つけてしまうことがあります。
魚は焼き魚より煮魚にする、野菜は炒め物より煮物や汁物にするとよいでしょう。
焼き魚や野菜炒めも、あんかけにすると食べやすくなります。
また具もやわらかく煮込んだ煮込みうどんもおすすめの一品です。
スプーンを使って食事をされる方には、うどんや麺を短く切っておくと食べやすくなります。
うまく噛めない方には、食材をつぶしたりミキサーにかけたりして食べやすいかたちにしましょう。
面倒な方は市販でも舌でつぶせるかたさのレトルト食品がたくさんあります。
食事や汁物、水分にとろみがあると口当たりもよく、飲み込みやすくなります。
簡単にとろみをつけることができる製品もありますので、興味のある方は近くの薬局で問い合わせてください。
口内炎のある方には当然のことながら酸味や刺激の強い味付けは避けましょうね。
食べる雰囲気も大切
一人で食べる食事よりも、誰かと一緒に会話を楽しみながら食べると、おいしさも倍増し食事量も増えます。
高齢者では上手に食べられなくて、こぼしてしまうことがよくあります。
認知症の方では、箸やスプーンを使わずに手で食べられることもあります。
こんなとき、手や服、床が汚れてしまうと、つい怒っていませんか?
怒られると思うと委縮して、せっかくの食欲も減退してしまいます。
お手拭きを準備し、汚れてもよいエプロンやマットを敷くなどの工夫をしてみてください。
お口にやさしい食べ物
おすすめするお口にやさしい食べ物には、おかゆ/そうめん/煮込みうどん/豆腐/卵豆腐/茶わん蒸し/オムレツ/天津飯/マグロの刺身/ポタージュ・スープ/ヨーグルト(酸味の少ないもの)/ゼリー/プリン/アイスなどです。
この他にも好みのメニューの具材を小さく切り、とろみを付けるだけでも、お口にやさしくなります。
あなたのご家庭でも食材やメニュー選び、調理方法、そして忘れがちな口腔ケアにもひと手間かけてみてください。
ちょっとした工夫でおいしい食事を、そして食事の時間を家族団らん笑って過ごせることを願っております。